女性活用は企業業績と連動するCSRの取組みか–データ9事例から浮かぶ事実

CSR女性活用

女性活用・女性活躍の課題

先週の3月8日は「国際女性の日」だったということで、時流に乗って、CSR活動における「女性活用・女性活躍推進」の取組みとデータをまとめます。

今回のまとめは「女性活躍は企業業績向上(経営効果)につながるのか」です。

CSR活動の取組みとして随分浸透してきている、女性まわりの話。でも、それらの多くは“福利厚生”であり、人事戦略だったり業績に連動しうる戦略とまではなっていない企業がまだまだ多い印象です。

また、ダイバーシティと同じく、女性が主導するフェミニズムでしかない、なんて評価も一部ではあるようです。これではもったいない。というわけで、企業評価をするシンクタンク・政府などのデータを見ながら、実務上で何に気をつけるべきか考えて行きましょう。

ダイバーシティ経営企業100選

ダイバーシティ経営企業100選」とは、経済産業省が「ダイバーシティ経営によって企業価値向上を果たした企業」として表彰しているものです。平成26年度は来週発表とのこと。あわせて、「なでしこ銘柄」の発表もやるみたいです。

女性活用の事業活動がこういったアワードに入り露出を高める、つまりイメージアップやレピュテーション向上、新卒女性獲得などに効果がある、と。そういう意味では、それがただのパフォーマンスかどうか別として、経営効果のある取組みと言えるかもしれません。ちなみに、これは3回目となる今回が最後の事業年度となるようです。

公募式だし、実際の中身がどうなのか、というのは以前から言われていたものでしたけどね。まだ「なでしこ銘柄」のほうが経営効果ありそうです…え?ないの?

女性活躍と企業業績に関する実証分析

女性活躍と企業業績に関する実証分析は今まで数多く行われており、その一部の研究では、女性活躍と企業業績の間には正の関係があり、さらに統計的に有意であるという結果を出しているが、その反対の結果を主張している研究もあるなど、その結果は収斂していない。
欧米の研究:Carter et al(2003)では、取締役会における女性や少数民族の割合が高くなればなるほど、企業の業績が上がるという結果が出た。また、McKinsey & Company(2012)の分析でも執行役員に占める女性比率が高い企業の方が、女性がいない企業に比べて利益率が高いことが証明された。一方、Marinova et al(2010)の分析では、取締役会のジェンダーダイバーシティーは企業業績であるトービンのqに正の影響を与えているものの、統計的に有意ではなかった。

日本の研究:Siegel・児玉(2011)は、日本の製造企業は、女性役員や女性管理職を雇うことによって利益を得ており、その利益のかなりの部分が人件費節約によることを分析結果として出している。山本(2014)の分析では、正社員女性比率が高い企業(特に30歳代の正社員女性比率が高い企業)、中途採用の多い企業、ワーク・ライフ・バランス施策を整えている企業における利益率が高いという結果が出た。一方、管理職女性比率と利益率の間では有意な結果は出なかった。
女性活躍と企業業績に関する先行研究の検討

このレポートは非常に興味深いですね。ただ、よく聞く話でもあります。様々な研究事例を見る限り「女性活躍と企業業績は連動することもあるし、しないことも多々ある」という結論です。

相関関係はあるかもしれないが、因果関係があるというのは言い過ぎかな、ってライン。

例えば、「儲けている会社はトイレがきれい」という調査データがあったとしましょう。これは実際よくあるパターンだと思いますが、逆の「トイレをキレイにしたら儲かる会社になる」はあり得ません。トイレをキレイにするだけで儲かるなら、世の中すべての会社が清掃業やっとるわ。

「儲けている会社はトイレがきれい」の原因は、「儲けている→専属清掃員を雇える余裕がある→キレイ」という流れがあると想定されます。中小の社長だと「素手でトイレ掃除」みたいな自慢をする人がいますが、業績との因果関係はないでしょう。

僕は、女性活躍もこれと同じロジックだと思っています。つまり「儲けている→女性の抜擢人事の余裕がある→女性活用が進む」みたいなフローです。女性でも男性でも優秀な経営者はいますし、性別での能力差はこじつけに近いような気もします。

フィンランドの女性活躍推進

さて就業率も学歴も高いフィンランド人女性だが、民間企業の管理職となると男性が36%のところに女性は7%しかいない。重役職に女性が占める割合のトップは中国、2位がポーランド、3位にラトヴィアと続く中、フィンランドは27位と芳しくない。しかし女性役員の割合では、1位がノルウェーの36.1%、2位がスウェーデンの27%、3位にフィンランドの26.8%と他の北欧国同様、目覚ましい数字を誇っている。また、女性の活躍推進にかけては、2008年に「会社法」を改正し、世界に先駆けて公営と上場企業の取締役会に男女どちらも40%を満たすことを義務付けたノルウェーの「クオータ制」が有名だ。

フィンランドではそれより若干早く、2003年に「コーポレートガバナンス・コード」(上場企業の企業統治の指針)に、世界で初めて「取締役会に男女両方の性別があること」が盛り込まれた。2008年に更新され、取締役会に男女両方の役員がそろわない企業には、その理由を自社サイトや年刊レポートなどで公に説明する義務が課せられた。
女性CEOの企業は利益率が高い? フィンランドは、どうやって”女性の活躍”を進めたのか

ノルウェーの「クオータ制」、フィンランドの「ガバナンス・コード」など、法制度があるため業績連動の前にやらなきゃいけない。そうなると女性活用がどうこうという話はいうほど経営効果としては語られないのかもしれません。このあたりは「ジェンダーギャップ指数」と一緒に考えると、ヒントになるかもしれません。

国なのか社長なのか、どちらでもいいけど、トップコミットメントが人事戦略に大きく影響するのは言うまでもありません。

女性活躍は株価に影響する?

