非財務情報(CSR情報)開示動向からみるCSR報告と投資評価

CSR非財務情報開示

非財務情報開示動向からみるCSR報告と投資評価

世界的な非財務情報開示のプレッシャーは高まるばかりのようです。

今回は、非財務情報開示の話と投資まわりの話を。2014年に色々な動きがありましたが、2015年もその影響を受けて企業側も諸々対応が必要になってきそうな感じ。

このあたりの領域はCSR担当者だけではなく、IR部門はもちろん広報部門などの社内連携、経営層の情報開示の意思決定、ウェブと報告書のメディア戦略など、多くのことが絡んでくる、ちょっとやっかいな所でもあります。

サクッとナナメ読みしていただき、世界の流れをご確認いただければと思います。

非財務情報開示のプレッシャー

日本の動向

指針には、機関投資家が的確に把握すべき当該企業の状況が示されている。そこでは、業績や資本構造と並んで、ガバナンスや企業戦略、社会・環境問題を含むリスクへの対応など、いわゆるESG(環境・社会・ガバナンス)あるいは非財務といわれる側面も例示されている。企業は社会との関係や地球からの資源などをなくして持続的な成長をすることは難しい。社会・環境問題は、企業の中長期的な価値創造に影響を与えうる事項だという認識が明確に書かれているのである。
スチュワードシップ・コード/コーポレートガバナンス・コード:期待高まる非財務情報開示と企業経営の変革

日本のSRI/ESG投資のマーケットは世界的にみても非常に小さいとされていますが、「スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」の影響がマーケットにも出てくるのではないかと言われています。

そうなると、CSR担当者としては「投資家にはどのような情報開示をすべきか」という視点がほぼ強制的に求められて、統合報告や積極的なCSR関連項目の情報開示をIR部門や広報部門などとより協議する必要」が出てきます。ステークホルダーのプレッシャーって怖いですね。いや、社会としては正常に向かうということなんですけど、CSR担当者としては大変なことでございます。

参照:「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~の受入れを表明した機関投資家のリストの公表|金融庁

欧州の動向

欧州議会は、2014年2月26日、欧州委員会が2013年4月に提示していた企業の非財務情報開示の義務化に関する会計指令の改正案に合意しました。これにより、従業員数500名以上の公益性の高いEU企業(主に上場企業および金融機関)に対して、環境問題、社会や従業員に関する問題、人権尊重、腐敗防止や贈賄、取締役会の多様性に関する企業の方針、リスク、実績についての情報開示が義務付けられることになります。
「公益性の高い」とは、上場企業、金融機関および事業活動、規模、従業員数によって加盟各国で指定される企業とされており、EU域内の6,000の企業グループが該当すると見込まれています。
非財務情報開示を義務付けるEU指令案承認

義務化ということで、企業のCSR関連コストは増え続けるばかりですね。まぁ、適切なCSR/ESG情報を発信していた企業は、そこまで負担にならない場合もあるのかもしれませんけど。

投資動向

非財務情報のニーズ

社会的責任投資(SRI)は、投資プロセスに非財務情報も考慮する投資や株主として企業に働きかけることをいい、欧米を中心にSRI市場の規模が拡大している。
2011年末における世界全体のSRI市場の規模は約13.6兆ドルで、運用資産額の21.8%に相当すると推計されている。米国のSRI市場の規模は、2012年調査の約3.7兆ドルから2014年調査では約6.6兆ドルへと拡大している。欧州も2011年末の約6.8兆ユーロから、2013年末には約9.9兆ユーロにまで拡大しているとみられ、直近の世界全体のSRI市場も大幅に拡大していることが推察される。
企業価値に対する財務情報の説明力が低下していることや、日本版スチュワードシップ・コードの策定などで、SRIだけでなく、経済的リターンを求める投資においても非財務情報に対するニーズが高まっており、企業はCSR経営を実践するだけでなく、その情報を適切に開示することが求められよう。
社会的責任投資(SRI)とCSR情報の評価

僕が懸念しているのは一点だけ。「CSR経営の適切な情報開示とは何か」ということ。僕も正直、試行錯誤しながらでもあるのですが、株主を中心としたステークホルダーへの情報開示のベストプラクティスが課題です。

これは、実際の投資家・株主を可能な限りヒアリングし、「実際どうなのよ?あんたどこの情報を重視するのさ?」みたいなことを聞くしかないんでしょうね。CSR報告書も想定読者のヒアリングなんかほとんどしていないのに、CSR担当者とIR担当者でどこまで情報開示のポイントが絞りきれるというのか…。難しいですね。

開示要求は投資家・株主だけではなく、市場からも起こっており、ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)が、SRI指標である「FTSE4Good」の指数を導入すると発表しましたし、世界の証券取引所でも同様の流れは起きています。(参照:「日本はどうかなぁ?2012年にCSR報告推進した証券取引所「タイ・ブラジル・メキシコ」」)

外国人投資家

非財務情報を開示する企業の世界金融危機後の業績は、そうでない企業と比較し安定的(変動が小さい)な傾向がある。また、非財務情報の開示と株式所有構造を見ると、特にリーマンショック後の株価低迷期において、開示企業では外国人保有比率が高まる関係が見られる。政府は、女性の活躍状況などの非財務情報の開示促進(「見える化」)を進めているが、このような情報開示が進めば、所有構造の変化を通じても経営の規律づけに繋がることが期待される。
非財務情報の開示と外国人投資家による株式保有

へー。開示をすると、外国人投資家が増えるのか。ただの相関なのか、因果関係まであるのかはよくわかりませんが…。

ただ、ダイバーシティやワークライフバランスみたいな人的領域の情報開示は、就職活動をする学生、転職を希望するビジネスパーソンなどにも有効な情報でしょうから、いいことだとは思います。あまり進められていない企業は、そもそも情報開示しないだろうしね。

まとめ

リスク開示をすることでリスクヘッジができる。これはまさに非財務情報開示のポイントと言えるでしょう。

CSR活動のKPIとPDCAをしっかり決め実践している大手企業も多いのですが、それが非財務情報開示として適切なCSR報告をできているかというと、難しいと言わざるをえません。

何人かのCSR担当者から聞いた言葉が「ウチは結構やっていると思うんだけどねぇ」というもの。そう。やっていても情報開示してくれないと、第三者には何が起きているかわかりませんから。

各種報告書だけではなく、ウェブコンテンツなどのメディアもをうまく使いながら、的確な非財務情報開示をしてくれる企業が増えることに期待します。

関連記事
CSR/ESG情報開示によって、ESG投資は日本でも普及するのか
CSRを含めた潮流を丁寧に解説する本「統合報告書による情報開示の新潮流 」(宝印刷)
義務化されつつあるCSR報告(非財務情報開示)の最新トレンドは「女性」!?
統合報告書の意味を再考するための記事7選[2014年]
社会貢献型投資・インパクト投資のトレンドと、マーケットの市場規模[2014年]

photo credit via photopin cc


csr

このエントリーをはてなブックマークに追加