CSRのウェブサイト/コンテンツにおけるエンゲージメント施策

CSRウェブサイト/コンテンツ

CSRコンテンツのあり方

「CSR/サステナビリティ分野のウェブサイト・コンテンツ」(以下、CSRコンテンツ)の注目度は高くなるばかりです。

テクノロジーの発展によりインターネットが社会インフラとなる中、企業とステークホルダーの接点となるコーポレートサイトの重要性が増すばかりであり、CSRコンテンツもステークホルダーの情報ニーズに合う適切な開示が求められています。

私は、上場企業を中心とした大手企業のCSRコンテンツを10年以上定点観測していますので、そのあたりの課題感を含めて、毎年一定数の企業のCSRコンテンツをみてきて思うことをまとめます。御社のCSRコンテンツの制作・運用のヒントになれば幸いです。

※「CSRコンテンツ」のCSRとは、CSV/ESG/SDGs/サステナビリティ/社会貢献などを含む、広義の意味であるとします。コーポレートガバナンス単独のページは含みません。

CSRコンテンツの優先順位

昨今では、CSRの詳細情報を冊子からコーポレートサイトに移行する企業が増えており、また、印刷を意図した冊子は作らずCSRコンテンツをそのままPDFにまとめるレポーティング形式も増えてきていて、CSRコンテンツが実質的なCSRレポートの役割を果たすにようになる場面が増えています。そのためCSRコンテンツの情報充実度が、ステークホルダーの意思決定において重要な判断要素となる割合が以前より高まっていると考えられます。

そして、昨今の統合報告書発行企業は、統合報告書を出すためにCSR/サステナビリティ系の冊子(非財務情報を中心とした報告書)は作らず、CSRコンテンツとして情報開示する例が増えてきています。時間も予算も単純に倍かかるので当然の流れですね。統合報告書発行企業の3割程度はCSR報告書も作っている、という調査があったような。だとすると、7割の企業はウェブに特化させているということです。

となれば、CSRコンテンツが従来の「社会・環境報告書」「CSR報告書」「サステナビリティレポート」の役割を担うわけでして、統合報告書の内容をCSRコンテンツとして、コピペすれば良いわけではありません(それでは非財務情報が少なすぎる)。つまり、CSRコンテンツの重要度が、以前より、確実に増してきていますよ、ということです。

インターネットがインフラになった現代社会では、すべてのステークホルダーが、企業の事業活動に対して“受け身”ではなくなった点があげられます。インターネットを使って、簡単に企業情報にアクセスし事業活動を監視できます。当然、情報開示量が少なければ、透明性・信頼性は下がります。能動的な行動を逆エンゲージメントというか、ステークホルダーの発言力向上というかわかりませんが、すでに目の前で起きている事実の一つです。

目標設定

さて、CSRコンテンツには、短期で追うべき成果と長期で追うべき成果があります。プロセスとして、短期KPIを達成していくと中期KPIが達成され、その結果として長期目標のKGIが達成される、みたいな流れが理想です。

短期の成果でいえば「アンケート回収数」「CSR関連報告書ダウンロード数」など、長期の成果でいえば「ブランディング」「企業価値向上」などがあります。アウトプット・アウトカム・インパクトを論理立てて、企画立案していきましょう。とにかく「CSRコンテンツを使って達成したい目標は何か」や「CSRコンテンツで解決したい課題は何か」など、ウェブマーケティングの基本的なところは、社内のサイト運用チームと連携して構築したいところです。

ちなみに、この目標設定はかなり厄介でして、よくあるPV/UU(ページビュー、ユニークユーザー)は指標にならないですからね。PV/UUの増減は、CSR活動のKGIと相関しないからです。CSRコンテンツの場合、いわゆる経済的成果につながらなくてもいいのです。そうなると、どのような成果を設計するのかというのは、ウェブと最低限CSRを知っているメンバーがいなければ、なかなか難しいのが現状でしょう。

ミレニアル世代へのアピール

労働人口世代としても一大勢力となった「ミレニアル世代(1980-1995年生まれ)」や「Z世代(1996-2010年生まれ)」。私はミレニアル世代の人間ですが、これらの世代の興味関心には、CSRコンテンツを含めた動向にいくつか特徴があるようです。ミレニアル世代はバブルを社会人として体験していませんので、その前の世代と価値観が全然違いますよね。

