CSR障害者

企業の障害者対応

企業の障害者雇用に過度なメリットを期待するのは、良い悪い?

企業の障害者対応となると、CSR的には法定雇用の「就労支援」のような動きがメインかと思います。QOL(生活の質)向上などの活動は、CSRというよりはソーシャルビジネスやNPOなどのソーシャルセクターの活動のほうが大きいかもしれません。

ただし、それらの企業のCSR活動は、「ソーシャル・インクルージョン」(社会的包摂)の理念に基づくものではなく、障害者雇用等の法律があるから実施しているという面も現実的にはあるでしょう。

雇用に関する話は、厚生労働省の5年ごとに行われている「障害者雇用実態調査」(前回は平成25年)や、内閣府の「障害者白書」(最新版は平成28年)なども参考にしてみてください。

本記事では、雇用問題だけではなく”感動ポルノ”と呼ばれる、「ハンディがある人が頑張っているのは美しい」(もしくは同情や感動を過度に求める)という事例が世界的に増えていることについて事例をまとめます。

当事者の方でも形はどうあれ注目されることは良いことと割り切れる方がいる一方、過度な同情や障害者という”コンテンツ”として扱われることに憤りを感じる方もいます。実際のところはどうなのでしょうか?

企業の障害者対応

優秀な障害者

ところが今、ある異変が起きてるそうです。これはある大手企業の関係者から聞いたのですが、(その会社は障碍者専門の特例子会社を持っています)今現場で「有能な発達障害者」の奪い合いが起きているそうです。そもそもトイレ掃除を外注すると高くなるので、できるだけ「有能な障碍者」を確保したい。で、他所の会社から、「有能な障碍者」を高待遇で引き抜くというのです。
一億総活躍社会⁉︎「発達障害労働者」争奪戦

この話が国内のすべての企業にあてはまるとは思いませんが、僕も似たような話は聞いたことがあります。ケースバイケースでしょうけど、障害者だろうが、健常者だろうが優秀な人は一人でも多く欲しいですよね。

障害者対応

今月から法律で“障害者差別”が禁止されましたが・・・あなたは対応できる?

先日、「Yahoo!ニュース個人」に寄稿した僕の記事です。障害者の現状やギャップなどをまとめています。一般読者向けなので、かんり読みやすくまとめられていると思います。

障害者の給与

生活保護を受けているかどうかを尋ねたところ、「受けている」が11%、「受けていない」が89%でした。「生活保護を受給していない」と答えた人に障害年金に作業所から受け取る工賃などを合わせた年収の総額を聞いたところ、61%が「100万円以下」と答え、合わせて98%が「年収200万円以下」という結果となりました。
障害者の60%余 年収100万円以下

障害者雇用でいつも話題になる給料の話。障害者の通常業務は付加価値を生みにくいので、給料も安くていいよね、と。ロジックはわかるのですが、これが正解なのでしょうか。

つまり、付加価値を生みにくい環境というのは障害者も健常者も関係なく、企業側の価値創造の仕組みを構築できていないのが問題なのではないかと。

ソフトバンクの事例

ソフトバンクは5月、障害者を雇うことを目的にした「ショートタイムワーク制度」を取り入れた。障害者の法定雇用率は週20時間以上働くことが条件のため、長時間働けない人の就業はより難しい。短い時間でも任せやすく、精神的な負担になりにくい仕事を洗い出し、週20時間未満でも雇う。
障害者、週20時間未満OK ソフトバンクが雇用

ソフトバンクの取り組み事例です。

記事では、『障害者の雇用には週20時間の「壁」があり、障害者雇用促進法で企業や地方自治体は一定以上の割合で障害者を雇用するように義務付けられており、民間企業は2%だ。労働時間が週20時間未満だと算定の対象にならない』ともしており、ソフトバンクの実験的な先進事例となっています。

公正と平等

合理的配慮は「ずるい」のか

「合理的配慮」については、前述した僕の記事を参考にしていただければと思います。当事者側は障害者が社会で生きて行く上で何を「公正と平等」と考えているのでしょうか。視点は学びが多いです。

障害者が健常者を受け入れる?

