CSR/ESG担当者に必要なノウハウとスキル(2018)

CSR活動のポイント

CSR/ESGの考え方が大手企業を中心に浸透してきて、兼任・専任問わずCSR担当者を配置する企業が急速に増えています。

多くの場合はCSR関連報告書制作が担当業務になると思いますが、部門や推進組織の形式がどうであれ、CSR担当者に必要なスキルはそこまで差はありませんでした。しかしながら、社外ステークホルダーからのプレッシャー(情報開示含む)はとても強くなっており、担当者にも専門性の高いノウハウ・スキルが求められはじめています。

成果を求めればアウトソースが効率がよいのですが、スキルもないのにできるだけ自社内リソースのみの活用(インハウス作業)で取り組む企業が多いのも事実。当然、なかなか成果に結びかず結局アウトソースすることに。無駄になった時間・リソースは返ってはきません。

しかし、当方の支援スタイルとして“自立”は重要なテーマです。そこで、本記事ではどこからインハウスでCSR推進をしていけば良いかまとめます。日々の活動の参考になれば幸いです。

CSR担当者の振る舞い方

まずCSR担当者が知るべきは、自身の組織での立ち位置です。

CSR担当者は社内における「ステークホルダー理解の専門家」であり「ステークホルダーの代弁者」でもあります。たとえば、企業の多くの目標は売上や利益ですが、そこをいかにステークホルダーに利益がある形にするかが、CSR担当者のお仕事というわけです。経営指標の時間軸を長くするお役目ともいえます。様々なステークホルダー・インサイトをマネジメントできるのはCSR部門しかいませんから。

はっきり申し上げます。CSR初級者の自己流に全く価値はありません。初期フェーズのCSR担当者はほぼ社内から調達します。(活動が進んでくると経験者求人をかける大手企業も増えます。)驚くことに多くの新任担当者がそもそも研究や分析することをしないし戦略構築に関しても下手すぎます。これが、私が上場企業のCSR担当者に“素人”を配置するくらいなら、いないほうがいいと感じている理由です。ただし、こういう企業のほうが多いので、最初の数年は外部リソース使ってきちんと対応すべきです。その後はどれだけインハウスで対応してもいいと思います。

また、インハウス化についてですが、アウトソーシングしていたときには外部化されて見えていなかった様々な業務やコストを社内に受け入れることでもあります。コスト増が見込まれても実施すべきという意思決定があった時のみ機能します。インハウスを成功させるためには、経営陣の理解やサポート、リソースや時間の確保が最も大事だということですね。

大袈裟な表現を使えば「全社一丸」とならないと、インハウスでの継続的な成功は得られないということでもあるでしょう。たとえば、インハウスでの活動を断念した理由が「担当者が辞めた」という企業は意外に多いです。CSR界隈でも企業のCSR担当者が支援側に転職・独立することはよくある話だし、よくセミナー講師とかしていた方が、他社のCSR責任者に就くこともあります。属人的な活動のすべてがダメとはいいませんが、ある程度、組織化する必要もあります。

「CSR予算がないからインハウスでやる」は、一見正しそうで、成果視点でいえばまったくそうではありません。当然、社内で行うCSR活動も、アウトソースしたほうが安く効率的に行えるものもあります。そういった作業、特に活動の根幹の部分ではないタスクは、さっさとアウトソースしたほうがよいでしょう。特に日本のBtoB企業は自前主義というか、コンサルやアドバイザーの活用がうまくない(特にCSR領域は)ように感じています。

申し訳ないですが、素人が決めた戦略や活動って、やはりどこか抜けていることが多いです。ベテランがいて、10年近く存在するCSR関連組織ならできるでしょうが、最初はノウハウを“買う”ほうがいいと思いますが…。

インハウスへの道のり

CSRをこれから導入する組織には外部からCSRを熟知したコンサルタントを迎えて、様々な移行をサポートしてもらうことをお勧めします。CSRを深く理解し、今、この組織でどのように適用すべきかを知っており、さらに、それを実行できるノウハウを有するものは、企業担当者にはほとんどいないでしょう。だから初期フェーズということなのですが。

とはいうものの、企業によってはコンサルタントを雇うことが現実的ではない、ということもあるでしょう。外部の助けをなしにCSRを進めるというのであれば、担当者自身がコンサルタントに変わって推進役となれるよう、時間をかけてできる限りの情報収集(セミナーや研修への参加、書籍購入など)を行いましょう。

CSR活動をアウトソースに頼らないインハウス化自体は良いことですが、まず外部の有識者に入ってもらって土台作りしてもらった方が良いのでは?というケースにしばしば遭遇します。大事なのはサステナブルな企業文化を作ることであり、未熟なCSR担当者を集めて作業方法だけインハウス化しても、それは叶わぬ夢にしかなりません。

今の時代は知識のアップデート量が多すぎます。各種メディアでCSR/ESG/CSV/サステナビリティなどの単語を見ない日はありません。1人の企業担当者として、日々新しい情報が生まれる世界中のCSR/サステナビリティの動向をキャッチアップするのは不可能です。日本企業特有とされる「中途半端な自前主義」が最大の足かせになっていることも少なくないでしょう。ただし、最終的にはCSR活動のすべてはインハウス化しましょう。CSRは事業そのものなのですべての従業員が主役になるべき。アウトソースはまず1〜3年間をめどにしましょう。

