SDGsレポートガイドライン

以前から告知されていました。国連グローバルコンパクトとGRIの夢のコラボによる、SDGsレポーティングガイドが先日発表されました。

>>New guidance for companies to report their impact on the Sustainable Development Goals(英語)

「Integrating the SDGs into Corporate Reporting: A Practical Guide」(SDGsを企業報告に統合するための実践ガイド、以下:SDGs実践ガイド)が今回の資料です。上記ページからダウンロードできます。文字通り、SDGsを企業経営の軸にして目標設定・進捗確認・報告等をおこなうためのガイドです。

これもどこかが公式日本語版を発表してくれると思いますが、速報として、一旦記事にまとめておきます。続報があれば、別途記事にします。

SDGs実践ガイド

今回発表されたSDGs実践ガイドを使い、アクション・アウトカム・インパクトなどについて報告することで、企業は様々なステークホルダーの情報ニーズに対応することができるとしています。昨今のトレンドを考えれば、上場企業のレポートでSDGsにまったく言及しないことはありえませんよね。

また、ネガティブインパクトをポジティブインパクトで相殺した形で報告は良くないとの指摘も。例えば、環境負荷の高いビジネスをしながら地域貢献の慈善活動をする、というようなものでしょうか。人によっては「免罪符的CSR」なんて揶揄されることも。厳密なインパクトを考えると、そもそもCSRにオフセットという考え方はないことに気づきましょう。

SDGs実践ガイドでは、新しいレポーティング・ガイドラインを目指すではなく、国連グローバル・コンパクトの10原則、ビジネスと人権に関する指導原則、GRIスタンダードなどに基づいていたものとなっています。ですので、企業担当者の皆さんは焦らず、今まで通りGRIスタンダードを参考したレポーティングができていれば、まずはいいということです。秋には2019年発行版の統合報告書やCSR/サステナビリティレポート作成の準備入ると思いますので、その時にじっくり読み込み、対応していきましょう。

雑感

まぁ、しかし、中身を見ると以前から言われていたり、戦略論としても特に変わった側面はほとんどないように感じました。すごく画期的なガイドではない印象。(読み込むと印象も変わる?)

私のブログで何年も前から重要だとしていた、KGI/KPI策定におけるフレームワーク「SMART」も、オフセット的な考え方はそもそもダメだと指摘も、ポジティブ・ネガティブの両面提示が重要とも書いてましたし(私は預言者!?)、CSR先進企業であれば、すでに実行している部分も多いでしょう。

ちなみに、SDGsが「2030年までに1,000兆円以上のビジネス機会を創出する」と言われていますが、SDGs達成には「毎年500兆円以上」が必要だとも言われています。いつも思うのですが、私の算数が間違いなければ支出のほうがはるかに大きいように感じます…。これらを企業サイドだけで負担するわけではないのですが色々感慨深い所があります。

改めて思うのは、ビジネスサイドからの視点をCSRにもっと組み込まないといけないということです。別にCSVとか限定的な意味ではなく、「SDGsをマテリアルに見る」「SDGsを企業経営全体の要素として見る」「SDGsで競争優位性の関係性を見る」という視点です。

SDGsの話題になると「森を見て木を見ず」(総合的なSDGsを意識しすぎて行動を軽視してしまう)や、「木を見て森を見ず」(SDGsを日常の延長線上にとらえてしまい近視眼的になってしまう)の両極端な人が出てくるので、これをどうしたら解決できるのか考えています。ビジネスになるからと“素人が、ど素人に教えている”ような現状もあるわけですが…個人相手ならいいのですが…企業担当者相手に間違ったことは教えないで…さりとて私もSDGsの専門家というほどではないので…でもSDGsの本を書いてるくらいのレベルではありますが…。

まとめ

今回の「Integrating the SDGs into Corporate Reporting: A Practical Guide」(SDGsを企業報告に統合するための実践ガイド)では、思ったより“当たり前のこと”が書かれてました。しかし、この「当たり前のことを、当たり前にやる」こと、そしてそれを継続的に行うことがどれだけ難しいことかは、理解しているつもりです。

CSR評価が高い企業は「難しく特別な活動が出来ている」というよりも「当たり前のことを当たり前じゃない品質で出来る」企業だったりします。CSR活動では、奇抜/特異な成果を求められることは基本的になく、当たり前のレベルを引き上げていくことが、外部評価向上の一番のコツだと思いますよ。地道に、ただしハイレベルで。

なんにせよ、マテリアリティの概念は、昨今のCSR活動でもレポーティングでも重要とされていましたが、さらに注目度が増しそうです。マテリアリティとKGI/KPI策定の制度を上げるためにも、ガイドをうまく利用したいものですね。以下は参考記事です。ぜひチェックしてみてください。

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