たとえば『読者100人に聞いた「#シェアしたくなる企業サイト」。ミレニアル世代の心を掴むための3つのキーワードとは?』という調査では、「パーパス」「オーセンティシティ」「デザイン」の3つのポイントが重要としています。

多くの業界が成熟産業となり、コモディティ化してしまっている状況ですので、企業ごとの商品・サービスのごくわずかな機能差など顧客には正直わかりません。そうなると、事業活動の背景・文脈の情報として、CSRコンテンツが活きてくる気がします。いわゆるストーリーテリングです。色々な調査で、購買には、商品の機能や値段だけではなく、企業姿勢やトップのイメージが影響するともされています。

コンテンツの信頼性

1、企業評価の際に、「メディアからの発信」を8割が信用
企業評価の際に利用する情報発信者の信用度について、「メディアからの発信(ニュースや記事など報道)」は80%が「信用する(信用する/ある程度)」と回答している。次いで、「企業からの発信(企業ホームページ、各種刊行物、ソーシャルメディアなど)」が76%となっている。
2、企業からの発信情報で不足しているのは、「不良品や不祥事に関する情報」が53%で最多
企業が発信する情報で、不足していたり、より詳しく知りたいと思う情報について聞いたところ、「不良品や不祥事に関する情報」が53%で最も多い。次いで、「企業の社会的責任に関する方針・行動指針に関する情報」が38%、「企業理念やビジョンなど、経営の考え方に関する情報」「企業の経営戦略や事業展開に関する情報」「技術開発に関する情報」がいずれも37%となっている。
「第22回 生活者の“企業観”に関する調査」の結果について

1番の話では、コーポレートサイトは重要でっせ、というもので、2番の話は「ネガティブな情報をみんな求めてますよ」ということでしょうか。

この調査結果は、かなりストレートな、生活者の企業の見方かと思います。企業はネガティブな情報を出したがらないけど、ステークホルダーのニーズは企業のウォンツとは違う場合が多いのです。このあたりは、企業として真摯に受け止めるべきでしょう。

目次の重要性

ウェブコンテンツにおいて、多くのユーザーは見出しだけを読んでいることが様々な調査でわかっています。みなさんがよく読むスマートフォンアプリでも新聞でも、見出し・目次・インデックスが重要だというのは実感いただけると思います。

ユーザーテストでユーザー行動を観察してると、ほとんどの人は字を読んでるとは思えない速度でスクロールしてることが分かります。つまり、見出しからお目当ての情報を探してるのです。だから見出しに主張や主題を書かないと、内容が伝わらない可能性は高まってしまうのだと。 これはCSRコンテンツにも同様のことが言えます。ですのでより見出しの作り込みが重要となっています。見出しが読まれなければ、その先の本文は絶対に読まれません。

一方で情報はできるだけ多い方が理解が進むのでは、と感じています。ユーザーが全部読むかどうかは重要ではありません。情報が多いことが「色々やっている良い会社」という印象を形成し、何かしらのポジティブな意思決定の後押しになる。

別の観点でいえば、多くの情報を選別しているステークホルダーであるユーザーはじっくり見ませんが、専門家や評価機関のユーザーはピンポイントで詳細な情報を見たがるようになります。後者に対応するためには、やはり詳細な情報を網羅的に提供している方が有利になります。最近多い「ESGデータ集」や「活動データ一覧」のようなものは、そのようなニーズの反映なのかもしれません。私も必要であればESGデータ集をチェックします。

つまり何が言いたいかというと、冊子作りと同じイメージでCSRコンテンツを作ってはダメですよ、ということ。ウェブコンテンツは、冊子以上に目次作りに力を入れましょう。

CSRコンテンツのあり方

CSRコンテンツを閲覧する、企業関係者、専門家、そのほかのステークホルダーなどの多くは「自己中心的で気まぐれ」な存在です。当然ですが、自分の見たい情報しか見ようとしません。自身の見ている情報端末(パソコン、タブレット、スマートフォンなど)で、閲覧しにくいコンテンツが表示されれば、ものの数秒で離脱してしまいます。CSRコンテンツは、ものの“数秒で”その良し悪しの大部分を判断されてしまうのです。

