社会貢献活動実績
10月20日に経団連から『2014年度 社会貢献活動実績調査結果』というレポートが出ていたのでシェアします。
社会貢献活動の傾向がわかるので、中堅・大手企業の方は要チェックの調査となっていました。
僕にとっては、結構衝撃的な内容があったりなかったり…。
調査からみる社会貢献活動の現状と課題
・支出合計額は1,751億円、うち東日本大震災関連支出(90億円)を除く額は1,661億円
・1社平均支出額は4億9,000万円〔前年度比1.7%増〕
・1社平均支出はリーマンショック前並みの高水準。東日本大震災関連の支援活動に対しても継続的に支出
なるほど。そういう感じなんですね。
全体感でいえば気になったのは。「社会貢献活動の事後評価」という項目。なんと事後評価をしているのは50%だけ。47%の企業は事後評価していないという…マジ? PDCAになってないじゃん…。社外の有識者を含めて評価する姿勢が増加しているのは、第三者視点をいれるため良い傾向だと思います。
「今後の課題」という項目では、社会貢献の制度導入が定着するなかで、「社員の理解・社会参加の促進」 「トップの理解・リーダーシップ」「経営への戦略的位置づけ」が上位となった、とされています。
いわゆる「社内浸透」、「トップの理解」、「戦略性」という、とてもよく聞く課題がトップ3のようです。平行して進める必要はありますが、まずは「CSRにおける戦略的思考」の構築が最初でしょうか。それがあれば、トップの理解や承認につながるし、トップが「CSRを重視します」と発信すれば、社内浸透も進むと思われるからです。
CSRコミュニケーションについて
「社会貢献に関する情報提供・コミュニケーション」では、調査企業の9割が社会貢献活動に関する情報発信を実施しており、情報提供の手段として社内向けではメールやイントラネット、社外向けではインターネットホームページ掲載のように、ウェブ活用が広く定着しているとされています。ある程度の規模でCSRを実施する企業では、現時点でもすでにデジタル領域の積極的な情報発信がされていると言えますね。
「社会貢献活動への取り組みを積極的に広告宣伝することについての考え方」では、社会貢献活動の取り組みを積極的に広告宣伝に利用すべきとする企業の割合は58%、利用すべきでないとする企業の割合は39%。積極的に利用すべき理由としては、「コーポレートブランドの向上」(47%)、「企業の説明責任」(22%)。積極的に利用すべきでないとした企業では、「社会貢献活動の目的を誤認される」(52%)という懸念が強い、とのこと。
CSRコミュニケーション方法もその考え方もですが、「やり方次第」だと思いますけどね。そりゃいきなりテレビCMで「私たちは社会貢献活動を積極的にやっています!」っていえば、テレビCMしてる予算あったら、その数億円を社会貢献予算にまわしたら?みたいな意見も出るわけですよ。
だからって、社会貢献活動についての情報発信をしなければ、ステークホルダーは知ることができないし評価すらできない。つまり「社会貢献活動の目的を誤認される」と回答した52%の企業担当者は、その懸念を払拭できるアイディアや方法論を知らない人としか付合っていないとも、考えられます。
CSRではコミュニケーション領域はただ情報拡散すればいいというわけではないものの、適切なステークホルダーエンゲージメントの方法論をちゃんと考えれば、それなりのインパクトを出せると思うんですよ。
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まとめ
僕自身がこの調査から感じたことがあるといえば、「以前から何も変わっていない」ということ。
CSR評価体制の仕組み作りが進んだり、一定の進歩が見られるものの、何年も前から課題と言われている領域の話がいつまでもあるのが、非常にもったいないな、と。
億単位で社会貢献活動そのものにお金使っているくせに、数十万円レベルからでもできる、アドバイザーとなる専門家などの外部(第三者)の視点をいれず、「課題は色々ありまして解決できないてよーん」ではステークホルダー評価にもつながりにくいのではないでしょうか。
なお、今回の経団連の調査では事例集もあるので、中堅・大手企業のCSR担当者は必ず目を通すことをオススメします。
データ参照:経団連|2014年度 社会貢献活動実績調査結果