投資家目線の情報開示とは–投資にCSR/ESG情報は必要か

ESG情報

投資にCSR/ESG情報は必要?

先週、東洋経済CSRセミナー「投資にCSR情報は必要か」に参加したので、レポートを。

今回のセミナーは、投資家目線でCSR(ESG)を見るとどうなのか、といった話でした。企業側からすればIR視点のCSR報告ですね。

昨今の統合報告を含めて、CSRにおける情報開示は、ますます投資家に向いてきています。しかし、投資家が欲しいであろうCSR関連情報ってよくわからないし、そもそもどんな所を見ているかわかりにくい、という声があります。

スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コード、統合報告などCSR情報を活用した投資しようという動きが日本で広まっているのはわかるのですが、まだまだCSR情報と株式投資などとは結びにくいのが現状だと思います。

で、実際に投資家はCSR(ESG)情報をどう収集し活用すればよいのか、さらに企業はどのような開示をすべきなのか、などを幅広く議論した内容となりました。僕もこのあたりはなかなかイメージがしにくかったのですが、今回のセミナーでなんとなくわかってきた気がします。

というわけで、以下、箇条書きに近いですが、参考にあれば幸いです。

世界の機関投資家が注目する企業のESG情報

NPO法人 社会的責任投資フォーラム(JSIF)会長:荒井勝氏の講演メモ

政府主導の情報開示推進の動きは一過性なのか。企業情報が充実していないと、そもそも投資家が判断できない。

今は、情報開示というより「質」が求められている。スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードなど、ESG分野の日本の動きが活発になってきており、2015〜2016年は企業のESG情報開示も進んでくる。日本は変わる。

水問題で、都市の水道設備の整備も重要。途上国の話だけではなく、日本にも水問題はある。

カーボンフットプリント。リスクが同じなのであれば、排出量が少ないほうにいく。企業が環境負荷のコストを払っていない場合、他の誰かが払うことになる。企業はいいけど、社会はいい迷惑。

世界的に豊かな日本は、環境負荷が高い。環境負荷は日本国内だけではなく、世界にも拡散する。PRI(国連責任投資原則)に署名している機関は、企業の株式に投資するのであれば、ESGを考慮しなければならない。でも企業は適切なESG情報を開示しているか?

パネルディスカッション

投資家の絶対的な目的は「リターン」。これがESGで予想が出来るのか。

ESG情報は主に3つの使い方がある。1、企業成長を予想する時の補足情報。2、ESGはその後保有するかしないかという、売却のタイミングを見るために使われる。3、リスクの度合いをみる、日本のファンドマネージャーの場合。

投資家は財務情報だけでは企業価値判断ができない。そもそも株式発行は中長期の資金調達のはずで、企業が何のためにその資金を使うのか、というポイントが重要になってくる。

財務情報は、過去の結果に過ぎず、将来を保証するものではない。一つ点、一つの期間の事業活動しかわからない。ESG情報は、企業がこれから取り組む活動を知ることができ、未来を知る手段ともなりうる。企業の価値は、過去ではなく、今日以降の企業活動が重要なのではないか。

「四季報」も定性的な情報も考慮している。でもESGという項目だけということはない。企業のトラブルが起きた時、労働関係などチェックすことはある。その程度の情報。

中長期的に社会課題に対してアプローチ(リスクヘッジ)しないと、大きな企業の問題が起きることがある。投資は企業とリスクをシェアするという意味もある。リスクを持ちたくないのであれば、手放すしかない。

東証の上場基準にもコーポレーションガバナンス・コードが影響が出てくる。DJSI(ダウジョーンズサスティナビリティインデックス)でも、日本21社(全333社)、韓国22社(全60社)、日本企業は選定には入っているもののあまり入らない。海外ではもっと進んでいる。ESGの情報開示が遅れている。

ESG情報がない企業は、投資スクリーニングでバッサリ切られる。そもそも、ガバナンスが適当な企業に未来はない。逆にガバナンスがしっかりしている企業は、環境・社会もしっかりしている傾向がある。

企業は透明性を高める必要がある。しかし、投資家は、どのESG情報を、他の企業と横並びで比較すればいかわからない。定量的な部分(社外取締役の人数など)などは使える。

情報とは、そもそもどんな意味を持つかが重要。例えば、女性役員が多い企業とは、柔軟な制度がありレジリエンスがある会社である、など。

ESG情報が誤って評価されることもある。ガバナンスは、投資側が一番見る点。報告書でわかってもらえないのであれば、対話(エンゲージメント)をするしかない。ガバナンスがしかりしている企業は、安定したリターンを得られるとのデータも出ている。

ESGは誰のための情報か?

資本市場の効率性のために、ESGが必要。人は、そもそもせっかちで短期を見がち。そのミスリードを防ぐための、情報開示とプロセス。たとえば「〇〇が3%」では、その数字が多いか少ないかは第三者にはわからない。企業が利益を出すために、その補足するためのCSR情報。ESGだけで判断することはない。

集中投資をする投資が増えている。集中投資とは、投資企業数を減らし、対話をしながらやっていくやりかた。

投資家のマテリアリティは、パフォーマンスを挙げること。企業価値向上の背景には、成長性がある。投資家が成長性を情報から判断できるかどうか。ESGの情報開示の中でもリスクをピックアップしているかどうか。

企業が何を解決できているのか。そこに価値がある。

情報は開示情報のみを参考にする所が増えてる。つまり、ウェブ・報告書などで公になっている情報のみで判断される、ということ。FTSEなどは、企業情報の日本語も見ている。CSR報告書、ウェブサイトなど、すべて見られていると思った方が良い。逆に開示されていない情報は、すべて評価対象外となる。

統合報告が気になる。CSR報告書よりはいいけど、まだまだ欠けているのが投資家視点。様々な非財務情報があるが、世界のコンセンサスが取れているのは、ESGとなる。企業はより投資家を意識し情報開示をすべき。

まとめ

そもそも企業はESGの情報開示をすることは、何のためにしているか、CSR担当者の方は理解しているのか、という点です。

総合的な情報開示は必要ですが、実際ターゲットユーザーをしっかり捉えて発信している企業ってどれくらいあるのでしょうか。講演された荒井さんも「情報開示の“質”が重要になってきている」と言っていましたが、まさに、CSR担当者も「情報の質」についてより意識すべきです。

投資家は敵ではなく、リスクを共有する仲間でもあります。特に上場企業は、投資家目線も考慮し、情報開示をしていくべき。

今回は、世界の投資家(機関投資家)の目線でCSRにおける情報開示について学びましたが、これらが投資だけではなく、世界的なCSRランキングやCSR系インデックスにも関係するとのことで、改めてその難易度の高さを認識しました…。

ちなみに、セミナー後、東洋経済のKさんと、運営有志で飲みに行ったのですが、そこでの話も非常に興味深かったです。

詳細は書けませんが、世界的なCSRインデックスやCSRランキングって実際どうなの?とか、かなりリアルな話を聞いて、早速、僕のクライアントに報告をしようと思ったとか…。世の中は有象無象の権力で動いているんだな、と思ったり思わなかったり。

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