制作会社の選び方
先日行った「CSR企業評価研究会」で、やや定例会テーマと異なりますが「CSR報告書/統合報告書の制作会社の課題」について、興味深い話がでていたのでまとめます。
夏から秋にかけてCSR報告書/統合報告書/サステナビリティレポート(本記事では便宜上「CSR報告書」で統一)の発行が多くなるのですが、4〜5月はまさに作っている最中、という企業も多いと思います。
CSR報告書およびCSRウェブコンテンツの制作会社は世の中何千社とあるのですが(制作できると“自称”している会社が)、発注側の企業は上場企業でも1,000社ないので、寡占はあまりなく、中小規模の制作会社が1〜数十社程度を毎年担当することが多いようです(当社調べ)
私自身、CSR担当者の方から“色々と愚痴を聞く”ことも多く、本記事ではそれをまとめたいと思います。御社のレポート制作の課題は、多分、他社もほぼ同様に抱えていますよ。
提案力の有無
仕事柄、様々な規模・業種のCSR担当者の方と話をさせていただきますが、ここ数年で企業サイドが制作会社に求める条件が随分整ってきた印象があります。条件の一つが「提案力」です。最近はCSRの戦略性が評価されることも多く、見せ方の重要度は以前より高くなっています。
そんなの前からと言われそうですが、ここ数年でさらに進化した国内CSR先進企業の100社程度では、担当者レベルではもう一通りCSR活動や情報開示をしていて「次の一手」を探していることが多いです。要はCSR報告書も社会の流れを反映させてますが、ビジネス・インパクト(アウトカム、インパクト)や外部評価向上につなげられてないことに気付き、どうにかしようともがいている、と。
そこで制作会社を決めるコンペでも、コストをできるだけ安くして一番「提案力」がある会社を採用したいと考えます。まぁ、うまく見つけられたと思っても、そのプレゼンテーションを担当したエース級スタッフは二度と顔をみせず、新人制作スタッフばかりの現場になるという地獄絵図も……。
この、ある種の「コンサルティング機能」を求めるのはより高みに行く上でとても重要になるため、しょうがないことでしょう。しかし、制作チームにコンサルタントや第三者の専門家が入ることは、予算・時間的に難しいこともあり、「企画・制作もできて、なおかつCSR全般に詳しいスタッフ」というスーパーマン的な人材が求められている、という難易度が高い状況は、制作会社にとっては対応が難しい所でしょう。
「ここの〇〇は、ご要望いただければ変更します」ではなくて「ここは他社も■■■ですし、ガイドラインで推奨されるのは〇〇〇なので、ここはーーーが理想です」みたいな細かい提案もスラっとでる方はいいですね。コンサルティングまでではないものの、こういった提案ができるのは大きい印象です。
ちなみに、トラブルの大きな要因の一つに「短納期」があります。間違いなく納品できないであろう納期で発注されて、制作会社もそこそこの予算なので受けてしまうのですが大抵失敗するという。これは企業側にも制作会社側にも非があります。制作会社側が「こういうスケジュールでないと品質を担保できません」というのも提案力といえば提案力でしょうか。
制作のコンサルティング?
私個人の実体験からすると「コンサルティングできます!」という会社が適切なコンサルティングできてない場面を、多数経験してます。それがなぜわかるかというと「以前報告書制作の会社に追加でコンサルティングを受けたがあまりまとまらなかった」という趣旨で、コンサルティングの依頼や相談をいただくことがあるからです。マテリアリティの特定とKGI/KPI設定あたりは特に多いです。
結論、その時は納得したけど、その後、そこで決めたことだけでは何も価値創出ができていないことに気付き、そもそも、何のためにマテリアリティを決めたのかわからなくなるという、悲劇的な「目的と手段の履き違え」が日本各地で起こっている現実があります、ということです。
ちなみに、私にとっては一部競合になるのですが、コンサルティング的なアプローチもできる優秀な制作ディレクターや制作プランナーの方も何人も知っています。そういう方とお仕事をご一緒させていただくこともありますが、成果物が対外的な高評価を得ていることも多く、「CSR報告書の品質は、制作チームの器以上にならない」というごく当たり前の結論にたどり着きます。上には上がいるし、下には下がいると。
以前も書きましたが、この手の問題は、制作実務担当者のリテラシーが大きく関わるので、制作コンペの時にきちんと話を聞いておくことが必要です。制作期間中に担当者が変わるとかもよくあるようですが……。このあたりはあまりオープンにできないので「CSR企業評価研究会」でみなさんと意見交換できればと思います。
まとめ
今回まとめたCSR報告書の制作会社選びは、発注側企業の永遠の課題であります。コンペで実績を重視する会社がありますが、あまり意味がないのでもっと別の視点で選ぶことをオススメします。
誰が悪いということもない悲劇的な制作プロジェクトの存在は、決して都市伝説ではなく現実世界のCSR界隈の墓標であります。あまり参考にならなかったかもしれませんが、報告書制作におけるヒントとして「提案力」「コンサルティング力」はわりと重要だと思いますのでご参考までに。
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