ESG企業ランキング
4月半ばに発売された「CSR企業白書2019」(東洋経済新報社)で、最新のESG企業ランキングが発表されていましたのでご紹介します。
先日、当ブログでも紹介した記事「今年もNTTドコモがトップ!「東洋経済CSR企業ランキング」(2019)」で紹介したのは、財務点を含めた総合評価のランキングです。今回ご紹介するのは、純粋なESG側面の評価ランキングです。
財務の一定の考慮はあるもの、ESG側面の順位なので、事実上のCSR/ESG評価となっています。また、総合評価には入らない、金融や保険業などの企業もランキング対象企業となるため、本当にCSRの実力がないとランキング上位に入れないという仕組みになっています。
CSR総合ランキングとは少し異なる興味深いものになっていますので、ぜひチェックしてみてください!
2019年ランキング・トップ30
1、SOMPOホールディングス
2、NTTドコモ
3、丸井グループ
4、KDDI
5、富士フィルムホールディングス
6、オムロン
7、トヨタ自動車
8、帝人
9、ブリヂストン
10、東京海上ホールディングス
11、富士ゼロックス
12、花王
12、MS&ADインシュアランスグループホールディングス
14、アサヒグループホールディングス
15、TOTO
16、セイコーエプソン
17、日本電信電話
17、NEC
19、セブン&アイ・ホールディングス
19、コマツ
21、第一生命ホールディングス
22、アシックス
23、みずほフィナンシャルホールディングス
24、野村ホールディングス
25、コニカミノルタ
26、大和証券グループ本社
27、ファンケル
28、NTTデータ
29、富士通
30、旭化成
(ESG+H、環境・社会・企業統治・人材活用の4カテゴリ400点満点の総合順位)
参照:「CSR企業白書2019」(東洋経済新報社、2019年4月)
2018年ランキング・トップ30
昨年のトップ30は以下のとおりです。今年とあまり顔ぶれは変わりません。昨年はトップ30だったのに、今年トップ30に入れていない企業は、結果論として、努力が足りないというか背後から追い抜かれた形になっており、2020年は再度ランクインできるよう、がんばっていただきたいです。
1、SOMPOホールディングス
2、KDDI
3、NTTドコモ
4、アサヒグループホールディングス
5、NEC
6、丸井グループ
7、ブリヂストン
8、MS&ADインシュアランスグループホールディングス
9、コニカミノルタ
10、帝人
11、オムロン
12、コマツ
13、大和証券グループ本社
14、第一生命ホールディングス
15、セブン&アイ・ホールディングス
16、トヨタ自動車
17、日本電信電話
17、横浜ゴム
19、東京海上ホールディングス
20、富士フィルムホールディングス
21、三菱ケミカルホールディングス
21、TOTO
23、東京ガス
24、アシックス
25、大阪ガス
25、マツダ
25、フジクラ
28、JSR
29、野村ホールディングス
30、みずほフィナンシャルグループ
所感
東洋経済のCSR総合評価は、半分の得点が財務状況であるのでそれを取り除いた(とはいえROE5%未満は除外)、純粋なCSR(社会的側面)の活動および開示の充実度をランキングしたものと考えて貰えばと思います。いわゆる「CSR/サステナビリティの総合評価」と考えればわかりやすいでしょう。
このESG企業ランキング上位企業は、事実上の国内CSR先進企業であるのですが、最近はトップオブトップの企業間での順位も熾烈であり、第三者としては興味深い展開となっています。
2018年に続きSOMPOホールディングスが2019年も1位を獲得。ここ数年はNTTドコモ、KDDIに加えて丸井グループ、SOMPOホールディングスあたりがトップ争いをしてます。花王、セイコーエプソンなど急上昇企業も、もともと実力派なので今後どうなるかわかりません。
2018年の1位SOMPOは391点、30位みずほは372点と30社が約20点にひしめく大接戦。トップ10はどこがトップ3にきてもおかしくない点数差です。2019年では、1位SOMPOが395点、30位旭化成が378点とトップ30はさらに混沌としたランキングに。ちなみに、30位旭化成は378点ですが、59位キヤノンが370点であり、なんと約8点の中に約30社が入っています。
で、ESGランキングということで、ESG投資についての言及に期待されている方がいるかもしれませんが、この上位ランカーがESG銘柄かどうとかは本記事では言及しませんし、上位ランカーが“買い”であるかどうかは私の専門外なので言及しません。ただ一つ言えるのは、このランキングは他の投資要素の補助情報的な立ち位置としてみると、有意なデータになるとは思います。
CSR先進企業の実態
SOMPOホールディングスは我々のCSRウェブコンテンツ調査でも2年連続トップとなっており、CSR関連ランキングでは敵なしとなっています。で、私が気になるのが成果(アウトカム/インパクト)です。SOMPOだけではありませんが、CSR/ESG企業評価が高くても、不祥事になることを何十年もしていたりするし、従業員自体にCSRがあまり浸透していなかったりします。また、実際の社会的インパクトも低そうな(そもそも開示がほぼない)企業も、上位企業にもいます。結局は、体裁ではなく、実務的にCSRの成果を生み出せる仕組みを作っているかどうかは外部からはわかりません。
そこで、先日SOMPOのCSR担当の方のヒアリングにいってきた内容をまとめた記事「組織マネジメントにCSRが効くかもしれない話」をYahoo!ニュースに寄稿しました。結論から言えば、CSRの創発的な活動を促す仕組みづくりが秀逸でした、という話です。
CSR/ESG評価の高い企業は、次に社会的な成果を求めにいくのは必須であります。今回紹介したランキング上位30社は、もう改善できることがないくらい徹底的にCSR活動をしています。私はその次のアクションに必要なのが「“本当に”実践されるCSR活動の仕組み」だと考えています。本当に社会の役にたつ成果を生み出せるかどうかが求められるのではないかと。
ランキングの趣旨からずれるのでこれぐらいにしますが、企業は「いかに評価されるか」をある程度達成したら、次は「いかに成果を出して、さらに評価される企業になるか」を模索していただきたいです。
CSR企業白書2019
まとめ
日本企業のCSR/ESG格付け・レーティングは、競争が激化しているものの、さらに一歩踏み出して、成果(経済的・社会的価値)をどれだけ生み出せるのかという次元の違うステージに差し掛かっているように感じています。
サステナブルな組織および社会を構築するうえでCSR/ESGが重要なのは間違いありませんが、もっと価値創出にフォーカスした取り組みもすべきだし、それを評価できる仕組みが評価機関に求められ始めている気がします。
というわけで、詳しいデータ等は、書籍および該当ウェブページで確認してみてくださいませ。今から来年のランキングが楽しみでございます。
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