CSRが社内浸透しない最大の原因

世の中は「ジレンマ」で、できている。そう思ってます。

最近、僕が注目するのは「Knowing-Doing Gap」というジレンマ。頭ではわかってるけど実行はしない、といったヤツ。

ジェフリー・フェファー、ロバート・サットン著の「なぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント」(原題:The Knowing-Doing Gap: How Smart Companies Turn Knowledge into Action)が定義の元となっているようです。

社会貢献は社会的にしたほうがいいけど、自分はしない。

社会の優先順位と個人の優先順位が異なることに由来するとされる。平たく言えば「社会とはこうあるべきだ」、「個人はこのように行動すべきだ」という自分の持つ理想の姿と、現実に自分が行っていることとの差異が生じる状態のこと。

世界の社会問題が論理だけで解決できないのは、人間は感情の動物だから。必要なのは「Knowing-Doing Gap」の差異を埋める仕組み。「ジブンごと」化が進めば、まさにムーブメントになるのかも。

どれだけ、企業活動やマネジメントの世界が科学的になっても、多くの企業経営者やマネージャーは、世の中が予測不可能なものに見えるのです。

ビジネス書は世の中にあふれ、MBAホルダーも増えた。企業経営のための必要な知識を身につけ、何をすべきか理解しているのにほとんど行動に現れない。

もっと言えば、MBAホルダーの役員がいる大手企業でも業績が右肩下がりの会社とか。

毎日のように出版されるビジネス書。これだけマネジメントや企業経営に関する書籍やデータがあっても、企業経営はうまくいかないことが多い。

ましてはCSRなんて“得体の知れない”ものなんて…って所なのかな?

Knowing-Doing Gap

先日、「CSR・社会貢献活動における、意識と行動の差はなぜ生まれるのか」という記事も書いたのですが、多くのビジネスパーソンは「社会貢献したほうが良い」と調査では答えます。でも実際に行動をするのは、その中の数十%だけです。

官庁の意識調査も民間の意識調査でも、60〜80%くらいの人は「社会貢献をしたほうが良い」としているって知ってました?

そりゃ、社会貢献は“社会に良いこと”だもん。しないより、したほうがいいじゃん。でも、やり方わからないし、結局自分ではできないんですよね〜って。

企業経営もそうなのですが、「Knowing-Doing Gap」はソーシャルセクターにおいて、とてもとても大きな課題だと様々な意識調査を見て思います。

このジレンマを解決せずして、ソーシャルアクションも、もちろん、イノベーションや社会変革なんて起きません。

他にも、「タバコは体に悪いと知っているけど辞められない」とか「健康のためにダイエットしたほうがいいけど挫折しちゃう」とか。

ビジネスでもプライベートでも、ありとあらゆる場面にこのジレンマは存在します。

ジレンマは回避できないのか

ではこのギャップを意識したアクションとなるとどうか。

環境保護や健康づくりといった活動に励む企業は多いが、日々の業務に埋没し、社員への意識づけが難しいという企業も少なくない。そんな中、スイスホテル南海大阪(大阪市中央区)はグループホテルが年に一度開く催しを機に、イベントや仕掛けで社員の意識啓発を図る。アート制作や清掃競争などユニークなジャンルもあり、そこには意外な効果もあるようだ。
アート大会や掃除競争で“裏方を知る”…「スイスホテル南海」のユニークCSR

上記の記事のように、まず“体験してもらう”ことも効果的かと思います。CSRの社内浸透が難しいという企業はこういう、従業員をうまく巻き込む仕組みがないだけだったりします。

様々な取組みをしているようですので、気になる方はぜひ参照記事をどうぞ。

CSRの社内浸透が難しい=「Knowing-Doing Gap」が多くの人に存在し実践してもらえない、というような構図は、まず従業員にもなんらかしらのメリットがある形で強制参加させる。これも一つの手法でしょう。

とにかく、「CSRの社内浸透」は従業員にインセンティブがない、もっといえば、通常業務に+αで作業やら何やらが発生するので、負荷となることも多い。そりゃ、進んで勉強会をしたり、実行したりする人は少ないよね。

ジレンマという存在

多様な倫理観や価値観が共存しているところでは、Knowingについて共通の認識を持つことは容易ではありません。飲酒に関して寛容な人もいますし、絶対に許さない倫理観を持っている人もいます。その場合、Knowingを徹底的に刷り込んで、共通の認識を植え付けるのは難しい。それよりも、目的自体の価値はそれほど問わずに、ある目的のためにはどのような手段が効果的かという2つ目のアプローチの方が楽なのです。
「わかっちゃいるけど、やめられない」Knowing-Doing Gap

ギャップやジレンマがあるからって一方的な解決方法は難しいのかもしれません。

仮に「死の危機に直面している人を救助することと、今日のランチに何を食べるかを決めることと、どちらが重要なことですか?」と尋ねたとすると、ほとんどの人は、人を助ける方に決まっているではないか、と答えるだろう。しかしその惨状を痛ましく思いながらも、実際にアフリカに赴き飢餓に苦しんでいる子供たちに食事を与えたり、韓国のフェリー転覆事故で被害者の救助に向かう人はほとんどいないだろう。

では何故Knowing-Doing Gapが生じるのか。筆者は最近の調査で、私が「ディスタンス・ファクター」と呼ぶ3つの要因がこれを説明することが明らかになった。一つ目は距離のディスタンス、二つ目は時間のディスタンス、三つ目は感情のディスタンスである。要約すると、人間は、遠い地域で起こっていること、過去に起こったこと、感情移入できないこと、には心理的な優先順位――つまり自分自身の問題として社会の問題を捉える傾向――が低くなる、というものだ。
社会問題とディスタンス

ジレンマは事象の差から生まれることが多いです。上記のように「距離、時間、感情」が離れている場合、特に起きやすいと。

社会貢献の現場が会社内ではないと思ってる、時間的な余裕がそもそもない、そもそも社会貢献をしたいと思った事がない。

こんな状況の中で、「CSRを社内浸透させよう!」って無理に決まってるじゃん。CSR担当者ってアホしかないの?(※注:優秀な人もたくさんいます)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

色々な話を盛り込んでしまいましたが、本稿であなたに知ってもらいたいことは、「Knowing-Doing Gap」というジレンマがこの世には存在し、行動が軽視されることがある、ということです。

良く言われる、「当たり前のことを、当たり前にやる」これもジレンマだと思います。

いつもやる事が「当たり前のこと」ですよね。それを言い直さないといけないくらい、当たり前を徹底・継続することは難しいのです。

関連書籍では、この本たくさんの示唆をもらいました。オススメです!

次の書籍は、「社会貢献 × Knowing-Doing Gap」みたいな話をまとめたいなぁ。