SDGsへむけて日本企業が取るべき行動とは

SDGs

SDGsと日本企業

いつも言っていますが、そのCSR活動やSDGs推進は、企業と社会/ステークホルダーの双方にとって合理的なものですか、と。

今年は特にビジネスセクターでもそれ以外でもSDGsに関する活動が盛り上がってきております。2010年代でCSRもCSVも一部でしか広がりませんでしたが、ESGとSDGsの広がり方はこの分野では過去最大級ではないでしょうか。素晴らしいことです。

とはいえ、多くの企業の対応は“これから”であり、理想論はさておき、明日から実際どんな活動をしたらよいのか、と感じている企業担当者の方もいるでしょう。

特にSDGsは主語が大きく(「世界平和」とか「誰も置き去りにしない」とか)、フワっとしているし、ビジネスセクターでいうと“言ったもの勝ち”な部分も多く、従業員でさえも自社のSDGs推進の取り組みが何を指すか“腹落ち”していないのではないでしょうか。

そこで本記事では例によって企業経営におけるSDGsの事例や課題をピックアップしながら、今回は「行動」にフォーカスしてまとめます。

行動が起こせないという問題

SDGsが企業サイドでもこれだけ盛り上がってきているのに、なぜ具体的な成果創出に向けて企業は動けないのか。私のこの数年の経験で言いますと「時間が足りない」「“自分ごと化”しにくい」「行動の成果が見えにくい」あたりが大きな問題だと思っています。SDGs/CSR推進のマンパワーが足りない(社員数がたりない)とか、世界観が壮大すぎて当事者意識を持てないとか、SDGs推進をしてどれだけ改善に貢献できたか測定が困難であるとか、です。

これらの問題は地道に解決していくしかないのですが、一度「問題」とはそもそも何かをまとめます。問題とは「将来のあるべき姿と現状の差」のことです。たとえば「2050年にCO2排出をゼロにする」があるべき姿(目標)だとすれば、2019年と2050年のCO2排出量差が問題であり、その差を埋める方法を考え実践しなければなりません。

さて、ここで厄介なのが、問題を定義するには“あるべき姿”が明確でなければ、解決方法を明確にできないという点です。さきほどの例でいうと「いつかCO2排出を少なくしたい」という曖昧な状態があるべき姿の場合、期間も成果もわからないし現状との差を明確にできません。問題が定義できないということは、問題を解決する方法も定義できません。

ではSDGs推進の問題を考えてみると、すでに169のターゲットで“あるべき姿”が明確になっているわけです。でも17のゴールには言及しても169のターゲットに言及している企業は非常に少ないです。(私、全上場企業と主要非上場企業のCSRウェブサイトをチェックしましたので知っています)17のゴールは曖昧で抽象的なものです。厳密に言うとゴールというかベクトル(方向性)ですね。ですのでゴールではなくターゲットを起点にし明確化することで、行動も明確になります。

行動の質を問うべき

SDGsも行動することが重要ですから「まずはできることから始める(フォアキャスティング、順算)」という人たちが多いです。この考え方自体は否定しませんが、これはSDGsでは“最もしてはならないこと”の1つなのです。この10年以上、日本企業の多くは、まずは目の前のできることから、をCSR活動(主に慈善活動)でやってきた結果たいした成果を出せていません。

それは、社会課題を解決するのには、現在の延長線上に答えを探すのではなく(日々の積み重ねではなく)、将来の大きな目標を先に決めて、そこまでのギャップを埋める行動をしていくという「バックキャスティング(逆算)」が必要なのです。もう、まずはできることから始める、というスタイルでは社会問題の多くを解決できないと、この10年くらいで人類は気づいたわけです。重要なのは現在の事業の延長として「できること」にとどまるのではなく、目指すべきゴールからバックキャスティング/アウトサイドインすることが求められています。

目の前の行動を重視するがあまり“木を見て森を見ず”なことになってしまうので注意しましょう。ですので、最低限の戦略というか将来予測と計画がないと行動の意味がないです。寄り添うだけでは世界は救えません。SDGsの宣言しただけでCSR活動をしない会社も多く、それでは社会問題はまったく解決しません。本気でSDGsしたいなら行動からではなく戦略構築から始めましょう。

あともう一つ。SDGsは「マルチステークホルダー・パートナーシップ」が重要と言われています。一つの国でもSDGs推進は大変なのに、企業が1社で対応とか推進とかそれは100%無理なのです。それを知っていながらみなさん自社の事業と17のゴールしか紐付けしません。(初期段階では有効ですが)SDGsの実務でいえば「自前主義の脱却」こそ日本企業共通の課題ですね。つまりコレクティブインパクトというか、セクターを超えてNPO/NGOや自治体と連携したり、業界団体を通じ競合とも協力して課題解決に動くなどしないといけません。

データ・事例

行動に移せていない

世界のCEOの約8割は「企業がSDGs達成に向けて重要な役割を果たせていない」と認識していることが分かった。国連グローバルコンパクトとアクセンチュアはこのほど、99カ国の1000人以上のCEOに対して行ったサステナビリティに関する意識調査の結果を発表した。同調査は、大多数のCEOがサステナビリティに取り組む重要性を認識しながらも実際には行動に移せていない現状と背景を明らかにしている。また88%のCEOは世界の経済システムは公平な成長に回帰する必要があると答えている。
サステナブル・ブランド・ジャパン

本当の認知度は4%?

