SDGsコミュニケーションガイド

先日、広告大手の電通が、企業の経営層や広告宣伝に携わる方々、広告会社の方々向けに、SDGsに係るコミュニケーションを考える際の手引きとなる「SDGsコミュニケーションガイド」を発表しました。

>>電通、「SDGsコミュニケーションガイド」を作成

SDGsについての解説から「SDGsウォッシュ」などに関する注意点、SDGsコミュニケーションのポイント、などが簡潔にまとめられているレポートです。

いくつか私見を交えてご紹介いたします。

ガイドブックの背景

SDGsコミュニケーションガイドは、作成委員会メンバーとして、後藤敏彦、粟野美佳子、石田一郎、沖大幹、金田晃一、木下浩二、黒田かをり、堀江 由美子(敬称略)という、CSR/サステナビリティ界隈で有名な方々が参加し取りまとめたようです。

実は、電通は2010年に社内啓発目的の「DENTSU グリーンウォッシュガイド」(グリーンウォッシュにならないためのDENTSU環境コミュニケーションガイド)というガイドブックを作っています。そういった背景も影響しているのか、ガイドブックではSDGsウォッシュに関しての記述が多くあります。広告、CSRでいうとステークホルダー・エンゲージメントにおいて、やはり過剰な演出はいつの時代も問題視されますし、コミュニケーションのリスクマネジメントとして、担当者は必ず把握しておくべき課題です。

SDGs情報の価値

SDGsのコミュニケーションを企画するにあたっては、企業の規模や能力にふさわしい施策であること、施策の成果が明確で途中経過や結果を一貫した指標で報告できること、単発的でなく持続可能な施策であること、そして「その企業ならでは」の必然性があることを、先立って確認しておくべきだと、このガイドは提唱している。
「企業がSDGsゴールに関する施策を、ポジティブ面だけをとらえて広告することは危険」と同ガイドは指摘。「実施した施策だけでなく、企業全体の事業が社会に及ぼすマイナス面も考慮に入れ、そのマイナス面についても開示しておかないと、『ウォッシュ』と判断されるリスクがあります」
電通、「SDGsコミュニケーションガイド」を作成

何事も、ポジティブな面もネガティブな面もあります。これはSDGsに限ったことではありませんが、大手企業になればなるほど、ポジティブな側面を強調するようになります。ネガティブな情報は現場が開示した方がよいと思っても、上層部でNOとなることも多く(これ本当に多いんです)、企業とステークホルダーはいつも情報の非対称性に課題を抱えることになります。

私たちが見ている企業情報は「企業のごく一部でしかない」のです。しかも「見栄え良く編集された情報の一部」に過ぎません。

企業の開示情報を考慮しステークホルダーは何かしらの意思決定を行うわけですが、ガバナンスのフィルターがない情報で意思決定をしてしまうと、ステークホルダーに不利益な状況となります。御社のいう“企業価値向上”における価値とは、ステークホルダーから搾取したものであっていいのですか?

コンセプトの乱立

CSVもそうでしたが、SDGsなどCSR/サステナビリティの新しいコンセプトがでてくると、すぐに乗っかる人(ビジネス的に)がいます。それは構わないのですが、大抵、専門家ではなく“素人がど素人に教えているだけ”の状況です。そうした現状もSDGsウォッシュを加速させている原因の一つと推測しています。

今年に入りSDGsウォッシュの問題が表面化してきているので「CSRとCSVに関する原則」のように、有識者が行き過ぎたコンセプト至上主義に警鐘を鳴らすアクションをしたほうがいいのかもしれません。

CSVで考えれば、5年程度で支援側のビジネスが落ち着いてきた(淘汰が進み“一応”本物が残っている)ので、SDGsも2020年ころまでは、いろんな人が“それぞれの定義”で企業支援をする可能性が高く、当分の、SDGsウォッシュにきをつけなければならない状況が続くと思われます。

この場で、SDGsウォッシュを実際していると思われる会社名を申し上げることはしませんが、御社もSDGsウォッシュになっていないか、ガイドブックを使って、一度確認してみてください。

まとめ

最近は「SDGsレポート」という形で、SDGsに対する取り組みをまとめた例も出始めています。例えば「日立の事例」などです。今後も大手上場企業を中心にこういった特化型レポートも増えるでしょうし、よりSDGsウォッシュな事例が増えてしまう可能性が増えてきます。

私は直接電通の方と知り合いなわけではないのであまり強く言えませんが、とても重要なことだと思いますので、広告・デザイン業界の中での普及なども一緒にして、今後も出てくるであろうSDGsウォッシュな事例を1件でも少なくしていただきたいと思います。もっとCSR有識者を巻き込んだ方がいいとも思います。

CSR担当者だけではなく、広報、マーケティング、経営企画などの部門の方も確認したほうがよいと思うレポートなので紹介させていただきました。

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