CSV事例・バリューチェーン

CSVにはいくつかアプローチ方法がありますが、今回は「バリューチェーン」に注目していくつか事例を紹介したいと思います。

CSVにおいてポイントの一つとして「1社でやらない」ということがあります。

どういうことかと言いますと、1社で経済・社会・環境というトリプルボトムラインに貢献できるビジネスをしたところで、社会の問題は解決しないし、インパクトが小さいからステークホルダーのメリットもあまりないということで、社会価値を築くのが難しいからです。

だから、CSVとしてビジネス上のバリューチェーンに注目し、様々な企業、時には競合を巻き込みながら、一つのCSVプロジェクトを行うことで、成果につなげる必要がある、と。

もちろん、自社の事業プロセスを再定義して1社で行うCSV活動が悪いというわけではありません。ただそれだけではインパクトにつながらない可能性もありますよ、ということです。

そこで本記事では、CSVの評価とそのほかCSV的なビジネス展開の事例をまとめます。

総合評価の高いCSV企業

味の素|サステナビリティ
積水ハウス|CSR・環境活動

今までは、CSV的な理念を掲げる企業は戦略的側面“だけ”が強く、全般的なCSR活動が手薄になっている例が多くありました。つまり東洋経済のようなCSR総合評価ではCSV推進企業は評価されてこなかった、とも言えるのかもしれません。

そんな状況の中、CSV先進企業でもある味の素・積水ハウスなどが、2017年のランキングでトップ20に入ってきているのは、ある意味象徴的な出来事なのかもしれません。当然、企業が努力した結果というのはあるでしょう。

※参照:最新版!「CSR企業ランキング」トップ700社(2017)

事例:トヨタ

トヨタ自動車は新興国で廃車リサイクル事業を展開する。独自の基準を満たす「認定工場」に対し、再生可能な資源を取り出す技術を供与する。100社程度の認定を目指す。トヨタグループの販売台数は2015年まで4年連続で世界首位。新興国でも新車の製造・販売から廃車処理までを一貫して手がける体制を整え、環境負担を軽減する持続可能な自動車社会の実現につなげる。
トヨタ、新興国で廃車から資源回収 100社と協力 持続可能な車社会狙う

製造業といっても様々な企業がありますが、自動車系企業で製造においての廃棄物処理は適正に行っていても、新興国で販売後の商品ライフサイクルの最後となる商品廃棄まで関わるというのは少ないように思います。

企業の環境活動には当然上限がありますが、社会全体でみると自社での製造・販売以外の環境負荷を減らす活動をすることで、よりインパクトのある活動となります。今回でいえばバリューチェーン内の話であり、まさにCSV的な事例の一つと言えるでしょう。

事例:キリンビールとアサヒビール

競合が手を組んでモノを運ぶ時代へ—。キリンビールとアサヒビールは、2017年1月から関西~北陸間で鉄道コンテナ路線を共同利用する。両者は、石川県金沢市に共同配送センターを開設し、商品を、JR貨物のコンテナ列車に載せて北陸方面へと運ぶ。新設する共同配送センターの運営は、日本通運。両社は、アサヒビール吹田工場とキリンビール神戸工場でつくられた商品を、関西~北陸間の往復輸送量の差によって生まれる“空コンテナ”を活用し、鉄道で輸送する。
ビール競合2社、ひとつの貨物列車でいっしょに運ぶ…関西→北陸で2017年から

このプログラムを通じ、年間1万台相当の長距離トラック輸送を鉄道コンテナにモーダルシフトし、年間約2,700トンのCO2削減を実現する見込みということです。ニュース自体は去年の話ですが、最近の進捗が拾えなかったので、こちらの記事を紹介しておきます。

この事例は、競合と事業コストおよび環境コストを共同で削減するという、珍しい枠組みでの実施になります。

「社会のため」という大義名分は、時に競合をも動かします。CSV的な取り組みですが、どの業界でもできるというわけでもなさそうなので難しいところです。

事例:Apple

Appleは昔からコーズマーケティングをしています。Appleサイドとしては、コーズマーケティングで儲けよう、というよりは自然にチャリティができないか、と考えると、通常の事業展開の中で少しだけチャリティにつながる仕組みを作ろう、ということのようです。

Appleの創業者であるスティーブジョブズ氏はチャリティが大嫌いな人でしたが、このコーズマーケティングだけ以前から実施していました。CSV的というか、ある種のソーシャルビジネス的なものでもあります。

参考記事
Appleが直営店のリンゴを緑に光らせる意味
AppleのCSR! 世界エイズデーのコーズマーケティング事例
2016年に注目されるコーズマーケティング事例3選
コーズリレーテッドマーケティングは富の再配分で効果はないのか

国内でもコーズマーケティングをもってして「私たちはCSVしてます!」という企業が何社もあります。売上比率で1%にも満たないごくごく一部の商品だけで、企業全体としてCSV推進しているといわれると、理解が難しい場合もあります。ほかの99%を変えないと社会は変わらんよ、と思うのは私だけではないはず。

また、コーズマーケティングはAppleのように相当な規模での実施の場合はCSVとなりうるのですが、そうでない場合は、バリューチェーンに注目した取り組みを検討したほうが、社会的インパクトはよさそうです。

まとめ

「本業でCSR」という考え方があるように、CSVで一番実施しやすいのが、3つのアプローチでいうところの「製品・サービスによる社会課題解決」です。初歩的なステップでは「製品・サービス」を軸する考え方のほうがわかりやすいです。コーズマーケティングなどです。

今回は、バリューチェーンに関するアプローチの事例も紹介しましたので参考にしてみてください。結局のところ、どれだけ今のビジネスをソーシャルビジネス化できるのか、という視点が重要なのかもしれません。

今後も定期的に、主に国内展開のCSVの良事例をまとめて紹介していこうと思います。

関連記事
ほとんどのCSV(共有価値創造)経営論で語られない企業視点とは?
CSV推進でCSR活動を失敗してる企業って多いよね?