みんな気になる「統合報告書アワード」
参考になる統合報告書はどこのですか。こんな質問をよく受けます。何をもって良いとするかの定義が難しいのですが、統合報告書のアワード/ランキングがいくつかあるのでそちらを参考にするとよいのでは、と毎回伝えます。
で、改めて情報収集をしていたら、ちょうど日経の統合報告書アワードが発表となったので、記事としてまとめたほうが読者の皆様のためになると思い紹介することにしました。事業会社担当者だけではなく、コンサルティング会社の方(コンサルタント)や、統合報告書の制作会社の方にも参考になること間違いなしです。
そこで本記事では、昨年末から今年にかけてあった統合報告書アワード/ランキングや、参考事例として金融庁の開示先進事例、関連アワード、などをまとめて紹介します。まだチェックしていないアワードがあったら、ぜひ確認してみてください!
日経
◯グランプリ
伊藤忠商事
オムロン
レゾナック・ホールディングス
◯グランプリE賞
日本航空
◯グランプリS賞
住友金属鉱山
◯グランプリG賞
日立製作所
◯準グランプリ
塩野義製薬
J. フロント リテイリング
東京応化工業
東京海上ホールディングス
TIS
村田製作所
出所:「第2回日経統合報告書アワード」受賞企業
※2023年3月発表
GPIF
運用機関から高い評価を得た「優れた統合報告書」
伊藤忠商事
日立製作所
オムロン
リコー
東京海上ホールディングス
味の素
積水ハウス
アサヒグループホールディングス
キリンホールディングス
三井化学
三菱UFJフィナンシャル・グループ
MS&ADインシュアランスグループホールディングス
出所:GPIFの国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」
※2023年2月発表
WICI
◯Gold Award(優秀企業賞)
伊藤忠商事
MS&ADインシュアランスグループホールディングス
オムロン
日本精工
◯Silver Award(優良企業賞)
塩野義製薬
住友金属鉱山
デンソー
◯Bronze Award(準優良企業賞)
アンリツ
日立製作所
富士フイルムホールディングス
三井化学
出所:WICIジャパン 統合リポート・アウォード2022
※2022年11月発表
参考資料
日本IR協議会|IR優良企業賞
◯IR優良企業大賞
アサヒグループホールディングス
日本電信電話
◯IR優良企業賞
味の素
荏原製作所
テクノプロ・ホールディングス
日立製作所
富士電機
三井化学
◯IR優良企業特別賞
アドバンテスト
村田製作所
横河電機
出所:「IR優良企業賞2022」受賞企業決定
※2022年11月発表
環境省|ESGファイナンス・アワード・ジャパン
〔環境サステナブル企業部門〕
◯金賞
アサヒグループホールディングス
味の素
◯銀賞
伊藤忠商事
積水化学工業
積水ハウス
東京海上ホールディングス
◯銅賞
アイシン
セイコーエプソン
デンソー
富士通
◯特別賞
INPEX
オカムラ
キリンホールディングス
三井化学
出所:第4回「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」受賞者の決定について
※2023年2月発表
金融庁|記述情報の開示の好事例集
有価証券報告書におけるサステナビリティ情報に関する開示
■1.「環境(気候変動関連等)」の開示例
エヌ・ティ・ティ・データ
カゴメ
SOMPOホールディングス
J.フロント リテイリング
セイコーエプソン
リコー
不二製油グループ本社
丸井グループ
髙島屋
中国銀行
滋賀銀行
双日
大東建託
サンゲツ
コスモエネルギーホールディングス
イリソ電子工業
AZ−COM丸和ホールディングス
豊田合成
東急不動産ホールディングス
三機工業
ヤマダホールディングス
味の素
■2.「社会(人的資本、多様性 等)」の開示例
丸井グループ
双日
カゴメ
三井物産
サンゲツ
J.フロント リテイリング
オムロン
アンリツ
豊田合成
東急
リコー
帝人
ひろぎんホールディングス
村田製作所
髙島屋
キッツ
コスモエネルギーホールディングス
不二製油グループ本社
旭化成
出所:「記述情報の開示の好事例集2022」の公表(サステナビリティ情報等に関する開示)
※2023年1月発表
雑感
去年〜今年は、伊藤忠商事、オムロン、日立製作所、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、住友金属鉱山、塩野義製薬、あたりが強かったですね。伊藤忠商事、オムロン、日立製作所の3社はアワード常連企業です。
しかし、これらの企業をベンチマークとしては考えないほうが良いかもとは思います。もう真似できないでしょ。表面的でテクニカルな部分は真似できるでしょうけど、私は中の人や組織を知っていますが、開示に関わる社内メンバーのスキル・知識の高さや、社内で本気で取り組んでいるコミットメントレベル、などがそもそも違い真似どころではありません。こっちが追いつく前に、先進企業もどんどん前に進むのでまったく追いつけないというか。
このコンサルタントや制作会社に頼らず、発行体サイドが自分で動ける内製スタンスを確立しているのがすごいです。自社だけでPDCAをまわしていける強さは、統合報告書の進化に大きく影響しているのは間違いありません。統合報告書の制作会社(コンサルティング会社)は第三者評価したりデザインをする程度といいますか。
何年もこれらのアワードを定点観測していますが、アワードに入る企業らは50社ないですよね。いつも見かける企業の顔ぶれは全然変わりません。それだけ二極化が進んでいると言えるのかもしれませんが。
あとは統合報告書ではありませんが、サステナビリティ情報開示を含む優良事例の参考事例もまとめました。特に上場企業は、サステナビリティ情報開示が一部義務化(有価証券報告書での開示義務化)となっており、金融庁などの事例集を確実に確認しておきたいところです。
まとめ
今回は統合報告書のアワードやランキングの企業紹介をしました。ここで名前の上がっている企業の統合報告書をぜひ一度目を通して見てください。業種・規模が異なっても学ぶべきところは多いはずです。
宝印刷D&IR研究所の調査によれば、2022年の統合報告書発行企業数は「872社」だったそうです。「JPX400中312社」「日経225中202社」が統合報告書を発行しているとのこと。1割にも満たない企業でアワードを独占させてはいけません。今年はランク外だからこそ、パッションを詰め込んだ統合報告書を今こそ解き放つべきです!(それが難しいとは重々承知です)
これらの他に統合報告書関連のアワード/ランキングがあれば、ぜひ【お問い合わせ】より教えていただけると嬉しいです。
参考:宝印刷D&IR研究所(2023)「統合報告書発行状況調査2022 最終報告」
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