ダイバーシティ経営
ダイバーシティ経営。読んで字のごとく、ダイバーシティを経営の指針とする概念です。
最近のダイバーシティ論では、エイジ・ダイバーシティ(年齢的多様性)とジェンダー・ダイバーシティ(性的多様性)、レジリエンス(組織の柔軟性)などがメインテーマとなっている感じがします。
ダイバーシティ経営は、多様なバックグラウンドをもつ従業員による様々な視点・思考を事業に組み込むことで、経営改善や向上をはかろうという考え方。
そもそも、世の中にはバックグラウンドの同じ人間なんていないのですが…という議論はここではしません(苦笑)。
で、ダイバーシティ推進の方(ダイバーシティコンサルタントと名乗る人もいる)が絶対言わないのが、ダイバーシティの負の側面の話。多様な文化や思考の中では、当然、摩擦も起きます。
そりゃ、AさんとBさんが同じ考えでなければ、意見が衝突するわけですよ。ダイバーシティ経営には、ベースに確固たるコンセプト(軸)があれば成り立つが実際は…ね。
で、先日、その点についてのレポートが出されていたのでシェアしておきます。
ダイバーシティ経営の死角とは
ビジネスにおけるもっとも大事な成果であるお金に注目し、多様性があればあるほど利益を追求することに喜びを感じるということが明らかになりました。この調査は、ある大きなサービス会社の、性別が単一のチームと混合チームの2つのデータを、8年にわたり分析しています。
男性のみ、もしくは女性のみの職場を、男女混合に切り替えたらどのように成果に影響があるかを調べたところ、多様性により収益が41%も上がったことが分かりました。
多様性のある職場環境は、収益は上がっても社員が幸せとは限らない:研究結果
マサチューセッツ工科大(MIT)のレポートだそうです。このデータはジェンダー・ダイバーシティですね。「利益を上げる」は唯一の共通概念となり、そこを目指し切磋琢磨するということでしょうか。
多様性というか、僕が男なので、女性だけの職場というのがどうかわかりませんが、女性のいる職場の男性は、女性に見栄を張りたくてがんばるみたいなことも実際多い気がします…。
あー、男って単純だわ(自戒)。何にせよ、女性のパワーは生物学的にも男性に与えるプラス影響は、社内恋愛のトラブルがなければ、大きいと想像できます。
この最新のデータには、会社経営者が人事採用で多様性を意識し、チーム内に異分子が増えるようにした方がいい、もう1つの大きな理由があります。かなり異なるタイプの人を同じチームで働くようにしたら、収益は上がるかもしれませんが、それで社員が幸せになるとは限りません。
というのも、研究によって、共通点の多いチームはより仲が良く、より信頼し合い、協力し合って、楽しくやっていることも分かりました。
多様性のある職場環境は、収益は上がっても社員が幸せとは限らない:研究結果
仲良くやりたいのであれば、同種の人でチームを固めればいい。これはこれで、日本中の様々なチーム、プロジェクト、役員、マネジメントなどで起こっている、普通と言えば普通の考え方。
いわゆる「YESマン」が仲間の方がいいに決まってる。反対意見や助言を貰えないから、リスク・マネジメントのかけらもないけど(笑)
冒頭で書いたように、多様な人がいる組織で活動するとなると、軋轢というか抵抗は大小問わず必ず起きます。これはしょうがない。だからこそ、経営者が多様性における自社のコンセプトを明示し、軸(目標・目的)をしっかり作ること。その上で意見を戦わせると、業績向上に貢献する可能性が高くなる、と。
ダイバーシティがマイナス効果?
安直なダイバーシティ(=多様性)はむしろ組織にマイナスの結果をもたらしかねない、という経営学の研究成果が出てきているからです。
組織のメンバーに目に見える属性の違いがあった場合、メンバーそれぞれに、「自分と同じ属性のメンバー」と「それ以外」を分類する心理作用が働き、同じ属性を持ったメンバー同士の交流のみが深まってしまうのです。そうなると、いつの間にか、男性は男性だけ、女性は女性だけ、あるいは外国人は外国人だけで固まり、「男性vs女性」「日本人vs外国人」といった軋轢が生まれ、組織のパフォーマンスを停滞させてしまうのです。
ユニクロに学ぶ「儲かるダイバーシティ」
まず定義として、経営学では、ダイバーシティには少なくとも2種類あると、筆者はしています。一つ目は「タスク型」。能力、職歴、経験などにおいて多様な人材を組織に取り込むこと。二つ目は「デモグラフィー型」。性別、国籍、年齢といった「目に見える」属性についての多様性のこと。
当然、性別が異なっても考え方が異ならないという場合もあり、そういう場合は多様性があるとは言えません。「視点・思考」が異なるからこそダイバーシティですからね。だからデモグラフィー型の多様性ばかりだと、摩擦による負の側面しか生まれないと筆者はしています。そりゃそうだ。
で、筆者の結論としては「中途半端なお題目だけのダイバーシティは組織によい影響をもたらしません。やるなら徹底してダイバーシティ経営を進めるべきなのです。」と。
中途半端なダイバーシティ対策で困るのは、一番困るのは現場です。ダイバーシティ推進担当の方は、摩擦を組織に持ち込む危機感を持ちながら、推進に励む必要があるようですね。
ダイバーシティに関する気になるデータ
以下は、今回の話とちょっと違うけどつながりそうな話題の記事です。興味がある人は参考までにどうぞ。
■経済産業研究所(RIETI)「ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究」研究会
■男性の育休、100人超6社 「人を活かす会社」調査
■企業における「見える化」
■女性が活躍する企業事例のダイバーシティ本「なぜ、女性が活躍する組織は強いのか」(麓幸子)
■AppleのCSR、クック氏はダイバーシティの現状に満足せず
■ダイバーシティ経営は“CSRの必要性”として認識されているのか
経済産業省が「なでしこ銘柄」とか「ダイバーシティ経営企業100選」とかで女性活躍推進していますし、内閣府男女共同参画局も女性に関する情報開示を企業に求めてきていますし、女性のみを指標にするのはダイバーシティなのかという議論はさておき、色々企業としても対応しなければいけない時代になったということなのでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
最近は、政府の「女性活用(女性の活躍推進)」の後押しもあり、女性のワークスタイルについての情報がたくさんできるようになりました。3年前では想像できないくらいです。
ダイバーシティ経営を画策する経営・組織側と、摩擦を怖がる現場側。そんな構図にならないよう、ダイバーシティ推進担当者の方はお気をつけ下さい。
っていうか、ダイバーシティ推進部(ダイバーシティ推進室)がある企業ってどれくらいあるのかな?東洋経済の「CSR企業総覧」とかに載っているのかな?ちょっと調べてみるか。
ダイバーシティ支援団体(支援企業)が、女性が多いとか、年齢層が近すぎとか、経営をわかっているヤツがいないとか、悪口を言うのは許さん!ダイバーシティ支援団体自身が、ダイバーシティ経営できているとは限らないだろ!CSR支援企業のCSR経営ができていないのと同じ考えだばかやろう!
そんなわけで、今日も、女性も男性も働きやすく、そして業績に貢献できる組織を作って行きましょう。