コーポレートコミュニケーション

CSRとコーポレートコミュニケーション

CSRコミュニケーションを「コーポレートコミュニケーション」に昇華されるには、いくつかポイントがあります。

CSRコミュニケーション領域のコンサルティングをさせていただく中で、ここ数年は「コーポレートコミュニケーション」というワードがちょこちょこ出てくるようになりました。

CSRは単体で存在せず、また、企業の総合的なコミュニケーションに統合されるべきです。とはいえ、では何に気をつければいいの?という話になると思うので、そのヒントになるような考え方とデータを紹介します。

社会的責任/社会貢献という枠組み以外の部分もありますが、コーポレートコミュニケーション部門における戦略立案や意味の定義にも参考になると思います。

CSRコンテンツ構築の4つのポイント

1、PRの社会的責任

PRの手法として、メディアを通して発信するほかに、社会に向けてダイレクトに語りかける手法が非常に増えました。これは、ここ数年の大きな変化ですね。PRアワードのエントリーを見ていても感じます。また、コミュニケーションそのものが、社会的な課題解決に寄与するようになったという事例も、ここ最近、目立つようになってきました。
カンヌライオンズでも、ここ2~3年、ソーシャルバリューに対してどう価値転換をもたらすかというのが高く評価されていたと思うのですが、それに少し近づいたのかな、という印象です。
PRは共創、ストーリーテリングの時代へ。PRアワードで知恵をシェアしよう。

PR出身の方はご存知無いと思いますが、CSRコミュニケーションはそもそも、パブリックなステークホルダーを中心に捉える概念で、ちょっと前のPRより、パブリックリレーションズだったのです。

で、記事の座談会では、いわゆる広報の幅が広がっているとのこと。コーポレートコミュニケーションとして、CSRもPRもIRも、ステークホルダーという軸でコミュニケーションをする時代になったと。統合思考って、やっぱり重要ですね。

2、NPOがメディアに取り上げられるための10カ条

1、「良いことやってる」(からOK)という意識を捨てる
2、数字を意識する
3、メサイア・コンプレックスに要注意
4、現場に投入するのと同じくらい、社会に知らしめることに比重を置く
5、キーワードは団体名ではなく「社会的課題」
6、企業と同じスピード感や堅実性を持つ
7、オープンマインドを持つ
8、悪い広報は「親バカ広報」良い広報は「担任教師の広報」
9、ノウハウより魂
10、メディアにとりあげてもらうことを目的化しない
NPOがメディアに取り上げられるための10カ条

僕は、CSRコミュニケーションは、NPO広報に学ぶ点が多いと思っています。もちろん、マネすればいい、というわけではないけど。

1、3番の「自分たちは良いことやっている」感が前面に出過ぎてしまい、メディア側がひいてしまうことはよくあります。僕が取材していてもこれは感じます。

また、僕にプレスリリースを勝手に送りつけておいて、返信しても反応がないPR会社とか、1・8番あたりが問題なのでしょう。スパムなPR会社は大嫌いです。実名出してやろうか。しないけど。反面教師で、自分がそうならないよう気をつけたいと思います。

3、CSRコンテンツ

全上場企業ホームページ充実度ランキング(2015)

この調査によると「CSR・環境対応コンテンツ」は全上場企業で55.8%となっています。昨年調査では55.9%なので、ほぼ横ばい。CSRレポートのウェブ掲載は22.7%で、昨年の24.6%より微減。ってか1,700社くらいはCSRのウェブコンテンツは準備していても、800社くらいしか報告書にまとめていないのか。

CSRコミュニケーションっていっても、コンテンツがなければ何も伝えられないし、新興市場を含め、もっと本気の情報開示をしたほうがいいんじゃないの?いっても、日本の350万法人の3,500社で、日本企業のトッウオブトップたりうる、最高の企業群(のはず)なんだからね。

上場していて、CSRコンテンツを作っていない企業担当者にヒアリングと提案をさせてもらったこともありますが、結局、社内的にコンセンサスを取れずほとんど動けないみたいな例も多いようですね。ただ、それはCSRコミュニケーションをしなくてよい理由にはならないので気をつけましょう。

4、ユーザー評価ランキング

企業情報サイトユーザー評価ランキング(2015)

【CSR・環境カテゴリー】
1、トヨタ自動車
2、サントリー
3、キユーピー
4、ハウス食品グループ本社
5、森永乳業
6、アサヒビール
6、明治ホールディングス
6、カゴメ
6、TOTO
10、キリン
10、ライオン
10、キヤノン
10、ホンダ
10、キヤノンマーケティング

「企業情報サイトユーザー評価ランキング」は、業種別に抽出した企業情報サイトのユーザに、対象サイトのコンテンツ閲覧のうえ、その評価を行う。対象の企業情報は、「会社案内」、「ニュースリリース」、「技術・品質・安全情報」、「CSR・環境への取組み」、「IR情報」、「理念・ビジョン」の6コンテンツ。

専門家の視点ではなくユーザーというのがポイントです。やっぱり「わかりやすさ」って大事ですね。

5、情報ニーズ

企業のWebサイトや電子メールから得られる情報が、受け取った時点で本人のニーズや意識とどの程度一致しているかを尋ねたところ、「まったく一致していないことが多い」「あまり一致していないことが多い」を合わせると65.8%の消費者が一致していないと回答している。
8割の消費者が企業のWebサイトからの情報が関心と「ズレてる」と回答【アドビ調査】

これはわかる。『デジタルメディアを通じて商品を確認する消費者の割合が2015年の調査よりも増加した一方で、82.9%の消費者が企業のWebサイトから受け取る情報は「関心から遠い」と感じていることが判明した。』ともしており、コーポレートコミュニケーションのひとりよがりぶりがわかります。

CSRコミュニケーションなんて、対応ステークホルダーが多いので本当に考えてやらないと、企業も消費者・ユーザー(読者)もどちらも幸せになれません。

まとめ

CSR情報を届けたいステークホルダーが、株主・投資家でも従業員でも消費者でも、コンテンツとコミュニケーションの「わかりやすさ」が重要です。

じゃあその「わかりやすさ」とは何か、という答えは各社ごとに異なるので一概に言えませんが、少なくとも言えるのは「読者」(情報の受け手)のことをどれだけ考えてコミュニケーションにのせているか、でしょうか。

CSRコンテンツは、そもそもハイコンテクストであり文脈・背景がないと、共感や理解が進みにくい領域です。だからこそ、様々な視点で「コンテクストを作り上げる」ことが必要になってくるのでしょう。

というわけで、本記事でご紹介した5つのポイントなどを気にしながら、最適なコーポレートコミュニケーション(CSRコミュニケーション)をしていきましょう!

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