デザイン、フォーカス・ポイント、ユーザー・メリット。
iPhone,iPad,Macなどで有名な企業、
Apple社の日本語Webから、CSRコミュニケーションの在り方を考えてみます。
アップル社は日本で以前から活動をしていますが、
CSR報告書を発行したことがありません。
その代わりに、環境報告書、サプライヤー報告書という2種類の、
社会的責任についての報告書(webページ)を作成してます。
紙のものは発行していないようです。
1990年に最初の環境ポリシーを策定して以来、
積極的に環境に関する報告をしてきた模様。
ちなみに、参照ガイドラインはGRI(持続可能性報告書ガイドライン)。
ISO26000を参照することは近々ではないのか、どうか。
来年のレポート動向が注目されています。
デザイン、フォーカス・ポイント、ユーザー・メリット。
この3点が注目だと思ってます。順に見ていきましょう。
環境への取組み
ここで注目なのは、企業としてどれだけのことしているというより、
製品ごとにフォーカスして、その内容を事細かにしていること。
今現在で2008年6月(4年前)までの商品の環境レポートがWebで見れます。
「MacBook Proと環境」というページでは以下のようなボディコピーがつけられています。
またキャッチコピーは「世界で最もグリーンな、ノートブック」です。
Appleの環境問題への取り組み方は、ほかとちょっと違います。
取り組みの中心に製品を置いているからです。
MacBook Proが優れたエネルギー効率を持ち、
有害物質を使っていないのは、そのためです。
日本の製造業の印象としては、
企業として環境活動をどうこうするというものですが、
Apple社は製品だと正面から言っているのです。珍しいですねぇ。
これって、まさに本業でのCSRなのかなと。
つまり、製品や製造過程で環境負荷をさげていると。
もちろん日本企業もそうだとは思うのですが、
Apple製品の環境負荷についてはこれでもかという記述が。
企業として植林してますとかはほとんど記述なし。
社会貢献として、どこに寄付しましたとかもない。
製品がどこまでグリーンなのかにフォーカスしてます。
環境活動がユーザーのメリットにもなるという、見せ方がうまい。
通常、環境活動は地球にメリットはあっても、
ユーザー個人に直接メリットがない場合が多いのに、です。
また、デザインも数字はグラフィカルにまとめられ、
わかりやすいものとなっています。
数字(結論)が前に出ると、その結果がスッと頭に入ります。
このあたりのデザイン・テクニックは学ぶべきポイントの一つです。
サプライヤー責任
今現在、2007年からの報告書をWebでみることができます。
去年・今年と、中国のサプライヤー問題がありましたが、
こういった情報進捗を、誰でも追えることは良い方向だと思います。
しかも2011年の主要取引先一覧も公表しています。
あれだけ秘密主義の企業がです!
いくつかの報告は英語のみとなっていますが、
日本語で読める範囲でも充分概要がわかるようになっています。
Appleは、世界各国に広がるサプライチェーン全体で
最高水準の社会的責任を担えるように力を注いでいます。
このボディコピーは響きます。
目指すべきは説明責任を果たすなどというレベルではなく、
“最高水準”なのですから。
日本企業もCSR報告書でこれくらい、
高らかに宣言してもらいたいですな。
また、この報告の中で人権問題などにも触れています。
日本企業のCSR報告では人権の項目は少なかったり、
社内の話しばかりですが、
Apple社は世界80万人(!)のスタッフを管理してるとか。
長時間労働の問題は、日本のサービス業などでも毎度問題としてありますが、
Apple社のサプライヤー関連も例外ではないようです。
この項目だけは非常に難しい課題であるとしています。
まとめ
関連ページを全部見て気付きました。
Appleは「CSR」という単語を使っていないんです。
見落としたかな?と思い、サイト内検索してもヒットしない。
「サスティナビリティ」もない。
ちなみに「社会的責任」という単語はいくつか出てきました。
日本語サイトだからというのもあると思いますが、
アメリカの企業だからといって、
アルファベットやカタカナをむやみに羅列しないのは、
理解を早める手助けとなるでしょう。
小・中学生もアップル社のユーザーですしね。
「わかりやすさ」という点ではとても評価できます。
日本のCSRレポートのように、CSRを連呼してませんし。
秘密主義がモットーな企業も、
CSR関連情報を充実させているのはすばらしいですね。
まぁ、企業秘密と説明責任を同じとするのが乱暴ですよね。
テキストは多いですが、インフォグラフィックを使用し、
データがよく整理されデザインとしても見やすいと感じました。
もう紙の報告書はいらないのでは?という、情報量。
欲を言えば、企業としての活動や、
CEO交代による、社会貢献プログラムへの
積極参加などの情報も載せればいいのに、と。
このあたりは来年に期待ということでしょうか。
Apple社のCSR関連Webページから学べることは、
デザイン、フォーカス、メリットの3つでした。
あなたの会社のCSR関連ページと比べて見ると、
また新しい発見があるかもしれませんね。
必読:みんな大好きAppleの最新CSRレポート(2013)を読んでみた件
参照:[2012年版]今年の総まとめ!来年のCSRコミュニケーションを創るための参考記事18選