改訂コーポレートガバナンスコード

改コーポレートガバナンスコード2021

日本取引所グループは11日、上場企業の企業統治に関するルール「コーポレートガバナンス・コード」の改定版を施行しました。社外取締役や女性活用で欧米の統治基準に近づける目的です。ガバナンス以外でも人権や気候変動といったグローバルイシューへの対応も求められます。2015年の導入後、3年ぶり2度目の改訂です。今回の改革は、東証が22年4月に予定する市場区分の再編ととも関係しています。最上位市場となるプライムの上場企業には一歩進んだ企業統治を求められるため、目指す企業としては対応に追われる日々になりそうです。

>>日本取引所グループ:改訂コーポレートガバナンス・コードの公表

私にとっては大きなニュースだったのですが、金曜の夕方発表だったからか、ちょっと界隈の動きが鈍かったと感じていますが、この週明け月曜からは本格的な対応が進むと思います。本記事は速報的な立ち位置ですが、今回の改訂コーポレートガバナンス・コード(改訂CGC)について、ポイントをまとめます。

改訂の主なポイント

日本取引所グループが指摘する改訂のポイントは以下の4点です。

1. 取締役会の機能発揮
・プライム市場上場企業において、独立社外取締役を3分の1以上選任
・指名委員会、報酬委員会の設置
・経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキルと、各取締役のスキルとの対応関係の公表
・他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任

2. 企業の中核人材における多様性の確保
・管理職における多様性の確保についての考え方と測定可能な自主目標の設定
・多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表

3. サステナビリティを巡る課題への取組み
・プライム市場上場企業においてTCFDまたははそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実
・サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取組みを開示

4. 上記以外の主な課題
・プライム市場に上場する「子会社」において、独立社外取締役を過半数選任又は利益相反管理のための委員会の設置
・プライム市場上場企業において、議決権電子行使プラットフォーム利用と英文開示の促進

日本取引所グループ:改訂コーポレートガバナンス・コードの公表

なお、合わせて、金融庁より同日に「投資家と企業の対話ガイドライン」も改訂版が発表されています。こちらも、サステナビリティ関連のキーワードが多数盛り込まれています。

>>金融庁|「投資家と企業の対話ガイドライン」(改訂版)の確定について

実務的なポイント

社会的なニーズの高まりを受けて、環境・人権・ウェルビーイングなど、EとSに関しても一通りキーワードが盛り込まれました。あとESGには入らない無形資産として指摘されていた知財も含まれました。ここをポイントと指摘するメディアも多いですね。以下、主に改訂箇所を中心に、サステナビリティの実務的な部分をまとめます。

<全体>
・中長期を見据え、サステナビリティ課題への積極的、能動的な対応が重要。これらの対応はリスクと機会の両面から見ても重要な経営課題である。

<E>
・環境情報開示はTCFDにそった形で開示しなさい!
・気候変動や自然災害等への危機管理へ対応しましょう。

<S>
・人的資本や知財への投資戦略を、戦略との整合性を意識して具体的に開示しましょう。
・多様性は重要。女性、外国人、中途、若い人、を採用しなさい。ちなみに、戦略的に目標と実績もちゃんと開示しましょう。
・人権、労働慣行、ウェルビーイング、倫理的な取引、全部大事。つまり人って大事。もっとステークホルダーを知ろう。

<G>
・取締役会は、サステナビリティに関する方針策定、実効的な監督、をしましょう。
・マテリアリティにそって必要な取締役のスキルを定め、それに合わせたステキルを持つ取締役を揃えなさい。(素人取締役はいらん)
・社外取締役は企業の経営経験のある人を採用しよう。(素人取締役はいらん)
・そのほかたくさん

担当がまずすべきこと

まずサステナビリティ担当者がすべきは、社内関係各位に「改訂CGCの要旨」「実務上の注意点」「今後必要な想定アクション」をまとめて共有することでしょう。上記注意点をまとめれば、ペライチの報告書になると思います。

特にプライムを目指す企業で、一定レベルのESGおよびサステナビリティ全般の対応と開示を行ってきた企業は部分修正で対応できるでしょうが、そうでもない多くの東証一部企業は、ここから半年でコーポレートガバナンス報告書を出さなければいけないようですし、えらいこっちゃです。

改訂CGCへの対応は、サステナビリティ担当者ではなくIR担当だったとしても、どちらもより連携して開示をすすめる必要があります。最近のサステナビリティ情報開示はIR要素が強くなっているので、予想できた未来ではあります。これらを今でも統合思考というのでしょうか。とにかく企業の総合力が求められます。現場も経営陣もどちらにも変化を求める改訂になったかと思います。こうやって制度・規制が整っていくことで、今まで「本業こそが社会貢献」(俗に言う「豆乳CSR」)と言っていた企業も、サステナビリティの重要に気づいてくれる……といいのですが。

まとめ

私はコーポレートガバナンスが専門ではないので、一部誤解があるかもしれません。あれば【お問い合わせフォーム】からご指摘いただけると大変ありがたいです。

なお、当方業務で改訂CGCに関連することでは、「TCFD対応(活動および開示)支援」や「人権管理(ダイバーシティ、ワークライフバランス、ウェルビーイング)支援」あたりでしょうか。レベル感は、初期対応やそれに近い支援ケースが最も多いです。皆さんも、うまく外部リソースも活用しながら体制整えていきましょう。

もちろん、上場企業ではない上場準備企業や大手非上場企業でも、コーポレートガバナンスは企業経営の要ですので、参考にされたほうがよいと思います。

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