CSRをどう切り取るか
本業で社会貢献(CSR)を。
最近、僕がよく聞く台詞です。いや、いんですよ。僕もそう思いますから。しかーしです。本業領域に近くないCSRや社会貢献は、社会から必要とされていないことなのでしょうか?
ここが面倒なところですね。企業が“本業で社会貢献”を掲げるほど、マネタイズしにくい領域は無視されていく気がします。CSRの中でも「わかりやすい」部分だけ評価されているとも言えます。
社会課題解決のアクションには、経済的なインパクトが非常に出しにくい領域も存在します。だからこそ社会問題になっているとも言えるのですが。そんな時に、本業に近くないからやらない、それでいいのでしょうか?
僕は、CSR活動の可視化・定量化に向けてコンサルティングを行うこともありますが、それでも思うのは、可視化・定量化できないCSRや社会貢献活動は企業にとって無意味なのか。業績に連動しないCSRは無意味なのか、ということ。
トータルで言えば、間違いなく業績に反映されるCSRをすべきだし、可視化・定量化できないCSRは極力避けるべき、とも思います。戦略的CSRというCSRの経営戦略からすれば、ですけど。
このへんの「そもそもCSRはなんのためにすべきか」という話は、徹底的に社内で議論すべきです。今回はそのあたりのオピニオンをまとめてみます。
可視化・定量化できないCSR
本当に可視化・定量化できないCSRは“悪”なのか?批判も多い植樹って、めっちゃ定量化できるんだけど、なんで批判されることも多いのか?結局は「必然性」なのかも、と。その企業でなくてもできることはステークホルダーの納得を得にくいのかもしれない。
先日、セミナーの打合せで意見交換をしたCSRアジア日本代表の赤羽さんがおっしゃっていて、そうだよなぁとも思った。
本当のCSR、本物のCSR、事業としてのCSR、儲けるCSRなどなど。CSRって何なの?普通のCSRって存在しないのかいな。善意のみの純粋なフィランソロピー(CSR)だってある。誰かが幸せになる瞬間があるならそれでもいいのかもしれない、っていう考えもあるでしょう。
当然、CSRも企業活動なので、投資したリソース(人・予算)に対して、どれだけのリターンがあったか報告する説明責任があります。
しかしね、地方での寄付とかになると、また話はややこしくなるんですよ。インパクトが見込めなくても、地域とのつながりで仕方なく寄付をするとかね。盆踊りとか夏祭りのスポンサードの話ね。スポンサードしなくて、夏祭りが中止にでもなったら地域住民のクレームは必須です。
じゃあCSV(Creating Shared Value)は万能ではない
「見過ごされてきたコスト」を、社会に対する負の影響であると同時に、自社にとって不要なコストであると位置付けて削減することは、社会と自社とに同時に価値をもたらす、とてもわかりやすい取り組みだ。このように「マイナスを減らす(ゼロに近づける)」取り組みは、CSRへの理解と展開のきっかけとしやすい。では、どのように「プラスを生み出す」、つまり売上増にどう結びつけるか。これは、既存の製品やサービスを進化させて、障碍者や外国人など、見過ごされてきた少数者(マイノリティ)への販売拡大に結びつける、さらに、マイノリティの助言を受けて、これまでにない製品やサービスの開発に結びつける、というアプローチがもっともわかりやすい。
CSRへの取り組みの価値を、可視化・定量化する
川北(IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所])氏曰く、上記のような視点が必要であると。CSV(Creating Shared Value、共有価値創造)にふれて、じゃあ、どういうCSRがいいの?って話からの文脈です。
なぜポーター教授はCSRに異議を唱えたのであろうか。フィランソロピーなどの慈善的な社会貢献活動では、大きな価値創造や社会変革を起こすことはできないと主張し、「CSRからCSVへの脱却」を訴えたのである。ただ、既にお気づきのことと思うが、ポーター教授の言うCSRとは米国流フィランソロピーのことである。
「CSRとCSVに関する原則」
研究者として有名な川村氏(ニッセイ基礎研究所)は上記のようにCSVの文脈を解説しています。
先日も「「CSRからCSV(Creating Shared Value)へ」は、なぜ間違いなのか」、「マイケルポーターの戦略CSRとCSV(Creating Shared Value)を深く学ぶための良記事10選」、「“CSRからCSV(Creating Shared Value)へ”が成り立たない3つの理由」という記事を書きましたが、元々マイケルポーター教授は「経営は定量化できるぜ!」みたいなロジックの方。
競争戦略論、つまりマーケティングの人のなので、やはりCSRもマーケティング的な見方が強いわけです。だからCSR(社会貢献)ではなく、CSV(本業でCSR? 儲かるCSR?)をしようみたいな流れになっていくのかなとも感じています。
業績連動させろ
いくらその活動が世の中のためになったとしても、その企業の成長に寄与しないCSRは、その企業にとって全く意味がない、というか害悪でさえある。そう言うと反発する人もいるかもしれない。たとえ自社の成長には役に立たなくても、社会の役に立つことをやる、それは意味のあることではないかと。しかし、そのように考える人は、社会的弱者というものを企業の外にしか見ることができない視野の狭い人である。
納税みたいな義務的CSRは、やめてしまえ!「信頼されること」よりも、もっと大事なこと
CSRコンサルタントの竹井氏のご意見です。
企業の信頼(ブランド)が悪いとは僕は思いませんが、竹井氏が言うように、CSRも社会貢献も企業のリソースを使う「企業活動」であるので、それなりのリターンを求めるというのは当然であります。
で、そのリターンは何かと言えば、業績、というわけです。CSRでブランディグを!というCSR関係者の方もいますが、実例とされる事例を見聞きしても、別にそれブランディングとは言わないんじゃない?みたいな会社もあるわけでして。
っていうか、「CSRブランディングが重要です!」って言っている、アンタの会社がCSRブランディングできてるように見えませんが、御社大丈夫ですか?そんなにノウハウあるなら、自社の活動に活かしたらどうですか?って、天の邪鬼な僕がいるわけです。
CSRブランディングでもCSRマーケティングでも何でもいいですが、最終的に企業の利益になるCSRでないと継続はできませんよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
CSR活動は、可視化・定量化され、業績への影響を検証すべき。この意見は、多くの方に納得いただける話だと思います。
問題は、「じゃあ、私たちの会社の場合、何をしたらいいの?」ってことだとでしょう。そこは、僕に相談いただければお安く対応しまっせ、へっへっへ…(笑)
という冗談はさておき、今一度、自社のCSR活動を振り返ってみましょう。振り返る基準は「業績にプラスの影響を与えているかどうか」です。
CSVでもブランディングでも呼び方はなんでもいいので、社内も社外の人もみんなが最低限なっとくできるだけの数値化はすべきなのかもしれません。とっちらかったオピニオンになっていましましたが、今日はこのへんで。
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