ダイバーシティにおいては多様性の受容と活用が重要だということはよく言われます。私もこの意見には賛成です。ただし、多様性を受容するということは、障害者を例にとって言えば、健常者が障害者を受容するのはもちろん、障害者が健常者を受容することでもあります。
日本人と外国人であれば、日本人が外国人を受容するのは当然のうえで、外国人にも日本人を受容してもらわなければダイバーシティが実現しているとは言えないはずです。
わかりあえないことを、わかる。ダイバーシティという言葉の意味と罠。

そうそう。ダイバーシティって双方向だと思います。考え方が異なる人と一つの答えを出すときに、双方がお互いに歩み寄る必要があります。

障害者に対する理解促進

■障害のある従業員に対する理解・配慮の程度
理解・配慮が「かなりある」「ある程度ある」と答えた企業は8割以上。「かなりある」と答えた割合は、従業員数が多い企業のほうが低い。

■障害のある従業員に対する理解・配慮を促すことの重要性
重要よ答えた企業は92%。全従業員数や障害のある従業員数が多い企業で重要と答えた割合が特に高い。

■障害のある従業員に対する理解・配慮を促すための取り組みの現状
研修等を実施した割合は23%、マニュアル等を配布した割合は11%にとどまる。研修等を実施・マニュアル等を配布した対象者は「障害のある従業員の上司」が最も多い。

引用:上場企業に聞いた『企業内の障害者に対する理解促進の取り組み』(第一生命経済研究所、2015)

障害者雇用に対する取り組み姿勢

■雇用している障害者の数
障害者を雇用している割合はどの障害種別においても8年前より上昇。 特に精神障害者では42ポイント増。

■障害者雇用に本格的に取り組み始めてからの年数
取り組み始めてから10年に満たない企業が過半数。従業員数の多い企業のほうが、取り組み始めてからの年数が長い。

■障害者雇用の方針
障害者雇用を「増やす」と答えた企業は68%であり、8年前より14ポイント増加。実雇用率(雇用している障害者の割合)が法定雇用率以上でも障害者雇用を「増やす」と答えた企業は多い。

■障害者雇用等にかかわる考え方
「ダイバーシティ」という考え方を重視している企業の割合は67%であり、8年前に比べて30 ポイント近く増加。

引用:上場企業に聞いた『障害者雇用に対する取り組み姿勢の現状と変化』(第一生命経済研究所、2015)

障害者と感動ポルノ

パラリンピックに出場してがんばる障害者はもちろん賞賛に値するが、これを国威発揚に利用しようという匂いがするのは不穏なことである。また、パラリンピックにに出場できる障害者一握りであって、大多数の障害者は「ごく普通の人」なのである。
<パラリンピック報道の氾濫に危惧>パラリンピアンは一握り、大多数の障害者は「ごく普通の人」

当たり前ですが、メディアに登場する著名な障害者の方々の多くは非常に稀有な存在です。これは健常者と同じです。障害者なら何か特別な”ストーリー”を誰もが持っているというのは幻想です。障害者だろうが、健常者だろうが、99%の人は普通の人間ですから。

「障害者=感動の対象」というのが全面に出すぎるコンテンツには要注意です。

障害者は「感動ポルノ」

障害者は「感動ポルノ」として健常者に消費される–難病を患うコメディアンが語った、”本当の障害”とは

これはぜひ引用記事を読んでいただきたいのですが、障害者はもはやコンテンツ(モノ扱い?)である、みたいな現実があります。これは世界中で起こる傾向なようです。

これもケースバイケースでしょうけど、当事者の方がどのように考えているかを知るためのヒントになります。

障害者を見て感動するって?

障害者を傷つける、私たちの「感動ポルノ」の刃
「障害者=感動、勇気をくれる」はおかしい? NHKが「24時間テレビ」放送日に生放送で討論番組

テレビなんかは特に「障害者はかわいそうでしょ?でも頑張ってるんだよ?だからもっと同情・感動して!」って見せ方になりがち。それで当事者が救われるのであればそれはそれでいいのかもしれませんが、僕は正直気持ち悪いです。そこまで感動を求め消費すべき”コンテンツ”なのか、と。

障害者は、気の毒で、かわいそうで、感動する体験を持っていて、哀れんで同情すべき存在なのでしょうか?僕には理解できません。健常者というカテゴリーの人だって、何かしらの持病(肉体的・精神的ともに)をもっていることがほとんどだし、誰だって誰かに助けられて生きているわけです。

「かわいそう」という単語で人を判断している時点で思考停止です。その考え方自体が「かわいそう」なのかも。難しい話です。

まとめ

「かわいそうな人を救う」や「マイノリティ支援」や「格差是正」はCSR・社会貢献の格好のネタです。これは良くも悪くも事実です。

企業としては法対応はもちろんのこと、サポートする当事者の方への配慮を最大限に行う必要があります。

支援しているつもりが逆に負担をかけている、なんて最悪な結果にならぬようお気をつけください。ポイントがあるとすれば……基本的なことですが、当事者の方ときちんと話をしニーズを汲み取ることでしょうか。ステークホルダーとのエンゲージメントは、CSR活動の基本中の基本ですよ!

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