CSRのインパクト投資評価

CSRは投資であるべき。

僕は当ブログでずっと主張している考え方です。当たり前だと思うんですよ。CSRだって企業活動。社員が1秒でも動けばコストが生まれます。それらに対して、リターンを考えないなんてありえないじゃないですか。

というわけで、今回はCSRの投資的な考え方と、評価指標となるフレームワークを紹介します。「投資」という視点から見る事で、CSRを定量化し、そのフレームワークを学ぶ事ができるのでは、と。

僕は金融が専門ではないので、専門的な解説ではなく、そのエッセンスを抽出できればと思います。

CSRにおける「インパクト投資の7つの質問」

インパクトインベストメントに詳しい熊沢氏は、CSR活動はアウトカム、インパクトを設定し、効果測定を行うべきとしています。じゃあ、どうしたらええねん、というと熊沢氏は以下の7項目の質問で見えてくると主張しています。

1、自社のCSRは事業性と社会性はどの程度両立できていますか?
2、CSRの目標設定はインプットやアウトプットではなく、社会への価値、アウトカム、インパクトレベルに設定されていますか?
3、CSRの取り組む課題は社会のニーズと自社のコンピタンス、強みの両方を考慮して決めていますか?
4、CSR活動で、お金以外の、人材、自社の強み、信用力、ネットワークなどをどの程度提供していますか?
5、CSR予算の決定は、取り組む社会課題を考慮して、単年度ではなく、中長期的に決定されていますか? また、裁量的にCSRのテーマや予算を決めるのではなく、戦略的コミットメントがなされていますか?
6、CSRの支出金額の規模は会社規模、利益の増減によって決めるのではなく、自社が生み出す社会的インパクトの大きさによって決めていますか?
7、CSRの効果測定は事後的で曖昧に決めるのではなく、事前にインパクトレベルの目標設定とインパクト評価の設計をして、投資対効果を明確に測定していますか?
これまでのCSRの方向性:インパクト投資

うむ。さすが熊沢さん、ポイントを抑えた素晴らしいフレームワークになってます。以前「ここテストにでますよ!SROI(社会的投資収益率)を理解するための3つのポイント」という記事を書きましたが、CSRを定量化していく行程は今後も避けられないでしょうね。

CSRは効果測定できにくいという企業は、大抵、計測をそもそもしようとしていない例がほとんどです。トップが理解していないし、現場も理解していない。つまり、CSRした結果何が起きているのか、本人達がわかってないのに、外部の人に説明なんてもとからできないないんですよ。

上記の7つの質問を常に考えながらCSR活動を設計したいものです。

ちなみに、SROIについては「ソーシャルインパクト債と社会貢献型投資の評価手法」(PDF)というレポートも参考になるかと思います。

スチュワードシップ・コード

余談ですが、あなたは「スチュワードシップ・コード」という単語を聞いた事はありますか?

スチュワードシップ・コードとは、2010年に英国で制定されたもので、「企業が長期の持続可能なパフォーマンスを高めるよう、株主・取締役・他の利害関係者が、運営プロセスに影響を及ぼすこと」を目的とした考え方です。

で、このスチュワードシップ・コードの日本版制定が近々で予定されており、機関投資家の投資先企業への関わり方を強め、企業経営に長期の資本生産性改善を含めた企業価値向上を図るよう規律付けることが制定の目的とされています。

このあたりは僕も勉強中で漠然としたイメージしかないのですが、「責任ある投資(relational investments)」に関連してくる項目であるということらしいです。ESG課題を始め、ガバナンスを含めて非財務情報なども、投資家によくチェックされるようになるよん、ってことでしょうか。

参考サイト
日本版スチュワードシップコードへの期待
誰が読むのか、スチュワードシップ・レポート

まとめ

いかがでしたでしょうか。

熊沢さんの「7つの質問」は非常に素晴らしいフレームワークですので紹介させていただきました。

ざっくりしたまとめにはなりますが「CSRは投資である」という企業活動の大前提をしっかり理解し、どうリターンを得るか、そして、それをどう報告していくかという点をより意識することで、CSR活動全体のインパクトとクオリティが上がるのかもしれませんね。

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