最近のCSRコミュニケーション

情報開示には大きく2つの意図が企業にあるとされます。一つは情報開示を行う姿勢自体で透明性や信頼性を高めること、もう一つは情報の受け手となるステークホルダーへ情報提供をする(各ステークホルダーへの価値創出を解説する)という側面です。その差は「主語」でしょうか。企業が主語か、ステークホルダーが主語か、のような。

大手企業は、自身が主語となるコミュニケーションはいつもしているので、そこそこうまいです。しかし「ステークホルダーにとって、我々はどんな価値提供をする立場か」や「社会にとって、我々はどのような存在か」という、ある意味、社会やステークホルダーが主語になると、途端に歯切れが悪くなりがちです。(気持ちは痛いほどわかりますが“よろしくない事態”です)

というわけで、今後のCSRコミュニケーションを再考するための記事を10本ほど紹介します。CSR報告書/CSRレポート、統合報告書/統合レポートの話もあります。情報量が多いので、ブックマークなりメモするなりして、お時間があるときにチェックしてみてください。

CSRコミュニケーション参考記事

1、従業員の3割は自社のCSR情報開示を求めている

2、CSR報告におけるトップメッセージの品質測定

3、「トップメッセージ」でやってはいけない3つの掟

4、CSR報告による企業の信頼性向上の実現

5、CSR情報は誰にとってマテリアル(重要)なのか

6、CSRコンテンツ評価の着眼点と課題について

7、CSRウェブコンテンツの情報網羅性の課題とは

8、日本企業におけるSDGsの情報開示のポイント

9、統合報告書/統合レポートは何を統合すべきなのか

10、CSRの特定課題にフォーカスした「イシュー・レポート」とは

CSRコミュニケーションにける価値とは

私が最近思うのはCSRの活動および報告が、どのステークホルダーの何の価値に貢献しているのか明確ではないものも多いのでは、という点です。

例えば、ステークホルダー・エンゲージメントの表や関係図をCSR報告書等に掲載する企業が増えていますが、本来はエンゲージメントの先にある価値創造が重要なのであって、エンゲージメントの手法“だけ”を示されても価値の存在が不明瞭になりがちです。

CSRは企業のミッションを達成させるための手段でしかなく、その先にあるステークホルダーとの価値共創による企業価値向上が目的なはずです。

例えば、コンプライアンス対応がCSRなのではなく、コンプライアンス対応した結果生まれた価値(信頼性向上、リスク軽減)などが、CSRのプロセスおよび成果なのでは、と。極論、コンプライアンス対応しなくても、信頼性向上・リスク軽減が成果として達成できれば、目的は果たせるということです。

そうなると、CSRコミュニケーションが果たす“価値”とは何でしょうか。CSRコミュニケーションの「ゴール」とはなんでしょうか。CSRは企業のミッションを達成するための手段にすぎません。「企業の社会的責任」の先にある価値を生み出すために、社会的責任を負っているはずなのです。その価値とは、株主価値、顧客価値、取引先価値などの各ステークホルダーの価値創出のことです。

必ずしも定量的である必要はありませんが、価値や成果を見据えたCSRコミュニケーションが求められています。

まとめ

このブログのタイトル「CSRのその先へ」は、色々な方に“いじられる”のですが、8年以上たっても改めて“言い得て妙”なタイトルだなと感じています。

CSR元年(2003年)から来年で15年です。CSRという概念も随分浸透して、来年以降の節目にステップアップしなければならないタイミングに来ていると思います。私はこの10年でやっと“CSRのその先”が見えてきました。

CSRが、CSRの先にあるどんなビジネス価値を生み出せるのか。そして、コミュニケーションによって、どこまでステークホルダーとエンゲージメントできるのか。答えはすぐに変わりますが「普遍的な問い」は10年前と変わりません。このあたりを念頭に置き、日々のCSRコミュニケーション活動をしていくとよいのかもしれませんね。

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