企業のLGBT対応事例
極端な言い方ですが、企業サイドでは、LGBT対応のブームはひと段落した気がします。
最近は、CSR担当の方々と話をしていても、以前ほどこの話題が出てくることはありません。ブームから、次のステージに行く過渡期に入ったのかもしれませんね。
ちなみに、2016年4月に開催されたイベント「東京レインボープライド」のテーマが「Beyond the Rainbow〜LGBTブームを超えて〜」だったということで、当事者サイドや近しい方々にはそういう認識が高かったということもあると思います。企業サイドもイメージは同じなのかな。
というわけで、LGBTフレンドリー企業になるために、事例や取り組み、メリットなどを改めてご紹介したいと思います。日本におけるLGBT対応の問題・課題に対する配慮・理解の重要性をまとめています。相当量の情報だと思いますので、興味がある人はブックマークしてお時間があるときに確認してみてください。
公平と平等の差
GMはその質問に対して、こう答えました。
「だってあなたは障害を抱えている。それなのに普通の人と同じ条件で働かなければならない方がよっぽど不公平じゃない?全社員は同じ条件で働くべき、というのは『全社員障害を持っていようといまいと、全員が最高のパフォーマンスを出せる状況で働くべき。』という意味だとぼくは解釈している。だから問題ないよ。
障害者の労働に対する日本人と欧米人の考え方の違い
執筆者の方が勤める会社のトップが日本人からアメリカ人になり、うつや障害に関する理解が一気に進んだ話です。LGBTの話ではありませんが、私はこの話が企業サイドのLGBT理解に役立つと感じたので紹介しておきます。
日本では「みんな平等 = みんな同じ規則の下で働く」であり欧米では「みんな平等 = 個々が環境を調整して障害のある人もない人も平等の条件下で働けるようにする」である、ということも説明されています。
日本語でいうと「公平」と「平等」の話ですね。このあたりはググってみていただければと思いますが、御社のLGBT対応は「公平」と「平等」どちらの概念で作られたものですか?
LGBT対応事例
ジェンダーフリーのおもちゃ
U Supermarket – Christmas catalog #GenderFreeChristmas
要はおもちゃのジェンダーフリーの話です。日本でも世界でもおもちゃは一般的に性別差でモノが分けられることがあります。たしかに、全体的な傾向はあるかもしれませんが、子ども自身が何で遊びたいかは、性差よりも個人差の影響が大きいのもまた事実。
おもちゃはわかりやすい例かもしれませんが、BtoC企業はこの「性差」をより考えていかないと、ポリティカルコレクトネスで、消費者から叩かれることになるので注意が必要です。
海外の対応事例
LGBT従業員の平等な取り扱いに関する企業の取り組みは、多岐にわたる。職場における差別やいじめの防止、社会保障・医療に関する福利厚生制度や休暇制度の適用などでの平等な取り扱い、またより積極的な取り組みとして、LGBT従業員を中心としたネットワークの設置などが実施されている。さらに、対外的な施策として、例えば地域のLGBTコミュニティなどへの金銭的あるいは人的支援(ボランティアに参加等)や、取引先にLGBTに関するポリシーの採用を求めることなどがある。
諸外国のLGBTの就労をめぐる状況
諸外国におけるLGBTの就労をめぐる状況や雇用主の取り組みなどについて欧米先進国を対象にまとめたレポートです。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、などがフィーチャーされています。海外の事例を探している方にはオススメです。
ダイバーシティ調査
・LGBTに対応する施策を実施している企業は39.7%。
・従業員規模別では5,000人以上の企業でLGBTに対応する施策を実施している企業が75.0%と特に多い。
・実施している企業では「相談窓口の設置」「社内研修・勉強会の実施」「差別禁止規定の明文化」等が特に効果を発揮した施策として挙げられている。
ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査結果
経済同友会のダイバーシティ調査です。LGBTに特化したレポートではありませんが、本来はダイバーシティ戦略の中の話ですので、大局観で見定めるにはとてもよい資料だと思います。
