CSR調達が国際ルールとなる時代-CSR部の社内課題も浮き彫りに

CSR調達

CSR調達にどう対応すべきか

CSR調達は社外だけではなく、社内にも色々と課題があるようです。

先日、複数の企業のCSR担当者にヒアリングさせていただいたのですが、CSR調達の対応を始めたのはここ数年という回答が多かったです。超有名な大企業でもそんなレベルだということです。

難しいのが、CSR部は直接的な資材調達業務を行なうわけではないので、CSR部のみでは対応しきれないという点。

最近のISO規格化の話もふまえて、まとめてみます。

持続可能性を考慮した調達

英国には、「持続可能性を考慮した調達のための原則と枠組み」という規格(BS8903:2010)がある。デンマークでは、2010年に政府の主導する協議会が「持続可能性を考慮したサプライチェーン管理のためのガイドライン」を発行した。欧州全体でも、今年2月に改定された「公共調達に関する指令」において、この考え方が明確に盛り込まれることになった。
世界の国際規格を作る国際標準化機構では、現在、日本を含む世界から41カ国が参加して「持続可能な調達」をテーマとするプロジェクト委員会(ISO/PC277)が作られ、新たな国際規格(ISO20400)の作成作業を進めている。社会的責任の考え方を、調達という行為に統合する際の、原則と手順を定めようというものだ。調達対象となる製品の仕様に焦点を当てるのではなく、調達行為を行う側の行動規範を世界的に合意しようというのである。
環境配慮が新段階へ 企業の「調達行為」も注視

日本総合研究所の足達英一郎氏のオピニオンです。また記事の中で、日本企業は、コストが最重要項目で対応は難しいとしている、という趣旨の発言をされていますが、まさにそうでしょうね。

だって、途上国の環境破壊が進んでも、日本の拠点に影響は皆無ですから。目の前の問題が見えているようで見えていないんでしょうね。残念な企業が多くて、僕は胸焼けが止まりません。(二日酔いじゃないよ)

ISO20400という規格作りの段階ということですが、CSR関係者は要注目ですよん。

消費者の新たなニーズ「ソサエタル・ニーズ」

世界の消費者の78%が、ブランドが「消費者の懸念や不満に迅速に対応する」ことは重要であると考えており、68%が「製品の調達・製造方法をオープンかつ透明性のある方法で伝える」、52%が「製品の開発・改良プロセスに消費者を参加させる」ことがブランドにとって重要であると回答しています。

■消費者の新たなニーズ「ソサエタル・ニーズ」の出現
ソサエタル・ニーズとは、単なるCSRの領域を超えたものです。ブランドは社会的使命をまっとうする信念を消費者とシェアしなければなりません。このソサエタル・ニーズを満たすことで、消費者が個人情報やブランドのコンテンツをシェアする可能性が高まることが明らかになっています。
世界の消費者の9割がブランドとの関係に満足していない

エデルマン・ジャパン社の消費者意識調査「ブランドシェア」の調査結果記事です。

CSR調達は国際的なガイドラインとなるからやらなきゃダメというのもあるのですが、消費者がそれを求めているから、というのも大きな理由の一つとなりそうです。

CSR調達は、環境配慮が一般的ですが、他の様々な社会課題とも密接に関わっており、消費者が求めるほどの事業プロセス開示に、企業が対応できていないという点もあると思うんですよね。そもそもCSRセルフチェックシートやCSRアンケートの準備、現場への抜き打ち訪問チェックとか、できている企業のほうが少ないでしょうね。

ISO20400という規格にされる前に、ある程度は形にしておきたい所です。情報の透明性が求められる時代には、CSR調達という事業プロセスもオープンにする必要がありますよね。

CSR調達の社内コミュニケーション

CSR調達はもう国際ルールとしてしなければならない、と。そうなったら、やるしかないのですが、問題は、社外だけではなく、社内にもあるのです。

問題となるのは、CSR部と購買部(資材調達部門)の連携という現場課題を、多くの企業が抱えている点。

例えば、統合報告書制作で「CSR部とIR部の連携がうまくいかない」という現場の課題があるように、CSR調達で「CSR部と購買部の連携がうまくいかない」という課題もあるようです。社内の発言権が強い人がCSR部には少ないのも原因の一つかもしれません。

普通に考えれば、企業の直近の利益はCSR部ではなく、購買部の活動が直結するわけだし、当然と言えば当然ですね。

ただ、そもそも役割や価値観が異なる別の部署と密接な連携がそこまで必要なのか、という声も実際はあります。そうなると、経営企画みたいな部門が中期経営計画を作る時に、どこまでCSR・調達などの部門をまとめられるか、が重要なんでしょうね。

仕切る人がいない中、当事者同士でお互いのメリット・デメリットばかりを話していてもしょうがないですからね。こういう全体最適の仕組みや情報をまとめることこそが「統合思考」であり、CSR調達を含めた企業のCSR活動において求められていることかと思います。

参考記事
統合報告書制作の、“統合思考の全体最適”という可能性を考える
統合報告書の事例と、制作現場の悩ましい課題

まとめ

CSR調達は広い範囲のサプライチェーンマネジメントの話であり、非常に難易度が高い活動とも言えるかもしれません。

具体的に何が難しいのか、という点は上記で述べてきましたが、ひと言でいえば「他人をコントロールすること」が難しいということです。

自社だけでいえば、最悪、ドンと予算を突っ込んで業務改善等できますが、取引先や地域コミュニティとなると、基本は“赤の他人”であり、完全にコントロールすることはできません。

社内にも社外にも大きな課題が残るCSR調達ですが、世界のガイドラインも決まってきているんだし、もう前に進むしかなさそうですね。CSR部の方は、まずは、購買部と積極的なコミュニケーションをとり、現場を確認してみて下さいな。

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