
サステナビリティ領域のキャリア
あなたは「サステナビリティ領域のキャリア」に興味はありますか?今日はそんな話をしたいと思います。
私はキャリアコンサルタントというわけでもないので、詳しいキャリア形成の話はできませんが、現場で20年近く活動している人間として、大学生や若手でサステナビリティ領域のキャリアに興味があるという人向けに情報提供をしたいと思います。
大学で講師や研究員をしていると、大学生と話をする機会も一定あるわけですが、わりと抽象的なイメージが先行していて、具体的なキャリアをイメージできていない人が多い印象です。それがダメかというとそうでもなく、教えられる人が大学にいない(教授陣も現場から離れているので教えられない)ことも影響していそうです。
さて、本記事では基本的には「サステナビリティに興味関心が強い大学生」向けにまとめていますが、サステナビリティ関連の仕事に興味がある一般ビジネスパーソンの参考にもなると思います。皆さんのキャリアを考える上で一つのヒントにしていただければと思います。
前提のお話
まずは前提の話から。私は2008年に独立し、2009年後半からサステナビリティ・コンサルタントとして活動をしています。当時は関連情報を発信している人が皆無だったため、大学生からサステナビリティ関連の仕事に興味があるから話をさせてほしい、という面談依頼をボチボチいただいてました。もちろん、キャリアコンサルは本業ではないので、時間があるときに無料で相談にのっていました。最近はサステナブルなキャリアみたいのが広まったせいか、私への相談は減っていましたが、最近は前述したように大学生と関わることも増えてきたからか、またボチボチ、キャリアの相談を受けるようになりました。
しかしキャリアに正解はありません。だから仮に上手くいかなかったとしても、少なくとも、このキャリアをめざしてよかったと思えるような選択をすべきです。キャリアの話では必ず使う言葉が「Connecting the dots」(点と点をつなげる)です。歩むキャリアに一貫性がなく見えても、その場その場でがんばっていたら、いつかそれらはつながっていたことに気づくはずです。私も2008年に独立して20年近く会社員から離れ、様々な組織・会社(自社含む)で活動をしていますが、意外につながっているなと感じています。こんなところからのアドバイスとなります。
職種別のサステナビリティ推進活動
まず、身も蓋も無い結論から言いますと、ほぼどんな仕事も、企業や社会のサステナビリティと関連性があり、どんなところからでもサステナビリティに関連するキャリアの道はありますよ、ということです。たとえば、事業会社の職種別のサステナビリティ推進活動例は以下のようなものがあります。
■職種別・活動事例
・営業 環境配慮型製品の販売、ESGヒアリングと社内フィードバック
・マーケティング 社会的側面に焦点を当てたPR、社会課題解決型製品の訴求
・経営企画 ESGを組み込んだ経営戦略策定、部門横断の推進連携
・広報 ステークホルダーとの対話、サステナビリティの社内広報、MVV浸透
・IR 投資家とのESG対話、有価証券報告書や統合報告書等での積極的なESG情報開示
・新規事業開発 社会的インパクトの高い事業の立ち上げ、オープンイノベーション推進
・調達/購買 調達先選定にESG基準を導入する、調達先のESG管理
・経理/財務 CFOと連携したESG推進、サステナブルファイナンスの推進
・総務 環境配慮型のオフィス環境の整備、資料のデジタル化
・情報システム 情報セキュリティの強化、DX推進、AIの活用とガバナンス強化
・人事 ダイバーシティ推進、労働環境の改善、健康管理、サステナビリティ研修実施
・品質管理 品質管理強化、顧客満足度向上の推進
・技術/製造開発 環境配慮型製品の開発、既存製品の環境負荷低減
・サステナビリティ 全社的なサステナビリティ推進と管理
別にサステナビリティ推進担当者だけがサステナビリティ推進業務のすべてを担っているわけではなく、むしろサステナビリティ推進部門以外の現場が、サステナビリティの主役だったりします。(程度や企業ごとの差はあります)特に上場企業では、ESGにも関連する法規制もあるため、間接的な業務を含めて多くの職種で推進活動に事実上関わることになります。つまり、事業会社の役割の中で、すべての職種で組織のサステナビリティ推進に関わることができるのです。
新卒から大手企業のサステナビリティ推進担当者になることはほぼ不可能です。中途採用のサステナビリティ関連求人を見てもらえればわかりますが、転職では「実務経験」が求められることが多いです。サステナビリティ推進担当者になりたいのに、経験者しか求められないなら一生なれない、となりがちですが、実はそうでもありません。「事業会社のサステナビリティ推進実績」がベストですが、統合報告書の制作会社や、サステナビリティ・コンサルティング会社での経験も実務経験に含む会社も多いです。(当社調べ)ですので、まだ募集枠の多いコンサルや制作会社に一度入り、そこから事業会社に行くパターンもあると思います。
業種別
そもそも、あなたはなぜサステナビリティ関連のキャリアを目指そうと思ったのでしょうか。この20年で出会ってきた何十人かの大学生に感じたことは「あなたが本当になりたいのはサステナビリティ推進担当者じゃないよね?」ということです。
というのも、たとえば「社会の役に立つ仕事がしたい」ということであれば、別にサステナビリティ推進担当者でなくてもよいわけです。ソーシャルセクター(NPOなど)でもパブリックセクター(官公庁・自治体など)でもいいわけです。むしろ、社会課題や地域課題解決にダイレクトに関われる仕事かと思います。(入社できるかは別問題)職業として考えるともう少し広く見た方がよいと思います。思いつくところでいうと、以下のような仕事がありそうです。
■業種別事例
・行政(官公庁、地方自治体)
・評価機関(認証機関)
・業界団体(公的な団体)
・投資家(金融機関、保険会社)
・業務支援会社(報告書制作会社、業務ツール)
・コンサルティング会社(ESG支援部門、IR支援会社、人材系)
・研究(アカデミア、シンクタンク)
・メディア
・専門家(各種士業)
など
また、仕事で関わることが難しそうだけど、「社会に貢献できる人間になりたい」というのが目的であれば、消費者として環境配慮型の製品・サービスを購入することもできるだろうし、週末ボランティアなどで地域やNPOに関わることもできます。副業が可能であれば、副業で細く長くサステナビリティ推進活動をしてもよいでしょう。サステナビリティ担当者を目指す前に「なぜサステナビリティ関連のキャリアを目指そうと思ったのか」という、根本の目的の解像度を上げる(明確化・言語化する)ことから始めてはいかがでしょうか。目先の職種にとらわれず、広い視点で探した方が、納得感のあるキャリアになるかもしれません。
ちなみに、中途採用を目指すビジネスパーソンは、まず転職サイトでサステナビリティ関連の募集がどのように行われているかをチェックしましょう。事業会社のサステナビリティ推進担当者の求人は多くはないですが定期的に募集されていますので、こまめに確認しましょう。
まとめ
簡単ではありましたが、主に大学生へのアドバイスとして改めてまとめてみました。学ぶ姿勢を見失うことは、人生を見失うことでもあります。「サステナビリティ領域のキャリアを築きたい」という、その気持ちを忘れずに、常に学びながらキャリアを作っていっていただければと思います。人間1人が人生で知ることとできることは限られています。年齢に関係なく常に学ぶ姿勢がなければ先には進めません。
企業および社会のサステナビリティ推進に関わる仕事は、とてもたくさんあります。この記事があなたのキャリアを考えるきっかけになれば幸いです。
◯参考
・サステナブルコミュニティ(2021)「ESGキャリアガイドBook」
・サステナビリティ・コンサルタントになりたい大学生に伝えたい3つのこと