良いCSRとは何を指すのか
先日、とあるCSR勉強会があったのでそのメモを。
「良いCSRとは何か」という、非常に本質的な議論がこの数ヶ月されているのですが、僕もやっと考えが整理できてきた気がします。
一つの答えとして、「良いCSRとは、CSRが定義されマテリアリティを決めること」ということ。もちろん、他の様々な注視すべき項目があるのですが、そもそもCSRが自社らしい言葉で定義され、何をすべきか(何を重要視すべきか=マテリアリティの設定)が見えている段階である必要はあります。
以下箇条書きですが、CSR担当者の方には是非読んでいただきたい内容となっています。
メモ
自社のサステナビリティに貢献している状態とは?
・内発的な動機があるか、自覚しているかが重要。
・CSR活動が、自社の事業活動に結びついているかが重要。
・みんながしているから社会貢献をするというのは、自社のサステナビリティにつながらない。
・例えば、サントリーの「水と生きる」の取り組みは、直接事業活動に結びつかないように見えるが、実際は水を売るという本来事業に深く結びついている。
・従業員にCSR、サスティナビリティという概念とメリットが浸透しているかどうか。
従業員が積極的にCSR関わっているということを、どのように測るか?
・社員の自由時間を、社外の活動(PTA、学校スポーツの監督など)に使っているか。
・社員のうちどのくらいの割合の人がCSR活動へ参加しているか。
・前段階として、会社の要職につく従業員、よく意見を出す従業員など会社のキーパーソンが自社のCSRについて理解をしているか。
企業が自社の課題を認識して設定することが重要ではないか?
・「現状は課題を示していること」で評価している面がある。しかしアウトプット(結果)で満足せず、アウトカム(成果)で計るべき。
・会社がCSRに本気に取り組んでいるかどうかは、経営計画(中長期)に入っているかによってわかる。
・ベースになるCSR活動には課題の設定は不要。むしろ最低限のCSR活動を超えた「攻めのCSR」を行うときにこそ、企業の課題を見つける必要があるのではないか。コンプライアンスもCSRだが、やらないのはそもそも犯罪であり、アジェンダセッティングの必要性はないはず。
・CSR活動とはいいことをするというだけでなく、やってはいけないことを行わないという点も重要だ。
・グローバルイシュー(世界的な社会問題)に対応し”叩かれないようにする”ことや、ビジネスのリスク回避という視点を持つ必要がある。
・そもそも「社会の課題」と「自社の経営課題」は別の話。それを交差点をどうやってみつけるか。
・CSRにおいて「やってはいけないこと」も増えている。そのリスクにどこまでリソースをさくか。
マテリアリティ(重要課題)をどのように評価するか?
・重要視するマテリアリティを定めず、他社がやっているCSR活動なら、何でもやるという企業も多い。
・マテリアリティの評価は難しいが、外部の評価者の見方が参考になる。
・外部の評価者の考えと企業の取り組みが一致したときは評価できるのではないか。
・他のCSR課題もクリアすべきだが、一番取り組みたいマテリアリティを絞り、それに注力して取り組むということが重要だ。
・消費者も企業に求めるだけではなくて、自身も企業の経営に関与していかなくてはダメだ。
・マテリアリティは「やりたいこと」である。価値観をどう表現するかが問題。また決定したマテリアリティが、消費者が望んでいるものとは限らない。
その他
・企業はもっとCSR関連の情報を公開すべきという圧力も強くなっている。
・特に、最低限満たすべきだと考えられるリスク面に対する数値情報を求められている(→最低限のことであれば、横の比較が可能)。
・海外進出している会社は、進出先のルールに適用する必要がある。
・トップが社会に「貢献したい!」と自分の言葉で語れるかも評価ポイントとなる。
・社会に貢献したいと本気で考えている人を管理職など上へ上げていく仕組みが必要だ。
・CSR報告書を求める読者、読み手が感想などフィードバックする姿勢も必要ではないか。
・ワークライフバランス視点で削った勤務時間を、実際に有効に活用しているのか。
・地域コミュニティに対して、課題解決に貢献できているか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
CSR活動をすることで自社にどんなメリットがあるのか、どんなことが起きうるのか。
必ずしもCSR活動を定量化(数値化・可視化)する必要はありませんが、このあたりの目標・目的がないと、よいCSRとは言えないのかもしれません。
重要なのはマテリアリティでしょう。企業は政府ではありません。上場企業の一部以外は、全方向でCSR活動をすることは不可能です。
では、世間で言われているCSV(共有価値創造)や“儲かるCSR”とよばれる企業の利益を前提にしたCSR活動“だけ”がよいCSR活動なのでしょうか。
このあたりの折り合いをつけるために、僕みたいなCSR専門家の第三者の視点が必要だという話もありました。僕もそう思います。
御社では、どのようなCSR活動が「よいCSR活動」とされているのでしょうか?
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