1つの原因として、その重要性にトップマネジメントが気づいていない、ということがあります。私は年間・数件程度で、会長・社長を含む役員会等で研修講師をさせていただいています。そんなに多くないですが、何かを変えないとマズいと、専門家を読んで社長の知識をアップデートしようと努力している企業もあり、そういうところはCSR活動のスピード感が他社と全然違いますね。

私たちは大抵のことについて悪化しているときに変化に気づきやすいです。しかし、残念なことに、すでに悪化し始めたものを止めるのは難しいのです。だからこそ、ルーティンワークに埋もれないよう、定期的な第三者評価等を受けて、自分のいわば健康状態をチェックしなければならないのです。改善できないレベルまで悪化する前に。外部リソースを使いすぎるのもダメだし、全部自前でやるとリスクを軽視しがちになります。このあたりは素直にコンサルティング会社に相談すればいいと思います。

全体最適と部分最適

インハウスの課題と同じくらい難しく、影響が大きい課題として「全体最適と部分最適」の話があります。

たとえば、CSRのトレンドは「点」で追ってはいけません。サステナビリティ領域は、中長期にわたる施策も多くあり、短期的なトレンド追求は“木を見て森を見ず”になりがちなので注意が必要です。トレンドを俯瞰してみて、現在進行形の「社会のマテリアリティ」を把握するようにしましょう。トレンドからエッセンスを抽出するには、その文脈(背景)を知らないとできませんからね。トレンドを深追いすると全体最適の成果を阻害する可能性があるのです。

というのも、組織全体のCSR活動を俯瞰できている人は、日本にほとんどいないのではないでしょうか。中小中堅企業だと視座の高さ(グローバルやメガトレンドへの対応)がないし、大企業はCSR活動が分業化されており、事業全体をみる高い視座でやれる人がいない。本来はCSR担当役員がそのポジションに立つべきなのでしょうけど、CSR担当役員がCSRのことを知らなさすぎて物理的に俯瞰できないという…。こんな状態の企業は、日本の時価総額トップ100社でもいくつもあります。全体最適で設計したり、俯瞰的に見られるようになるには、CSRの基礎知識とグローバルトレンド把握が絶対に必要になるんですよね。

つまり、CSRをコントロールできていない会社が多いのです。すべて後手後手の対応で、社会やステークホルダーに振り回されっぱなし。リスクも機会も自分たちでコントロールできないとかかなり危険な状態なのに、経営層がそのリスクに気づいていないのです。たまたま、まだ顕在化していなだけなのに。だから自動車メーカーが10年を超えて現場で不正が起こるし、起きてから本気でコンプライアンス研修をやるのです。評価機関に評価されるためのCSRをしていたら、足元がダメでした、と。

とはいえ、CSR活動に正解なんてないのも事実。きれいなサクセスストーリーなんて聞いても行動できないし、企業ごとにCSRの捉え方に差がありすぎますから。そもそもCSR活動なんて10個の施策をやって1個でも、将来的に大きな成果になればいいという世界。最初から成果を求める経営者や担当役員がいますが、短期で上手くいくことなんてまずないですよ。

役割の変化を受け入れる

2003年のCSR元年より15年以上がたち、CSRの普及と定義の拡大によって、CSR担当者の仕事の範囲は大きく広がっています。

最近は外部評価の浸透により、CSR活動だけではなくその情報開示も重要なタスクとなり、CSR担当者はまさに部門横断の全ステークホルダー対応担当者となりました。そして今は、CSR活動を通常の事業活動にどう組み込むのか、それを考えるフェーズにきています。

今までのCSR担当者の大きな役割は「CSR報告書を作る」でしたが、これからは「CSR/サステナビリティの考え方を理解して社内外に伝えられる人」と置き換えるべきなのかもしれません。報告書の制作実務は広報やIRおよび経営企画のような部門がサポートし、CSR担当者はすべての業務のCSR側面にコミットメントしていく。こんなイメージです。

例えば「CSV/ソーシャルビジネス」や「SDGsと経営の統合」は、CSR担当者より、マーケティングや経営企画部門が担当すべきです。事業部門の何の権限もないCSR担当者は逆にそこまでできませんから。特にSDGsがでてきてからCSR担当者の役割が大きく変わってきており、2010年代後半はまさに激動の時代となっています。

まとめ

一部、ダラダラとしたまとめになってしまいましたが、言いたいことは「部分最適を全体最適の施策と勘違いするな」ということです。CSR活動のひとつの側面だけみて、コストパフォーマンスを優先した結果、まったく成果が生まれなかったなんて例はたくさんあります。

CSRの事業的側面も含めてですが、まずは全体を俯瞰できるノウハウなり組織を作ること。そして、ステークホルダー・エンゲージメントのためのオペレーションを行うこと。このあたりがCSR担当部門の運営ポイントの1つになりそうです。

自社におけるCSR担当者の役割は何か。改めて明文化すると、新しい視点が生まれるかもしれません。

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