CSRからCSVへ

CSRからCSVへ。

最近は、CSR関係者の間では「CSV見直し論」(参照記事:「「CSRからCSV(Creating Shared Value)へ」は、なぜ間違いなのか」、「“CSRからCSV(Creating Shared Value)へ”が成り立たない3つの理由」)が勢力を増してきているようですので、こういったCSV事例などには、逆に注目が集まっていると勝手に妄想しております。

「CSV見直し論」賛同者の方々の多くは、CSRコンサルタント系の方々ではない、というのも興味深いところであります。

僕は、どちらのグループに“長いものには巻かれろ”されるのが良いのでしょうか。どなたかCSR的処世術をご教授下さい。

というわけで、最新のCSV事例を振り返りながら、CSVとは何かを改めて考えてみましょう。

最新のCSV事例

1)「子育て支援事業」
2)「愛の訪問活動」 <ヤクルト本社>
3)「お食事お届けサービス事業」 <セブン・ミールサービス>
4)「まごころ宅急便」 <ヤマト運輸>
5)「ココセコム事業」 <セコム>
6)「ピュアスター事業」 <森永乳業>
7)「化粧療法プログラム(お化粧教室)」 <資生堂>
8)「HOSPITALVALUEPROGRAM事業」
9)「『キリン 氷結R 和梨』活動」 <キリン>
10)「茶産地育成事業」 <伊藤園>
(CSV事業の先進事例分析を通じた 支援の枠組みに関する調査研究事業 報告書、野村総合研究所、2014)

CSV研究で有名な「CSVサーベイランス ネットワーク」さんが、先進機関としてヒアリングされているんだ。水上先生の著書「CSV(Creating Shared Value)の事例集! CSV事例の良書「CSV経営」」の献本いただいたことがあるのですが、そこ界隈の業界団体(?)のようです。

上記の報告書は、用語の解説なども丁寧にしてあるので、お時間ある時にぜひご覧下さい。127ページもあります。

なぜCSVの文脈を語らないのか

CSV論だけではなく、概念にはそれが生まれた、背景・文脈があります。それを理解していないと、本質的な議論はできないと考えています。

「欧米は罪の文化、日本は恥の文化」って、文化的背景を理解してCSVを語ると、より明確な視点が得られるかもしれませんね。

ビジネス・エシクス(企業倫理)は罪の意識が強く、商道徳は恥の意識が強い。よくCSRの話で出てくる「三方よし」は、けっして罪の意識から始まっているわけではありません。

ざっくり言うと、例えば、日本の商慣習は欧米と差がありますよねってことです。チョップスティックとフォークの差みたいなもんです。道具として、最終的なゴールはほぼ同じだけど、使い方やマナーが大きく異なる、っちゅうイメージです。

マイケルポーター氏のCSVは、CSRの定義をアメリカ的なフィランソロピー的なものであるとしている前提があります。つまり、昔、彼自身が言っていた「戦略的CSR」が昨今のCSRの流れ(トレンド)であるという、日本の背景には合わないのでは、という議論もあります。

「マイケルポーター教授が言ったから日本でもCSVしよう」みたいな短絡的な発言を見聞きする中で、ちょっと残念に感じたりもします。

某大手広告代理店の方が、この前「CSVとは…」みたいなプレゼンテーションをしていました。中身が薄くてビックリした記憶があります。広告業界では有名な人(?)なのかな。

CSRでもCSVでもどっちでもいいから、まず、活動を始めましょうよ。部署作ったり、研修受けただけで満足している企業さん多くないっすか?

だからこそ、先日書いた「「CSRからCSV(Creating Shared Value)へ」は、なぜ間違いなのか」のように、CSVって言い換えただけで、本質的な企業活動の多くには変化がありませんではもったいないのです。

マネジメントやマーケティングの巨人たち、フィリップ・コトラー、ピーター・ドラッカーなどもCSRについて書籍の中で何度も言及しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

CSRとCSV。どちらも「単語の明確な定義はない」とされる概念であるのに、なぜ、ここまで「CSRからCSV」論が盛り上がるのでしょうか。定義がないなら、過大解釈でより浸透しているCSRで統一の方向になる気もします。

3年後のCSR界隈ではどういう結論になっているのでしょうか。

若輩者ではございますが、先輩たちの議論を拝見させていただきながら色々勉強させていただき、勝手気ままに持論を振りかざしていこうと思っています。

あんまりこういうことを言っていると、業界を干されるんですかね?いつも好き勝手言ってますけど、特定の個人・企業・団体を批判はしてないのでOKと解釈しておりますが…。合掌。

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