CSR調達とサプライチェーンマネジメントのガイドライン3事例

CSR調達

CSR調達とサプライチェーンマネジメント

先日、クライアントが「CSR実務ってCSR調達そのものなんだよなぁ」と言っていて、勝手にそうなんだよなぁ、としみじみ納得していた僕です。

CSR調達とは、資源調達先(サプライヤー)や取引先(ビジネスパートナー)に対して、CSRに関するアンケート調査などの監査活動を行い、事業適正化・法令遵守などを求めること。CSRにおけるサプライチェーンマネジメントでもあり、事業活動において労務・人権に深く関わる領域のため、今後注力しなければならない重要領域の一つとされています。

「CSRとは何か」、「CSVとは何か」という議論もすべきなのですが、現場からしたら何でも良くて、「で、何をどうしたらいいの?それをするメリットはなんなの?」というような反応が多いのも事実。

というわけで、今回は「CSR調達とサプライチェーンマネジメント」として、CSR調達のガイドライン等も含めて、意味や意義、進め方などを振り返ってみましょう。また、CSR調達の基本方針・基準・指針の考え方をまとめていきます。

本記事をお読みいただくことで、CSR調達の必要性は少なからずご理解いただけると思います。

1、PAS 7000

サプライヤーが、“誰なのか“ ”どこにいるのか“ ”信頼できるのか“ という3つの質問に対して明確にできるよう、サプライヤー評価の基本となるGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)の視点から細かく項目を設定し、サプライヤーのあるべき基準を定義しています。
PAS 7000:2014 「サプライチェーンリスクマネジメント –供給者事前資格審査」に関するグローバル基準

BSIジャパンより、こんな規格が邦訳され販売されているようです。ISO26000やGRI/G4だと、CSR調達の関連項目は一部分だけですからね。一部分と言っても結構な幅がありますが。

大手企業でいえば、数千社にもなるサプライヤー(取引先)を管理するため、各社独自でCSR調達チェックリスト(調達方針)を作り、アンケートや現場訪問などの監査業務をおこなっていると思います。

ただ現実的には1次サプライヤーはまだ監査が直接できますが、2次・3次となる多重構造のすべてを把握することは不可能です。グローバルで動く昨今のビジネスでは、国外サプライヤーがCSRに反する行動をとり(例えば児童労働とか)、問題が起きて始めてその事実を知り、直後に深刻な経営危機に見舞われることも少なくありません。

こういった国際規格を参考にし、監査作業を受ける側もする側も簡略化することで、出来る限り監査の幅を広げていきたいものです。

2、水問題

日本は水が豊富で枯渇するリスクはないと考えている企業が多く、水リスクにあまり敏感ではないように見える。だが、グローバルに事業展開する日本企業にとって、「水リスク」は決して無関係なものではない。
日本企業は、「水リスク」への意識が低すぎる コカ・コーラが誇る、水リスク管理術とは?

NGO「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」(CDP)の展開する、「CDPウォーター・ディスクロージャー」という枠組みで企業に情報開示を求めたり、NGOの世界自然保護基金(WWF)は「ウォーター・スチュワードシップ」という枠組みで企業に水問題リスクの理解を促しているそうです。

日本国内では、サプライチェーンマネジメントにおける水問題という話題をあまり聞ききません。水資源保護と適正利用などは、生物多様性とかそっち方面ではチラホラ聞いた事があるようなないような。

世界的には水は不足することが多いので、気候変動・環境問題と並んで大きな社会問題であり、事業活動における大きなグローバル・リスクとなっているようです。水問題に配慮した地元企業を選定するのもまたCSR調達ですよね。

3、サプライチェーンの透明性

グローバル化に伴い、生産拠点と消費拠点の距離が遠くなり、サプライチェーンが複雑になるにつれ、仕入・消費する側から生産拠点の状況が見えにくくなりました。しかし、現在でも、先進国企業が発注している途上国の生産工場で、労働搾取や人権侵害は起こっています。そして、そうした事実が明るみに出れば、非難されるのは、現地企業ではなく、生産を依頼した先進国の企業です。アメリカの消費者は、途上国の労働問題は関与する先進国企業の責任と考えているため、問題が起こると米国内での不買運動に発展します。
サプライチェーンの透明性

生産拠点と消費拠点が異なるという、構造的な課題もありますが、コレ自体を解消するのは不可能です。

記事では、2012年に施行された「カリフォルニア州 サプライチェーン透明法」が紹介されています。文字通り、CSR調達を明確化を求めてる州法です。内容としては、カルフォルニア州で事業を行う「世界売上1億ドル以上の小売・製造業者」に対し、サプライチェーンにおける人身売買や奴隷労働を排除する取組みを開示するよう求める法律だそうです。

全世界的なルールというよりは、CSR調達まわりは国や地域で法令化やガイドライン化されているみたいっす。

CSR調達事例

事例としては、トッパンさんの「トッパングループ CSR調達ガイドライン」とか、リコーさんの「サプライチェーンのCSR」あたりが非常に参考になるかと思います。

製造業系であれば、調達方針は少なからずあると思うので、それにCSR要素を足していくイメージで進めればいいと思います。非製造業系であれば、環境関連項目より、取引先(下請け)の労働問題や人権問題あたりがCSR調達に絡んできますよね。

中堅・大手企業であれば、どこもCSR調達を「する側」でもあり「される側」でもあります。CSR部門と調達部門がきちんと連携しCSR調達推進をしていかないと…不祥事が起きた時には目も充てられない被害がでますよ。マジで。経営危機ってヤツです。

またちょっと先ですが新しいCSR調達規格「ISO20400」が2017年に発行される見込みとか。(参照:ISO20400(持続可能な調達)の概要と開発状況聞く)東京オリンピックに向けて国内でもCSR調達の重要性が増えるばかりです。

その他の事例は以下の記事にまとめていますので、合わせてチェックしてみて下さい。

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まとめ

CSR調達の概念をふまえると、CSR活動は自社だけではなく、一緒にビジネスをするエコシステムそのものの社会的責任が問われるものであると解釈できます。

企業としては、グローバル展開する中で複雑化するサプライチェーンを、どのように簡略化し情報を見える化するのか、頭を悩ませていることでしょう。自分たち“だけ”の問題であれば、何とかならなくもないのですが、他社のCSR推進までサポートしなければいけないとなると、大企業は大変ですよね…。

上場企業のメーカーや元請け大手であれば、直接契約の取引先だけでも数千社あるし…ひぇ〜。

マイケルポーター氏のCSV論でも「バリューチェーン(≒サプライチェーン)の再定義」が必要としていますし、CSR担当者の社内外調整能力がより問われる時代になってきているのは間違いないようです。今年こそは、きちんとリスクヘッジをしていきましょう!



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