CSRの理解にも役立つ白書
今月、閣議決定により、官公庁で白書がいくつか発表されました。
海外ではイニシアティブ(業界団体)などが、各種統計やレポートを出しており、それなりに信頼できるのですが、日本では民間のCSR関連のリサーチはいうほどなく、官公庁の白書が現実的なエビデンスとなる場面も多い気がします。
というわけで、2015年発行の最新版白書で、日本社会を俯瞰でき、比較的、CSR関連の話題に近いものを紹介します。
官公庁の白書ということで、ボリュームが非常に大きいですが、その分様々な事例や統計データがありますので、CSR担当者の各種業務における企画書や年間行動計画の基本設計に役立てられるでしょう。
官公庁のオススメ白書6選
消費者白書
第1部消費者行動・意識と消費者問題の現状
第1章 【特集】グローバル化の進展と消費者問題
第1節 消費生活におけるグローバル化の進展
第2節 グローバル化に関連した消費者問題
第3節 グローバル化が進展する下での取組
第4節 消費者行政における国際的な連携・協力
第2章 消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者行動・意識
第1節 消費者を取り巻く社会経済情勢
第2節 消費者行動・意識の状況
第3章 消費者問題の動向
第1節 消費生活相談の概況
第2節 消費者庁に集約された生命身体に関する事故情報等
第3節 最近の消費者問題の傾向
第4章 消費者政策の展開
第1節 今後の消費者政策の推進に向けて
第2節 消費者政策の主な展開
第3節 地方消費者行政の充実・強化
消費者白書(平成27年版)
ISO26000の7つの主題の一つでもある「消費者課題」。当たり前ですが、顧客あってのビジネスです。しかし、社会の変化に企業が追いつけなかったり、消費者側の意識が大きく変わったりし、CSRでも課題として取り上げられるレベルなのが現状。
白書にはCSR的な項目がたくさん載っているというわけではありませんが、特にBtoC企業のCSR担当者はしっかりチェックしておきましょう。かなりなボリュームですが、日本経済全体の消費活動を学べます。
男女共同参画白書
「地域の活力を高める女性の活躍」をテーマに,女性の活躍の現状や男女の仕事と暮らしについて,都道府県別の状況を明らかにしながら,それぞれの地域が女性の活躍を通じて活力を高めていくための課題等を整理しています。また,各分野における男女共同参画社会の進捗状況,政府が昨年度に講じた施策及び今年度に講じる施策を明記しています。
この白書を通じて,国民の皆様に男女共同参画の現状,取組等について理解を深めていただくとともに,地域や家庭,職場で,男女が共に輝く社会づくりが更に広がっていくことを願っております。
■男女共同参画白書(平成27年版)
上記は内閣府特命担当大臣(男女共同参画)の有村氏のメッセージです。
CSRにおいても、現政権の女性活躍推進の後押しがあり、「男女共同参画」について非常に注目度が高くなっております。「男女共同参画」といっても、男性やその他の項目はほとんどなく女性関連課題の話題がメインです。
障害者白書
第1章は、平成27年2月24日に閣議決定された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」や、平成28年4月1日の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の施行に向けた取組について掲載しています。
第2章は、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた取組について掲載しています。
第3章は、施策推進の経緯と近年の動きとして、昭和45年の心身障害者対策基本法から現在までの経緯、平成23年の障害者基本法改正、障害者基本計画(第3次)等についてと、障害者の状況等について、各種統計より、全体状況(全体数、年齢別、性別)を掲載しています。
第4章以降は、啓発・広報、国際協力、教育・育成、雇用・就労、生活安定のための施策、保健・医療施策、住みよいまちづくりのための安全・安心のための施策、情報アクセシビリティを向上するための施策について、最近の施策を中心に掲載しています。
(今回の障害者白書の特色|内閣府)
民間企業で働く障害のある人は約34万4000人余りと最も多くなる一方、法律で定められた雇用率を達成している企業は半分に満たず、雇用対策の充実を図る必要があると指摘しています。