ちなみに、このレポートでは「ダイバーシティの成果事例」がまとめられています。「休暇取得者の増加、取得率の向上」「時間短縮・生産性向上」「業績などの向上」「女性就労者の増加(復職者も含めて)」「商品・サービスの改善」等が成果として挙げられています。
項目によっては、絶対に因果関係ないよね?と思うものもありますし、企業サイドがそう感じているのであればそうだとまずは考えてよいのかもしれません。ただし、中途半端な多様性対応はチームの軋轢を生むこともありますので、ただやればいいってものでもないと思います。
意識調査
全国の20~59歳の個人100,000名を対象に実施したスクリーニング調査の結果、LGBTに該当する人は約5.9%(レズビアン:1.70%、ゲイ:1.94%、バイセクシャル:1.74%、トランスジェンダー:0.47%)、またLGBTにあてはまらないAセクシャルなど、その他のセクシャルマイノリティに該当する人は約2.1%となりました。
博報堂DYグループの株式会社LGBT総合研究所、6月1日からのサービス開始にあたり LGBTをはじめとするセクシャルマイノリティの意識調査を実施
LGBTの該当者は電通系の調査で約8%というのが有名ですが、博報堂系での調査は約6%とのこと。ちなみに「Aセクシャル」(無性愛者)を含めると約8%となるそうです。不思議ですね。
ちなみにここの会社では「LGBT意識行動調査2016」というレポートも出しており「職場で、LGBTのカミングアウトは4.3%」という記事などでも紹介されています。
当事者の話
・自分はトランスジェンダーだと同僚に告げた時~「LGBTと職場」
・息子の結婚相手は男性だった ~LGBTと「家族」
・「ひとりじゃないよ」出張授業で語りかけるLGBTの若者たち
上記の3本の記事はYahoo!ニュース特集枠のLGBTの記事です。企業サイドの話は1番目の記事ですが、お時間があれば読み物として数分で読めるのでチェックしてみてください。
私はストレートで女性と結婚しています。大学時代からの友人にLGBTの人がいますが、職場とか家族ではいないため、そこまで身近な環境にはおりませんで、このあたりの感覚はやはり当事者の方々の話を聞くのが一番だと感じています。
世の中の多くのシステムは最大公約数を満たすためマジョリティ中心であることは否定できません。さてどうしたものか。
LGBT社員に向けた福利厚生制度
企業事例として、ゴールドマンサックス、日本IBM、日本マイクロソフト、第一生命、ソニー、パナソニック、損保ジャパン日本興亜などの事例が挙げられています。
企業のLGBT対応では物理的な施設(トイレ、更衣室など)の対応がすぐには難しいということもあり、まずは福利厚生制度の整備などから入る企業もあります。
福利厚生ではなく、理解促進の研修などももちろん重要ですが、ストレートの人たちへの啓発活動より、ストレスフルな生活を送っているLGBT社員のサポートを先にすることも当然重要。CSR担当だけでなく人事関連部門との連携対応が求められます。
職場の意識調査
・LGBTの認知率「47%」 若い世代ほど認知率が高い傾向
・管理職におけるLGBTの認知率は「56%」
・LGBTのイメージ 最多は他の人と変わらない存在
・職場の人からLGBTをカミングアウトされた/カミングアウトしていると聞いたのは「7%」
・上司、同僚、部下がLGBだったとしたら?6割半ばが『嫌でない』と回答するも、3割半ばは『嫌だ』
連合調べ LGBTに関する職場の意識調査~日本初となる非当事者を中心に実施したLGBT関連の職場意識調査~
これはなかなか興味深い調査です。多くの人は会社の同僚であっても関係ないと思っているようですが、一部にはその存在を嫌う方々が一定数いるという、多分、みんな思っていることが定量化された、ということでしょうか。
当事者ではない方ということでいろんな項目があるので、お時間があるときにレポートを読んでみてください。
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まとめ
冒頭でも申し上げましたが、企業は、LGBTの方だろうがなんだろうが、すべての従業員やステークホルダーに対しての配慮が必要だという、当たり前のことをLGBT対応というカテゴリーで勉強しているだけなんだと思います。
課題や問題だらけと考えるか、社会的ニーズととらえて積極的な対応をしていくか。「公平」と「平等」のどちらが適切なのか。
一部の先進企業を“真似る”のではなく、社内できちんと話し合いをして、人事戦略としてCSR活動にうまく組み込んでいきましょう。