“おもしろいCSR”と、CSV(競争戦略)と、社会貢献について考えてみた

面白いCSR

おもしろいCSR

おもしろさとはなんでしょうかね。

当ブログの読者の方は頭のいい、知的好奇心旺盛な方が多いと思うけど、「おもしろい」って何がおもしろいのが、その事象を一般化した概念にまで、論理的に考えたことがある人はいないと思います。まっ、それがフツーなんですけど。

ちなみに、僕のいう「おもしろい」は、Funny(滑稽)な面白さではなく、知的好奇心を刺激するような Interesting (興味深い)な面白さです。

社会学者のマレー・デイヴィスが書いた論文「That’s Interesting(1971)」では、「おもしろい」ということは、それまで常識として考えられてきたことを覆したり、あるいは今まで考えていたいたことと異なる意見が提示されること、としています。

講演などで、自分の知っていることばかり語られても、面白いとは思いません。自分の知らなかったことや、定石ではない考え方が語られると、「ん?何々?」と、知的好奇心が刺激され、興奮すら感じます。

「自分の知見に裏切られること」がおもしろい、なのです。

論理的であるかどうかは微妙ですが、「おもしろい」CSRについて、少し考えてみましょう。

余談ですが、僕と会話をしている時「それ、面白いですねぇ」というのは、あくまで相槌なので、その概念・事象が Interesting とは限りませんので、あしからず。

おもしろいCSR

Unique(独創的)なCSRは確かに存在します。数多くある法人の中で1社しかしていない取組みもたくさんあります。

しかし、CSRという枠にあてはめている以上、それは本当の意味でオリジナリティではないのかもしれません。

完全なオリジナルで、ユニークなCSRであれば、CSRという単語を自社らしい言葉に置き換え、その枠組みからはずれているはずなのです。

CSRという枠にある以上、独創性は生まれにくいでしょう。

そもそも命題として、「おもしろいCSRを追求すべきなのか」というものはあります。CSRコンサルタントなどが「御社らしいCSRを!」って叫んでいるのかもしれませんが、Unique なCSRが、必ずしもステークホルダーから見て、Interesting であるとは限りません。

そのあたりは、コミュニケーションの領域の話しでもあるので、経営思想としてCSRにユニークさを求めすぎるのはどうかな、という気がします。

ユニークさに対する危惧は他にもあり、CSRにおけるユニークさは競争戦略として経営効果につながらないのでは、ということです。

マイケル・ポーター教授は、CSV(Creating Shared Value)理論の中で“競争優位”につながるとしていますが、モデレーティング効果(ある事象の、別の事象への効果は、さらに別の要因によって左右されるということ)を突き詰めた、汎用性のある一般的な解になりにくいのではないか、ということです。

つまり、CSVが経営効果(業績への貢献)を発揮するのは、企業風土などの企業独特のリソースが影響する可能性が高いのです。

例で言えば、パタゴニアはCSVで業績アップ、ブランド化という企業価値向上につなげられていますが、他のアパレル企業にも同様の結果がもたらされるとは限らないということです。

必読
企業のブランド価値を高める、CSRとCSV(Creating Shared Value:共有価値創造)再考
思考に歴史あり!マイケルポーターの「FFA-CSR-CSV(creating shared value)」の遍歴再考

CSR/CSVは競争優位戦略となりうるのか

僕はCSVという考え方に大賛成なのですが、競争戦略としてCSVのみを指標とするのは危険なのかも、と。社会的意義は別として、経営効果を過大評価しすぎかな、と。

多くの企業が90年代以降「エコ」な商品開発に参入した結果、エコは差別化要因ではなくなりました。

エコな商品は社会的意義は高いけど、どの企業もしているので競争戦略として経営効果は疑問です。

CSVが浸透した先の企業経営の未来において、CSVは「持続可能な競争戦略」となりえるのでしょうか?問題はそこで、経営も競争戦略も社会的意義も全部まとめちゃうとそうなるのかもね。

僕の意見に反対の経営学者の方もいると思うのですが、ユニークさにこだわりすぎるありまり、CSRの本質からはずれてしまうのは、非常にもったいないなぁ、と思ったりするわけです。

経営学者のジェイ・バーニーの「企業資源と持続的な競争優位(1991)」では、競争優位の命題として以下のように定義しています。

ある企業の経営資源(リソース)に価値があり、それが希少なとき、企業は競争優位を獲得する。
そのリソースが、他社には模倣困難で、代替えができないとき、企業は持続的な競争優位を獲得する。

この命題に従うと、CSVの骨子による競争戦略って何?ってなる人も多いと思うんです。現場においては、あるリソースの価値向上こそが、CSVの本質なのかもしれません。

ってか、ポーター先生の競争戦略って、そもそも「競争しないこと」って趣旨でしたよね?ブルー・オーシャンというか。ってか、去年海行ってねー。関係ないですけど。

必読:マイケルポーターの戦略的CSR、CSV(Creating Shared Value)を考察するための良記事16選

まとめ

いかがでしたでしょうか。

“おもしろい”CSRが、多くの人にとって Interesting な取組みではない。僕は、少なくともそう感じています。CSRにおける「自分の知見に裏切られること」が感動につながることはない。

特にコンプライアンスなどのCSRの基幹となる活動などは、正解かどうか別として、自分たちが理解している、既存のフレームあてはめていく活動が多いので面白さはないでしょう。

CSVではないけど、CSRの最終ゴールは、「持続可能な競争戦略に寄与し、業績に貢献すること」なんですよね?それを簡単に言うと「儲かるCSR」となるわけでして。

結論をまとめますと、ユニークさにフォーカスしすぎると、CSR活動のプロセスが阻害されるされる可能性が高い、ということ。「CSRで差別化」はとりあえず、主軸戦略からはずしてもいいかもね。

まぁ、CSR活動において定石を覆すような業績を上げることが、日本にとって一番の“おもしろい”CSRになるじゃないっすかね。

あなたは、面白いCSRについてどうお考えですか?

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