もちろん、ただ雇って閑職に押し込んでおけばいい、というわけでもないし離職率が高くても意味がないし、どうすれば多様な人たちの尊厳を守り、生き甲斐を提供できるかを考える必要があるでしょう。
環境白書
第1部の第1章では、我が国における社会経済情勢や生活様式の変化、環境問題の現状について述べるとともに、それぞれの特性を生かした持続可能で自律的な地域づくりの重要性を明らかにします。
第2章では、東日本大震災の被災地における復旧・復興の現状を明らかにするとともに、厳しい状況下における持続可能な地域づくりの取組を紹介します。
第3章では、環境対策を活用した地域活性化、高齢者や若者を始めとする地域の市民・住民の参加・参画を通じた環境保全活動等、それぞれの特徴を生かした地域づくりの取組と、我が国で2020年(平成32年)に開催される第32回オリンピック競技東京大会・第16回パラリンピッ ク競技東京大会に向けた、東京都市圏を中心とした環境に関する取組について述べています。
第4章では、それぞれの特徴を生かした持続可能で自律的な地域づくりを実現していくために、その担い手となる個々人が持続可能性を意識することが重要であることから、そうした個人一人一人に着目し、個々人が営む持続可能なライフスタイルや、持続可能な開発のための教育(ESD)の重要性について記述します。
環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(平成27年版)
環境白書は、いわゆるエコや省エネ・CO2排出などの項目だけではなく、地域住民などを含めた様々なステークホルダーの視点による記述もあります。
環境活動に関しての知識の有無に関らず、CSR担当者であれば、一度確認しておくべき白書と言えます。
中小企業白書
第1部では、最近の中小企業・小規模事業者の動向についての分析に加え、より中長期的な観点から、中小企業・小規模事業者が直面する経済・社会構造の変化(企業の収益構造の変化等)について分析を行っています。
第1部の分析結果を踏まえた上で、第2部では、中小企業・小規模事業者が収益力を向上させる上で課題となる、「イノベーション・販路開拓」「人材の確保・育成」を取り上げました。イノベーション・販路開拓については、商圏が広い事業者ほど積極的に取り組んでいる実態がある一方で、商圏が狭い企業も、そうした取組を行うことで、利益を伸ばす可能性があることを示しています。人材については、中小企業・小規模事業者においても、研究開発、営業、IT等の分野の専門人材が不足していることを明らかにするとともに、地域ぐるみでそうした人材の確保・育成に取り組んでいる事例の紹介などを行っています。
第3部では、中小企業・小規模事業者が根ざす「地域」についても取りあげています。具体的には、地域資源の活用や地域社会の課題の解決を通じた地域活性化の取組について、豊富な事例で紹介しています。
中小企業白書(2015年版)
最近は、経済系の官公庁もCSRやCSVといった概念を白書に記述するようになりました。昨年に続き、戦略的CSRの概念でもあるCRSV(Creating and Realizing Shared Value)というコンセプトを発表しています。
CRSVに関しては『平成26年度 中小企業のCRSVへの先進的取組に関する調査報告書(PDF)』も合わせて確認しておきましょう。
厚生労働白書
■厚生労働白書(平成26年版)
いわゆる「健康」とは何か、という話を丁寧にまとめた白書です。厳密にいうとCSRとは違う気もしますが、CSRの労働慣行・人権の部分で従業員の健康配慮を行なう「健康経営」なる概念も登場し、一部のCSR担当者の中でフィーバーしております。
数少ないエビデンスとして、ナナメ読みでいいので、目を通しておくことをオススメします。
まとめ
他にも興味深い白書はいくつも官公庁より発表されていますが、まずは今回ピックアップした白書をチェックすれば、日本社会全体の動向が理解できると思います。
海外(英語)だと、国連を始め、様々なイニシアティブが統計やレポートを出していますが、日本のデータで信頼性が最も高いのは官公庁の白書ですからね。とはいえ、所詮データの一つであり、鵜呑みにしすぎるのもよろしくありません。
日本社会全体の流れを把握し、御社の経営戦略・事業活動のヒントとしてみてください。
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