御社のCSRコンテンツは、閲覧者が“見たいもの”を適切に情報提供できていますでしょうか。CSRコンテンツといえども「会社の看板」であることには変わりなく丁寧な接客(コンテンツ作り)が求められています。結局、企業の魅力がいくらあっても、その魅力が発信されていなければ評価は上がりませんし、エンゲージメントも生まれません。もっといえば、コンテンツとしては存在しても、見つけられなければ存在しないのと同じということです。

悪いコンテンツ

CSRコンテンツの悪い事例も合わせて伝えておきます。例えば、ダメなCSRコンテンツには、以下のような共通点があります。

・自社の正義感の押し売り
・読者視点ではなく企業視点の表現がほとんど
・情報量が多すぎる
・主張と行動が首尾一貫していない
・目次が抽象的すぎる

CSRは特に有言実行といいますか、「言っていることとやっていることが違う」のを嫌う分野です。従業員を大切にする企業です!と言っておきながら、自社従業員とトラブル(訴訟含む)を抱えている企業を、誰が信じると思いますか?

企業の好感度って、CSR的にいえば「嘘をつかないこと」なんですね。透明性、誠実さ、実直さ、トランスペアレンシー、オーセンティシティ 、インテグリティ、なんて表現もよく使われます。つまり、行っていることとやっていることが同じという「言行一致」が要求され、情報の質も背景もその情報の信頼性を担保する仕組みも、諸々揃ってやっと評価されるのです。

ウェブコンテンツの設計

これはCSRコンテンツだけの話ではないのですが、以下のような“問い”を持っておくと、コンテンツの制作から運用まで軸がブレずにできるかと思います。こういう簡単だけど、体裁を整えるのに必要な枠組みは、どの場面でも使えるので知っておいて損はありません。

・読者となるステークホルダーは誰か?
・読者となるステークホルダーが抱える疑問は何か?
・掲載情報がステークホルダーの疑問に応えられているか?
・読者にどんな行動変容を期待するのか?

「5W1H + A」

CSRコンテンツの全体設計に有効なノウハウもあります。いわゆるフレームワーク(ロジカルシンキング)ですが「5W1H + A」というのがあります。

「どんな理由で、いつ、どこにいる、どんなステークホルダーに、どんな情報を、どんなメディアで伝えるのか」と、ステークホルダーに「どんな行動を期待するのか」を明確にすることで、コミュニケーションの品質は向上し、より高いエンゲージメントが期待できるものです。

When:いつ(情報開示戦略)
Where:どこにいる(バリューチェーン分析)
Who:どんなステークホルダーに(バウンダリ解析)
Why:なぜ(理由づけ)
What:何を(コンセプト/マテリアリティ)
How:どうやって行い(メディア戦略)

Action:ステークホルダーのどんな反応を期待するのか(行動変容)

まったく難しいことは言っていないと思うのでぜひ使ってみてください。なお「Action(行動変容)」から逆算して考えると、成果創出からブレないプロセスが作れるでしょう。

まとめ

結局は、CSRを語る(コンテンツ化する)ということは、想定読者となるステークホルダーに対して、どれだけの価値を提供できるか、という所で落ち着きます。冒頭にも書いた通り、CSR/サステナビリティ関連のレポートは冊子版は作らず、ウェブサイトを中心に展開する企業が増えていますし、今まで以上にCSRコンテンツが注目されるのは間違いありません。

ステークホルダーの興味関心にどれだけ寄り添えるか。CSR担当者の腕の見せ所です。コーポレートサイト管理者に任せきりにせず、積極的に提案し、実際にエンゲージメントを作っていきましょう。

なお、我々は今年1月に「CSRコンテンツ充実度ランキング2019」を発表しましたが、今は2020年1月発表予定のCSRコンテンツ調査をしています。対象は全上場企業です。最新のCSRコンテンツ動向をお知らせできると思いますので、期待してお待ちください。

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