・SDGsの認知度は、「内容まで知っている」はわずか4%、「言葉は聞いたことがある」との合計は15.5%にとどまる。
・民間企業がSDGsに取り組むことに3割半ばが好感を持っているが、「その企業の商品・サービスを購入したい」は1割強、就職や投資先への意向は3%ほどと自分ごととして捉えていない様子がうかがえる。
日本リサーチセンター|SDGsに関する一般生活者の認知・意識調査

SDGsは新聞で知る?

・SDGsについて知っているかを聞いたところ、「認知」度は37%にとどまった。回答者をビジネスパーソンに絞ると44%に、株式投資者のみでは50%にそれぞれ達するものの、一般に浸透しているとはまだまだ言い難い状況だ。
・SDGsを認知している人にどこでSDGsを知ったのか尋ねた結果、「新聞記事」が35%と最も高く、「テレビ・ラジオ番組」(28%)、「ニュース記事」(21%)が続いた。「企業のウェブサイト」(18%)がこれらを下回ったことからも、SDGsは企業からの発信というよりもメディアからの情報によって知られているようだ。
日経BP|SDGsに関する自主企画調査結果

事例で気をつけるべき点

SDGsとビジネスの関連性や地方創生をうたう書籍が有象無象たくさん出版されてますが、企業にしろ自治体にしろ、SDGsという概念がないころからの10年超えるような長い苦闘の歴史があったからこそ、SDGsのアイコンが違和感なくハマるわけです。

「社会課題解決をビジネスに」はそう簡単ではありません。できたとしても、多くの企業では規模が小さくグローバルなインパクトで考えれば、ほとんど貢献できてないようなケースも多いわけです。国内でSDGs先進企業と言われる企業でも、SDGsが生まれる2015年以前から様々なソーシャルアクションに取り組んでいる例が多いです。CSR先進企業も、2000年代後半から10年以上活動をして成果を今認められている企業もあります。2015年以降にサラっと情報開示をSDGsの枠組みでしたくらいで、世界に貢献できていると思わないほうがいいですよ。

特に欧米では、SDGsよりは、具体的なソーシャルインパクトにフォーカスされるようです。外資のCSRで有名な企業もSDGsを全面に出していないところも多いですよね。企業にとっては、良くも悪くも枠組みの一つでしかない、というか。SDGsであってもなくてもいいから、粛々と課題解決に貢献していくしかないのです。

日本企業の傾向

最近、見えてきた日本企業の傾向と事例があります。これは特に2019年に海外動向に詳しい専門家からもよく聞いた話。

日本のサステナビリティ推進のスタイルは「キーワード先行型」なんて言われることがあります。CSVとかSDGsとか流行り始めるとすぐに乗っかるスタイル。(トレンドに弱いとも言える?)私としては、日本企業が何を先行してもいいけど、最終的に行動しアウトプットすればいいと思っています。日本企業の多くはインプットは積極的ですがアウトプット(アウトカム/インパクト)が弱いです。

SDGsにおける日本企業の気になる所は「情報開示の枠組み」として使われている点です。より重要な“ビジョン=どんな未来を作りたいか”の手段やヒントにしなければならないのに、です。「今ある活動をSDGsに紐づける」から「SDGsに貢献できる成果を新たに創出する」と言う能動的な取り組みが期待されています。

ちなみに、具体的な企業事例は「外務省|SDGs取り組み事例」にはものすごい数の企業事例としてまとめられていますので参考にしてみてください。

経済合理性とSDGs

SDGsが経済合理性(ビジネスオポチュニティ、ビジネスチャンス)のみで語られているのも気にはなります。経済価値の創出は既存事業ですでに生み出しています。それで言うと「SDGs=既存事業」となってしまいアウトサイドイン思考ではなくなってしまいます。

ビジネスセクターに求められるSDGs対応は、経済合理性重視(市場を通じて顧客利益を追求し、外部不経済を無視する)だった経済社会を、「人間ファースト」(誰も置き去りにしない)に置き換えるというパラダイムシフトだったはずです。その手法がトランスフォーミングであり、アウトサイドインであったはずです。

企業は営利企業なので、通常の事業活動をしていれば、経済合理性がどんどん追求されていきます。これは正常な方向性です。ですので、企業活動によって外部に与える影響をアウトカムとして、外部経済/外部不経済を内部化して開示しなさいと。いつまでも社会・環境への負荷を人のせいにしていたらダメよ、と。これがバリューチェーン・マッピングの本質だと思います。

昨今のSDGsはポジティブに語られすぎな印象です。かといって某NGOのようにひたすらネガティブな訴求をするのもよろしくない。そもそもCSRってバランスの話ですよね。バウンダリーの線をどこにひくかとか。このあたりは先日まとめた「CSV経営における企業戦略としてのマーケティング」に書いてありますので興味がある方は参考にしてください。

まとめ

個人ならまだしも、組織として行動することは大変なことです。特に担当者レベルで会社の経営方針や全社的取り組みを変えるとなると、直接的には相当な難易度となるでしょう。それでも覚悟と勇気を背負ってSDGsのゴールに向かって進むというのであれば、私もできる限りご協力したいと思います。

実際問題、SDGsのイシューは2030年に解決すべき問題ではなく、可能なら明日にでも解決すべき問題なのです。もはや企業は様子をうかがっている場合ではないのです。さて、明日から何をしましょうか。

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