サステナビリティトレンド2023

サステナビリティトレンド紹介

2023年1月最初の記事更新ということで、毎年恒例の「今年のサステナビリティ・トレンド紹介」をします。(※実は今年初めてです)

少し先取りしているので、サステナビリティ推進担当者の実務に影響がでるのは2024〜2025年だったりする項目ありますが、一旦このあたりを押さえておけばいいのかなと。

特に注目している3つのテーマと、その他のキーワードを。キーワードはネットで検索したり関連書籍で深掘りしてみてください。オマケで昨年に私が出版した書籍2冊も紹介させていただいてます。

1. SXがやっとノってきた

2020年に経産省から提言され、2022年8月に「SX版伊藤レポート(伊藤レポート3.0)」「価値協創ガイダンス2.0」が発表され、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)が盛り上がりました。経産省の話では、今後、アワードや研修?を進めるとのことなので、2023年もいろいろと目にする機会が増えると予想してます。

SXは、「企業のサステナビリティ(稼ぐ力)」と「社会のサステナビリティ(社会課題・将来マーケット)」を同期させ、事業変革を実現させる戦略を指し、SXを実行し投資家との対話を強化することが一つの目的とされています。

GXやSXなど、近年提唱された新しく重要な概念があるものの、企業におけるサステナビリティ経営の本質が変わるものではありません。社会の変化に合わせて、組織およびビジネスモデルをどのように変化させていくべきなのか、社内で適宜議論を進めたいところです。

>>参考書籍:安藤光展(2022)『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)

2. 1周まわって人が大事です

2022年6月、政府の「骨太の改革」(経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ ~課題解決を成長のエンジンに変え持続可能な経済を実現)が発表され、2023年度から人的資本の一部が開示義務化されることになりました。(正確には現時点で実施予定)

開示項目のデータ収集はもちろんのこと、目標値策定や改善案の提示など、背景情報を含めた開示が求められます。また、2022年8月に内閣官房「人的資本可視化指針」が発表されており主に19項目の開示を推奨しています。基本項目も多いので2023年開示分の各種情報開示では対応していきたいです。

とにかく人的資本は開示の議論が先行してしまい、実務やその意義の議論が遅れております。それ人的資源ではあるけど人的資本ではないよね?というテーマも多く、2023年は開示義務化からの議論が進み、方向性が固まる年になると予想してます。詳しくは私の本↓でぜひ!

>>参考書籍:安藤光展ほか(2022)『戦略的人的資本の開示 運用の実務』(日本能率協会マネジメントセンター)

3. 生物多様性がメインストリーム

2022年に想像以上に話題になったのがTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)でした。TCFDの生物多様性版のようなものです。生物多様性が重要だという話はそれこそ10年以上前からありました。しかし世界的な枠組みもなく、ビジネスセクターでは気候変動(≒CO2排出管理)対応が優先され、今一つメインテーマとして語られることはありませんでした。

2022年11月、自然資本観点でのリスク・機会の情報開示を検討するTNFDがベータ版第3版を発行しました。これを議論の叩き台とし2023年秋の最終提言書発行を目指すとしています。ただしTNFDにおいては、さまざまな指標が提示されているものの、TCFD等でいわれる「CO2排出量削減」のように、すべての地域・業種で統一された究極的な目標やゴールが定められているわけではないため、多くの企業では環境保全活動以上の取り組みから前に進みにくい現状もあります。2023年は調査を進めましょう。

参考:TNFD(英語)

その他のキーワード

そのほかに、2023年のサステナビリティ界隈で言及されるであろう、重要テーマをまとめました。界隈の人は気候変動関連のワードが多いと思いますが、ここではざっくばらんにまとめました。

■E(環境)
・GX(グリーントランスフォーメーション)政策
・スコープ4の普及
・ジャストトランジション
・エネルギー問題
・Scope3の開示義務化(ISSB基準策定)

■S(人・社会)
・ウェルビーイングの実効性
・サステナビリティ人材の育成と採用
・人権DD(トレーサビリティ)
・障害者雇用の法定雇用率上昇とその対応

■G(ガバナンス)
・ESGを全従業員の賞与指標へ
・パーパス経営の普及
・ESGデータ管理の普及
・インパクト評価

■開示関連
・機械可読性の重要性高まる
・有報での開示義務化

■社会動向
・EFRAGの動向(CSRD/ESRS)
・CSR元年(2003年)より20年で変わったこと
・2023年でSDGsが達成年まで折り返しへ
・IRフレームワーク登場から10年
・サステナビリティテックの勃興

まとめ

個人的な注目は、情報開示界のラスボスISSBの基準策定ですね。ISSBの開示フレームワークを参考にして、日本国内の開示義務化項目を広げていくので、2024年以降も気が抜けません。もちろん、企業価値向上の文脈は今まで以上に重要となります。

特に2023年は、いよいよ日本国内でサステナビリティ情報開示の義務化が始まります。それこそ2010年代前半は「CSR(サステナビリティ)は法律ではないからやらない」という上場企業の偉い人も多かったのですが、開示面とはいえ法制化ですからね。(10年以上前から日本でも法制化されると私言ってましたよね!)きちんと情報収集をして、確実に対応しましょう。

世界を一変させるルールメイキングが2023年起きます。我々は過渡期に生きているわけですが、日本では2003年の「CSR元年(サステナビリティが普及し始めた年)」から20年となり、この20年で一番大きな変化があります。良くも悪くも、この記事を読むあなたはこのエポックメイキングな出来事の当事者になれますよ!(意訳:担当者はとんでもない大変な年になりそうです!)

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