インテグリティ

信頼構築と情報開示

このブログの定期読者の方はご存知かと思いますが、2010年代前半から私が言っているのが、「サステナビリティ(CSR)は“信頼される企業になるため”に行うべき」です。

社会というと範囲が広すぎてイメージできないかもしれませんが、たとえばサプライヤーから顧客までつながるバリューチェーンを一つのコミュニティと考えると、利己的な企業よりも利他的な企業のほうがコミュニティに必要とされるのは間違いないし、信頼を得られやすいとイメージできると思います。

そう考えると、サステナビリティが直接的な持続可能性ではなく、サステナビリティ推進の中でステークホルダーから信頼を得て、結果として企業も社会もサステナブルになる、というほうが現実的かもしれまんせん。というわけで、サステナビリティと信頼性について、まとめてみます。キーワードとしては「インテグリティ(誠実さ:Integrity)」「オーセンティシティ(信憑性:authenticity)」あたりです。

情報開示と信頼性

企業からの情報開示は、ステークホルダー・エンゲージメントおよびコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしますが、問題は「情報の信頼性」です。なぜなら、ステークホルダーと企業との間には情報の非対称性と言われる実態が存在するからです。

企業から発信される情報に対して、ステークホルダーはその情報の正確性や適切性を判断できる情報をほとんど持たないことから、企業の発信する情報の信頼性が問われるのです。結局、どんなにネット社会となっても、ビジネスはステークホルダーという人に対する“義理人情の世界”です。

だからこそ、サステナビリティを推進することで、ビジネスモデルの誠実性や倫理性を高めることができ、顧客のみならずすべてのステークホルダーから信頼獲得がしやすくなるのです。情報開示だけでもダメだし、行動するだけでもダメなのです。言行一致しないビジネスや企業はいつか崩壊してしまいます。誰が嘘つく(つきがちな)企業とビジネスしたいと思いますか?。

どんなに合理的で論理的に思えても、信用ならない相手の話は都合がいい話と思われてしまいます。そう考えると、企業の構成要素としてインテグリティは非常に重要なのだと思います。まぁ、何が言いたいかというと、ステークホルダーに信頼されたければ、信頼してもらえるような情報発信と行動をしましょう、ということです。でも、これを年単位で継続するのはかなり大変です。(だからできている企業の信頼性が高いとも言える)

売上と信頼性

私は、サステナビリティは最終的に「信頼される企業になるために」するものと考えています。サステナビリティは、本来的には「次世代のための経営方針とその活動」なわけですが、そもそもなぜ企業は次世代のための企業経営をしなければならないのかというと、信頼される企業になるためです、と。つまり、サステナビリティ関連の情報開示においては「信頼される根拠」を徹底的に発信しなければなりません。

「SDGsやサステナビリティ推進で売上があがる」などの考えは浅知恵です。サステナビリティは売上を上げるビジネスモデルを維持するために、ステークホルダーの信頼を獲得する行為であるのです。商品・サービスの販売を下支えする、組織力強化の話というか。

SDGsやサステナビリティを“儲けの手段”として考えた時点でアウト。サステナビリティは「ステークホルダーから信頼を獲得する」ことであり、その成果としての経済価値創出は高いレベルで期待できます。サステナビリティは、インプット/アウトプットではなく、アウトカムの視点で語りましょう

サステナビリティはどこまでいっても直接的に経済的価値を生み出せるものではないし、そこを目指したらただのビジネスとなってしまい、サステナビリティとしての役割を見失ってしまう可能性があります。経済合理性を追求した結果、今のESG課題だらけの社会になってしまったわけでしょ?なのにまた儲かるサステナビリティといって、経済合理性を強く求めてしまったら…。実際、ネスレやパタゴニア、オールバーズなどの例もあることはありますが、日本の伝統的製造業企業は…まぁ色々ありますね。

こう考えると、ESGはもはや信用格付けを形成する一要素といった程度のものではなく、企業の“信用の礎”だとみるべきでしょう。ESGから利益を生みだしたい、などという悠長な話ではありません。ESGの発想がなければ、収益を生み出す土俵に乗ることすら許されなくなる、そういう世界になり始めているのです。ESGの発想を持たない企業や金融機関、国には、格付けがそもそも付与されない、という時代もそう遠くはないのかと。

もちろん、売上に貢献するサステナビリティ推進活動があれば、それは積極的に進めればいいでしょう。ただ、リスクと機会でいえば、機会(ビジネスチャンス)だけにフォーカスしたサステナビリティだけでは、企業を守れないよ、ということです。最低限、リスク管理のサステナビリティもやらないと、です。みなさんが考えている以上に、サステナビリティって広範囲な概念ですよ。

信頼をマネジメントする

企業サイドがサステナビリティがどうこう言っても、最終的に企業の存続を決めるのはステークホルダーです。ステークホルダーに選んでもらえない限り、企業はサステナブルな存在になれません。その選んでもらえる重要要素の一つが信頼性なのです。

企業はサステナビリティ活動を通じて「信頼をマネジメント」しなければなりません。ステークホルダーから企業への信頼は無形資産(ブランド価値)そのものでもあります。ステークホルダーが望む企業であり続けましょう。当然「信頼」と一言でいっても、多面的な側面があるため、特定の何かがあるわけではないし、ステークホルダーによっても意味合いがことなるし、同じステークホルダーグループでも、価値観の差により信頼の形が異なる場合もあります。ですので、究極的には具体的な何かというより「ステークホルダー・ファースト」の姿勢を貫き通せるか、です。

まとめ

「礼儀正しさ」は後天的なものです。人も企業も、です。「良い企業」であることが生存競争として有効になった時代を、われわれは生きています。サステナビリティはまさに「信頼される企業になるため(≒いい企業になる)」の活動の一つです。

哲学的になりがちな概念でもありますが、ステークホルダー資本主義の考え方はまさに、信頼構築フレームワークなのだと考えています。

社内的には、ステークホルダーの信頼獲得よりESG評価機関対応、なのかもしれませんが、この信頼という視点もサステナビリティ推進や情報開示には重要な要素になると思いますので、ぜひ覚えておいてください。

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