CSRコンサルティングの前にコンサルタントが指摘したい「事例くれくれ現象」

CSRコンサルティング

CSRコンサルティングの壁

コンサルタントとして、CSR/CSV/社会貢献に関するコンサルティングの現場に入ると100%聞く言葉が「それの事例ってありますか?」です。

もちろん、情報提供は僕のメインのタスクの1つなので紹介させていただきます。実際の社名だけではなくフレームワークや模擬事例も含めて紹介することのほうが多いのです。ですが、そこで問題だと感じるのは「聞いて終わり」なこと。メモもするし、資料も読むけど、ベストプラクティスをマネするわけでもなく、経営戦略に取り込むわけでもなく…。

2015年も何本もセミナー講師をさせていただきましたが、参加してくれた企業担当者の満足度が高い場合が多くありがたいのですが(根拠はアンケート)、本気でその通りに行動する企業は少ないです。

なぜ意欲があり行動力があるような人でも「事例くれくれ」で終わってしまうのか。僕の考えをまとめます。

事例くれくれ現象

「事例くれくれ君」を「過去の他人の実践事例をやたらと知りたがるのだけれども、どの実践事例を見ても聴いても不満を述べるだけで、前に進もうとしない人々」と定義しましょう。
「事例くれくれ君」の困ったところは、どんな事例を見ても不満足でアリ、かつ、前に進もうとしないことにあるのです。どんな事例を示しても、前に進みません(笑)なぜか?それは、事例くれくれ君が「事例から学び、物事を創り出す技術やマインド」を持ち合わせていないからです。
「事例くれくれ君」にご用心!?:先行事例をいくら聴いても無駄な「コピペ思考」!?

引用記事では、その問題点を「生もの」だからでは、としています。「生もの」とは、他社や過去の事例は参考にはなるけど、実践するための「場所・時間・対象・文脈」が絶対異なるはずであり、まったく同じ事例など一生起き得ない、という点で「生もの」と表現しているようです。まったくもってそのとおりです。

ただ、僕としては、アドバイザリー業務で事例を出したり調べたりする側なので、あまり突っ込むと、自分の仕事を失いかねないのですが…。ですが、ここは日本社会のために一言申し上げますが、あなたにとって必要なのは「事例」ではなく「事例のエッセンス」ですよね?

CSRのベストプラクティス

あとは、そもそも、「CSR活動のベストプラクティス(ベストケース)」ってそこまで多くないです。つまり“前例がない(ほとんどない)”ってことです。

欧米と比べて事例の数が圧倒的に少ないので、日本の事例はいつも同じ事例が紹介されます。これは色んなCSRセミナーにいくとわかりますね。

ほとんどの企業では、他社や過去に事例を求めますが、前述したように「生もの」である事例をマネすることはできません。ですので、僕のセミナーでは事例紹介はあまりしません。意味がないからです。

世界で、CSRで結果を出している企業に絶対的に共通する考え方が1つだけあります。なんだと思いますか?これは「実践したことがある」ということだけ、です。

世界のCSRトップクラスのネスレやユニリーバでさえ、昔はひどい経営やサプライチェーン・マネジメントでNGOから叩かれてましたよ。それでも、変わろうと本気で行動を起こし、今では世界のトップオブトップの企業となりました。

日本でも評価の高い企業は、行動を起こしてます。PDCAをまわしています。そうやって何年もかけて前に進んできたのです。社長も外部のプレッシャーに打ち勝つために本気でCSRに取り組みます。「来年からCSRをちゃんとしていきたいと思います」というフェーズの会社とは、意識も失敗の数も桁違い。

そんなコンテクスト(背景・文脈)を知っていれば、何もマネできないのは当然なのです。事例は、自社のCSR課題の解決に、ほとんど寄与しないと、早く気付かなければなりません。

誤解のないようにしていただきたいのですが、これからCSR活動を“本気で進めていく”という企業が悪いというわけではありません。現実問題として、世の中の99%の企業はコチラですから。そうではなく、事例だけ学んで、理論をこねくりまわすより、まずは行動を始めましょうよ、ということ。

行動を始めるのに障害になるのは何でしょうか。人?予算?時間?。では人だったとして、何ができたらその問題を解決できるのか?と1つ1つ行動し問題を解決していくほかないでしょう。

まとめ

上場企業や大手企業では、情報収集に熱心なCSR担当者(専任・兼任問わず)が多い印象があります。しかし、セミナーに参加したり書籍を購入したりして情報ばかりを収集し、結局、実務的には評価を得られない企業も多い気がしてます。

CSRってのは、企業の将来的な目標ではなく、成長の手段でしかありません。日々の事業の経済的・社会的インパクトを高めていく過程こそがCSR。

さて、本記事をお読みのあなたは「事例くれくれ君」で終わらないように、お気をつけください。

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