CSR活動のKGI/KPI

CSR活動がうまくいかない。その原因は活動の目標/目的がそもそも間違っている、もしくはマイルストーンとなるKGI/KPIや行動管理(活動評価)の方法が間違っている可能性があります。

もちろん、うまくいかない理由は他にも様々な要因がありますが、辛辣な表現で恐縮ですが、素人なCSR担当者が作った目標管理でうまくいく例のほうが少ないです。

CSRの世界では、ながらく成果目標の設定や活動の効果測定などを積極的に行ってきませんでした。世界的な議論が進む領域ですが、インパクト評価やロジックモデル等の考え方は、まだまだ課題があり定量的な効果測定がそもそも難しいというのも原因の一つです。

さて、とはいえ、マテリアリティ特定や統合報告の浸透もあり、CSRは“戦略至上主義”の時代へと突入しています。戦略とはつまるところ「目標を決めてPDCAをまわす」ことです。(えらい省きました)

そこで本記事では、ご質問の多かった、戦略的CSRを進めるにどのような目標設定や行動管理のプロセスが重要なのかをまとめます。

評価と効果測定

CSRでは企業理念の達成が最終的かつ究極的な目標・ゴールとされます。その目標を達成するにはPDCAの中で評価基準が必要です。評価基準は目的を達成するための重要な手段です。

しかしながら、CSRの現場では評価手法はあまり語られず、達成できないであろう夢物語を“戦略”とします。「2050年に〇〇をゼロにします」などはこれです。バックキャスティング思考が悪いとはいいませんが、根拠のない目標は目標ではない、と私は考えているからです。その2050年の目標・ゴールに向かって「何を実行し、どのように測定し、来年にはどれだけ改善させるのか」は“今度考えますんで”なんて信じられますか?(意思決定をした50〜60代の経営層の大先輩たちはそれでいいけど、ギリギリ逃げきれないであろう20〜30代には良い迷惑です)

愚痴っぽいので、話を戻します。

事実歴史が証明するように、ルール、ガイドラインが明確ではないCSR関連のコンセプトはたいして上手くいきません。この理由は簡単でして、基準が明確でないから誰もうまくできないのです。軸がないから測定や評価ができず“うまくいっている”かどうか判断できない。CSRが上場企業や大手企業でしか普及していないのは目標・ゴールが不明瞭だから、というのがあります。

たとえばSDGsは逆でかなり明確です。17のゴールを達成できるかどうか別として「ゴール/ターゲット/インジケーター」は明瞭。期限の設定もあるので、目標設定としてはかなりハイクオリティです。

他のコンセプトで言えば「CSV」があります。CSVはWhyが弱いというか、Howはあるけど明確なゴールがないためグローバル・ルールになりきれなかった、ということでしょうか。(ただしCSVの考え方はとても重要な示唆があるためCSR担当者は必ず理解しておくべきです)

目標設定方法

では、どのような目標設定であればよいのでしょうか。その方法論として注目されているのが「SMART」です。(私の中でフィーバーしているだけ、という説もあります)

このフレームワークは「SMART(具体的で、測定可能で、達成可能で、自社ビジネスに関連性が高く、期限が定められている)」という意味です。まさにブレブレなCSR戦略における目標設定と効果測定をビシっと指摘するようなフレームです。

社会的成果をすべて定量化できないというのは重々承知していますが、だからといって目標設定と効果測定をしなくてよい理由にはなりません。事業活動である以上、CSRは「サイエンス(科学)」であり再現性がなければなりません。計測できなくとも、少なくとも、観察可能な仕組みで実行すること、が必要です。そのためにはSMARTのポイントが非常に参考になります。

まだまだ多くの企業のCSR活動は「アート(芸術)」です。属人的ともいえます。担当者や社長/担当役員の好みで会社のCSRが決まってしまうのです。これが良い方向で進んでいればいいのですが、熱心でセンスのあったCSR担当者が退社もしくは異動してしまった会社のCSR評価が翌年から一気に下がるなんてよくあることです。CSRだけではないですが、組織を作るって再現性を高める上でとても重要なのです。

たとえば、貧困撲滅や差別撤廃などの崇高な理想を掲げるのはCSRのミッションとして素晴らしい。しかし完全な達成がほぼ不可能な壮大な目標は、該当プロジェクトの具体的な進捗を問われず、費用対効果を叱責もされない免罪符となることが多いです。CSR・サステナビリティ・社会貢献の概念自体は、ほぼ誰も反対しない理想であり、成果を求めなければ形式上の善人にすぎないことによく注意すべきです。ここらを理解して目標をたてないと…あとでどうなっても知りませんよ。私は指摘しましたからね!

目標と数値というのは管理すべきものです。目標を達成しようがしまいがその数値に至った理由を理解しておかないと意味がありません。ステークホルダーに質問された時に失敗の理由を「なんとなくです」とは答えないですよね?

目標設定の注意点

他には注意点は以下のようなものもあります。

・目標に明確な根拠がない
・目標自体に“やらされ感”が見えている
・「目標管理」と「行動管理」との差がわかっていない
・成果を最大化すべきタイミングが盛り込まれていない
・管理できない目標はKPIにしない

「成果を最大化すべきタイミング」はとてもとても重要です。たとえば「短期的に、できる限り多くの人の命を救う施策」と「長期的に、世界平和に貢献する施策」は基本的に異なります。この時間軸を戦略に加えない企業が多いから、戦略がぐちゃぐちゃになってしまうのです。CSR活動の原理原則となる指標は「成果」のみですので注意しましょう。

まとめると、CSRに関する目標は「ビジネスを通じて創出される社会的価値に対して設定され、なおかつそれが定性的・定量的に計測可能なものである」ということです。測定できないものを管理しようなんて、おこがましい限りです。

また、目標設定の条件となるのは、

・企業理念/中期経営計画と整合性がある
・目標達成による社会的成果が社会課題解決と連動している
・企業価値向上に連動している
・従業員が理解しやすい内容である
・グローバルアジェンダである
・自社のユニーク/オリジナルな指標である
・最終成果だけでなくプロセスも評価できる

などなど。上記の注意点および設定条件がことごとくはずれている、とおもったら早急に改善してください。手遅れになる前に、上司に相談です!

まとめ

本日の記事をパワーポイントにまとめるだけでそれなりの金額で売れそうですが、マテリアリティ特定からの目標設定について質問を受けることが増えたのでまとめてみました。(言うのは簡単、やるのは困難…)

経論、成果に貢献しうる、因果関係がほぼ明確になったKPIを発見できれば、CSR活動は半分目標達成したようなものです。目標がわかれば、あとはやるだけですから、難しいことはありません。多くの問題は“何が問題かわからない”ことが問題なのですから。この「“何が問題かわからない”という問題」の解決のプロがコンサルタントです。(ですよね?)

CSRコンサルティング業務の多くは、簡単にいえば、お客様に情報やアイディアを提供するお仕事です。実行のサポートもさせていただきますが、顧客企業の従業員ではないため最終的な実行には関与できません。コンサルタントは、情報や知見を活かし企業に、一歩踏み出す大切さを伝える人でもあります。

CSR/サステナビリティ領域は他のカテゴリにまだまだこれからかもしれませんが、このあたりの難易度の高いタスクを含めて、より企業価値向上に貢献しうるサポートをすべく、日々精進してまいります。

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