年金シニアプラン総合研究機構(2013)「ESG投資に関する運用会社アンケート結果」によれば、機関投資家が現在提供している運用戦略(アクティブ戦略)において、企業評価や投資判断を行う際に重視しているESG情報として、「人材の育成(若手・女性・高齢者)」と回答した機関投資家の割合は8%です。経済広報センター(2013)「第17回 生活者の“企業観”に関する調査報告書」によれば、女性の活躍に対する企業メリットとして、「株価や業績に影響を与える」と回答した一般生活者の割合は3%です。機関投資家や一般生活者において、女性活躍支援に取組む企業への投資については非常に関心が低いことが窺えます。関心が低い理由としては、女性の活躍支援が業績や株価等の企業の価値向上に寄与するという認識が低いことが背景にあると考えられます。
企業の女性活躍支援の推進と投資家からの関心喚起の実現

市場は、女性活用などの人材領域に反応しており、それに合わせて企業も情報開示を積極的に行ない始めている、と。ただし、上記の記事を読む限り、強いインセンティブなっているかというと、そうでもない気もします。

なぜ女性活用が進まないの?

ジェンダーギャップ

心理学の研究では、男性であれ女性であれ、伝統的なジェンダー観にそぐわない行動を取ると不利益をこうむるという事例が、数多く示されています。こうした偏見をくつがえすには時間がかかるでしょうが、この記事で指摘した傾向の存在を意識するだけでも、対抗手段を用意しておく役には立つでしょう。
職場でのジェンダー差別、5つのケース

差別というか、壁はありますよね。男女とも。問題なのは男性自身とか女性自身という話ではなく、多様性を理解する仕組みがなかったりすることが問題なのでしょう。例えば、女性が育休などの自分の権利を主張するのは当然だとしても、制度がなければ受け入れは難しいのです。

そもそも女性が少ない?

実際に女性活用が進んでいるかといえば、順風満帆とはいえないようです。2014年12月25日に東京商工リサーチが発表した「女性就業に関するアンケート」に関するアンケートによると、政府が目標としている女性管理職比率3割を達成している企業は6.9%。10%未満は76.4%でした。また女性従業員の構成比率は「10%以上30%未満」が最大であり、45.9%という比率になっています。
出生率が下がり、超高齢化社会に突入している日本において、労働人口の確保は重大な問題です。高齢者の活用や、移民受け入れといった方法も検討されてますが、体力や言語能力といった観点からみても、女性活用が最も取り組みやすい方法であることは間違いありません。
女性活用が進まない理由をデータで考える

上記の記事では、「女性を活用するメリットが理解できない」、「女性の採用比率アップによるコスト増」、「経営における優先順位」の3つが女性活躍を阻害する要因だとしています。

そして、その根本は新卒採用にあるとしてます。企業は有名大学(難関大学)の学生を取りたがりますが、その有名大学の女性比率がそもそも低いのだと。そうなれば、そもそも大卒女性が市場では貴重であり、マイノリティに合わせた企業文化・制度設計は進ませにくいってことですね。

関連情報

関連調査

以下のレポートも面白いと思いますので、お時間があればぜひ。

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2014
第6回「コア人材としての女性社員育成に関する調査」
女性の活躍「見える化」サイト|内閣府

関連記事

以下の記事でも、統計やデータ、オピニオンをまとめています。情報量が多いのでお気をつけ下さい。

CSRの労働慣行とは? 「女性部長が多い会社」ランキング(2015年
ダイバーシティ経営と女性活躍推進(女性活用)の調査データ9選
結局、女性活用(女性活躍推進)ってCSRなんですか?
CSR・人事担当者必見! 女性活用に関する調査データ19選
CSRの背景に女性アリ? 女性活用に関する10のデータ

まとめ

CSR活動の取組みが、企業評価向上・企業業績向上につながるのか。

上記のデータをまとめれば、相関関係しかなく因果関係がないパターンも多いのですが、「業績向上に貢献する可能性が高い」という感じなのでしょうか。

コトの本丸は、積極的で適切なディスクロージャー(情報開示)や、マイノリティとなる従業員の支援や適材適所の人員配置の仕組み、などです。そこに戦略はあるのかい?ってことです。このあたりの「目的と手段のメタファー」を間違えなければ、業績と企業評価の向上はできるのかもしれません。

女性の働き方を考えるということは、人事戦略を考えるということです。僕としては、女性活用や女性活躍推進による、会社のレジリエンス(柔軟性)向上が本来の形だと思っています。

CSR担当者はもちろんのこと、ダイバーシティ推進、人事などの担当の方も上記データ・記事の確認をオススメします。



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