ブランドに貢献するCSV動画

CSR/CSVはブランドに貢献できる。

世界を見渡せば、実際にCSR/CSV活動がブランド価値に貢献する例があるのですが、日本においても、評価の高い世界的企業の日本法人の名前が真っ先に挙がり、純国産企業の話が出てくることは少ないように思います。CSR/CSV関連のセミナーに行っても、良事例として紹介される企業やプログラムは基本的に変わりません。

特にCSRはリスクマネジメントの側面が大きいものです。人間は「得したい」より「損したくない」を強く感じる生き物といわれ、CSR活動もリスクマネジメントの方が優先順位が高くなるようです。ですので、なかなかブランディングを意識したCSRおよびCSVの活動となると結構難しいのです。

CSV提唱者のマイケル・ポーター氏は、競争戦略の大家であり、当然CSVからのブランディングについても著書等で言及していますが、ビジネスプロセスとなるバリューチェーンだけで、すべてのステークホルダーをエンゲージメントできるとは当然言っていません。さてどうしたものか。

というわけで本記事では、CSV的な発想でステークホルダー、特に顧客とのエンゲージメントはどのように行えば良いのか、という事例として動画を2本ほど紹介したいと思います。

企業事例:スターバックス


Starbucks — A Year of Good

Last year, Starbucks customers helped us provide full tuition to 6,535 college students, help over 8,000 US veterans and military spouses find work, and helped support over 301,506 ethically sourced farms. There is a lot of good happening out there—thanks to you.

昨年、スターバックスの顧客は、6,535人の大学生に全額の授業料を提供し、8,000人以上の米国の軍関係者が仕事を見つけられるよう支援し、倫理的に調達された301,506以上の農場を支援しました。あなたのおかげで世界では良いことがたくさん起こっています。(筆者意訳)

2017年1月2日に発表され、今では1,500万回以上再生されているスターバックスの動画。この動画では、従業員への奨学金制度や植林活動などの社会貢献全般を紹介しています。ここで興味深いのが「自社の社会貢献」とするのではなく「あなたが当社と一緒に達成したこと」としている点です。

これはCSV的発想が生かされていると感じます。顧客のバリューチェーンへの関与を見える化したというか。スターバックスを単なるコーヒーチェーンではなく社会参加の場として感じることができ、意識レベルの高い顧客の“利用意欲の向上”にも貢献しそうです。

商品も企業の良い部分をアピールわけでもなく、ステークホルダー(従業員・顧客など)とのエンゲージメントをまとめただけの動画。ただそれだけのブランデッド広告系動画が1,500万回再生を超えるバズを生み出しています。私が制作したわけでもありませんが、実際に制作するとなると以下のような流れが想定されます。

1)社会課題を起点にし“ブランド接点”のストーリーを作る
2)顧客がブランドに“参加している”ストーリーを作る
3)顧客が自社を通じ社会課題解決に貢献しているストーリーを作る

ブランドと顧客のエンゲージメント向上には“加わっている感”が必要であり、動画はテキストよりエモーショナルな表現ができるので、この手の話は非常にマッチします。

企業事例:LIXIL


TVCM「世界を変えるトイレ」篇 30秒

先日テレビCMを見たので紹介します。こちらの動画は日本風です。LIXILの「みんなにトイレをプロジェクト」というソーシャルビジネス・プログラムの解説動画です。テキストよりさらっと理解できます。

CSVプログラムを一般生活者の方にご理解いただくのは、なかなか難しいことも多いです。タレントさんが要点だけをうまくまとめるだけで、こういった流れで感動とか共感とかを引き出すのは難しいかもしれませんが、スムーズな理解は得られます。

Time for Global Actions LIXIL編(2分version)」という動画も限定公開されています。こちらはスターバックスのように海外を意識した映像になっています。なんで良いことしているのに限定公開なのかわかりませんが。以下のプログラム・ページには動画が埋め込まれているので興味がある人は確認してみてください。

ちなみにLIXILはCSR評価も年々高くなっている企業の一つです。素晴らしいですね。

みんなにトイレをプロジェクト

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まとめ

今回はCSVのストーリーテリングとして動画事例についてまとめました。

最近はGPIFも「GPIF|ESG投資」CSVというワードを使っています。CSRや経営企画・マーケティングだけではなく、IRや広報といったカテゴリーの方も最低限の知識を習得しておく必要が出てきました。

CSVというワードが、マーケティング領域のみを指し示していた時代は終わり、ブランディングやマネジメントの領域にその概念が広がってきているようです。

CSV推進担当者(≒CSR担当)は、組織の様々な部門を統合させる能力が必要です。こういう動画事例を元に、今季および来季のブランド広告およびCSV的プロモーションを検討してみてはいかがでしょうか。