SDGsの企業の課題
SDGsに日本企業はいかに貢献できるか。そして、SDGsという考え方を利用することで、企業自身がどのような価値を生み出すことができるのか。
日本企業は、SDGs達成に向けたアクションで「なぜ自社が行うか(必然性)」「何を実現したいか(価値創出)」「イノベーションを起こせるか(意識変革)」などを確かめながら、日々の通常業務を行わなければなりません。SDGsのようなグローバル・ビッグイシューと対峙するには、企業単体でどうにかなるものではないので、相当な覚悟と努力が必要になります。
さて、では、企業がSDGsを進める上で、どのような課題が考えられるでしょう。2018〜2019年でより注目されるであろう課題や企業価値についてまとめます。
SDGsのビジネスモデルと価値創造
「ビジネスと持続可能な開発委員会」によれば、SDGsに関連する持続可能なビジネスモデルが2030年までに最大で12兆米ドル規模の経済的機会を生み出し最大3億8,000万人の雇用増加につながるとしています。これがよく言われる、SDGsのイノベーションや企業が取り組むメリットとされます。
ただ、私が最近感じるのはSDGsがなくても新規性の高いビジネスも含めればこのレベルは実現できるのではないか、と。(SDGsの“こじつけ”はいくらでもできるので)はっきり言えば、SDGs対応がただの“願望”になっている企業が多いということです。
願うだけでは叶わないというのはMDGs(2015年)ですでに体験しているはずなのですが…。自分たちがコントロールできないことに注力することは戦略ではなく、それはただの願望・希望の類であり、企業が取り組むべき姿勢とはいえません。自分たちでコントロールできるアクションに集中するべきでしょう。
SDGsの17のゴールのように崇高な理想を掲げるのはCSR活動のミッションやKGIとして素晴らしいです。しかし完全な達成がほぼ不可能である壮大な目標となるSDGsは、該当プロジェクトの具体的な進捗を問われず、費用対効果という概念もほとんどありません。CSR/社会貢献は、社会の誰も反対しない理想であり、成果を求めなければ、形式上の善人にすぎないことによく注意すべきです。これがSDGsの「総論賛成・各論反対」ともいえる構図を生み出したのではないでしょうか。
SDGsと社会的・経済的インパクト
SDGsに対するインパクト評価の結果を説明している企業は少なく、また、多くの企業はポジティブなインパクトについてのみ報告してます。CSRは「事業のポジティブな影響を最大化し、ネガティブな影響を最小化する」という考えかたです。あるべきCSR報告としては、ポジティブ/ネガティブの両面のインパクトについてバランスよく開示するのが理想です。
それらができてはじめて自社のビジネス・イシューを的確にとらえPDCAをまわし、ステークホルダーへの情報開示ができるというものです。ここまできてやっと「ビジネスインパクトのあるSDGs対応戦略」と呼べるものになるでしょう。昨今の事業のSDGs対応を開示する企業も増えていますが、どの企業も所詮“願望”でとどまっているのが残念なところ。コンサルティング会社に発注しておいてそのレベルですか、という。
SDGsはイシューベース(社会課題視点)の目標・ゴールです。そのためSDGsの達成に取り組むことが、必ずしもステークホルダーの求める、直接的なリターンや価値創出につながらないのですが、SDGsに取り組む直接的な合理性は少ないものの、企業がSDGs達成に取り組むことで長期的に企業価値を創造(リスク管理含む)できるという側面もあります。
つまり、企業が取り組むべきSDGs対応でまさに“より合理的な”活動も不可能ではないのです。では、企業経営において「合理的なCSR」とは何か。それこそがまさにマテリアリティだと私は考えます。このあたりは、別の記事でまとめます。
企業のSDGsは停滞している
先日「SDGsへの企業活動、採択から2年で停滞か」という記事を読んだのですが、内容としては、コーポレートシチズンシップ社の「浸透は進んだが具体案や関与が停滞しており、企業の意識と行動に大きな差がある」という調査結果をまとめたものです。
私はすごく実感があるのでとても共感してしまいました。つまり「SDGs対応の戦略」はあるけど「SDGs達成にむけた具体的な活動および成果はまだ」というのが世界の現状であるということです。
私が前から言っていますが、日本でもSDGsにこじつけたビジネスモデルはいくらでもあり、そもそもSDGsがなくてもそれ実行してたよね?というものもいくらでもあるという事実があります。
SDGsは、17のゴール(目標)、169のターゲット(課題)、232のインジケーター(評価指標)で構成されています。このSDGsのインジケーターに貢献してこそ、ゴールまでたどり着くことができます。なのに多くの企業ではいきなりゴールまでジャンプしようとします。いや、さすがに無理だって。
SDGsをマクロ(グローバル)でみるか、ミクロ(ローカル)でみるか、もっといえば、インパクトのマクロ(環境問題など)とミクロ(労働問題など)をどこまで追うか、など、ビックマウスな前に考えることあるんじゃないの?と私は思います。
ビジネスなんて行動してナンボですよ。
まとめ
世界でもそうですが、日本企業でも急激にSDGsの考え方が広まっています。
もちろん、SDGsがどうのこうのと言っているのは、大手企業を中心に数百社程度で、ビジネスセクター全体のコンセンサスにまだなっていない現状もあります。
様々な課題もありますが、横並びが大好きな日本企業としては、業界トップランナーから社会の変化に対応していき、それぞれの業界内でも広がっていくのでしょう。
私もなんだかんだで推進派ですので、どんどんSDGsを広げていけたらと思います。ご興味がある方は以下の関連記事もご参照ください。
関連記事
・SDGsにおける企業戦略の課題/問題点
・SDGsへの企業対応事例増加による、CSRの3つの課題
・SDGsの企業対応事例(面白ネタあり)