競争優位のCSR戦略(戦略的CSR)を学ぶための4つのレポート

CSR経営

競争優位のCSR戦略

マイケルポーター氏の「競争優位のCSR戦略」(戦略的CSR論、2006)の発表から約10年。世界のCSRは経営戦略として認知され、CSR経営としてマネジメント層に理解されるようになったのでしょうか?

CSRの競争戦略というと、CSRにおける「コーズマーケティング」や「攻めのCSR・守りのCSR」(CSRのリスクと機会)という側面に注目が集まりがちです。しかし、経営という視点から考えれば、マーケティング論や概念論ではなく、「中期経営計画にCSRが組み込まれる」ことが一つの戦略としてのゴールだと最近感じています。

ですので、CSR経営の具体例は何かと言われれば、企業の経営戦略にCSRの概念が組込まれることが挙げられます。CSR経営の多くの問題点は、単純にポーズだけで経営戦略になっていないということです。

というわけで、改めて戦略的CSRについての統計・レポートから現状をまとめます。

CSRのプラスの影響

社会的企業

2014年(平成26年)時点の我が国における社会的企業の数は20.5万社(11.8%)、社会的企業の付加価値額は16.0兆円(対GDP比3.3%)、有給職員数は577.6万人。さらに、社会的企業の社会的事業による収益は10.4兆円(17.1%)。
我が国における社会的企業の活動規模に関する調査

究極的なCSR経営って、ソーシャルベンチャーとか社会的企業と呼ばれる企業群の経営スタイルだと思います。というわけで内閣府のデータをピックアップしてみたものの、20万社もあるんですね。

CSR経営とはCSR戦略と経営戦略の同期を指すことが多いと思いますが、大手企業のCSR担当や経営企画担当者はソーシャルベンチャーに学ぶべきことは多いと思います。

効果的なCSR戦略

2015年6月にアミタが実施した調査では、多くの日本企業が、必ずしも経営上効果的な環境・CSR戦略を立案・実行できていないという実態が明らかになりました。
自社の環境戦略における課題点を尋ねた設問では、回答者のおよそ半数が、「(環境取り組みが)守りの対策・対応レベルに留まっている」、「将来的な環境制約や社会動向を十分に予測・考慮できていない。」と回答しました。次いで「経営・事業戦略や商品・サービス等の開発戦略とリンクしていない。」、「戦略立案のための人員が不十分である。」などの回答も多く見られました。
日本企業の環境・CSR戦略取り組みの実情~125社のアンケート結果から~

アミタさんのセミナーに参加するレベルの企業でこの程度ですか。良くも悪くも。僕は「戦略立案のための人員が不十分である」という回答が一番CSR経営の実態を示している気がします。

能力的(経験)な部分で不足しているのか、環境・CSRに人的リソースを投入しておらず不足しているのかわかりませんが、興味深い動向ではあります。環境・CSR担当になって1〜3年の人に経営戦略を含めたCSR戦略を作れと言っても無理な話だし、現実的には外部リソースをうまく活用するしかないですよね。

CSRのブランド価値

・企業の総価値のうち、CSRはブランド力や評判を育み、守り、最大11%まで高めることができる。
・過去15年間で、優れたCSRプログラムを展開した企業は、平均して株主価値を12億8,000万ドルまで増加させている。
・ステークホルダーと強固なつながりを持つ企業は、価値評価を40~80%増加させる可能性がある。
・企業責任は社員に対して多大なプラス影響を与える。CSRに強くコミットしている企業は、社員の生産性を13%まで高めるほか、離職率を最大50%低下させることができる。責任ある企業で働くために社員は5%の減俸を厭わないとしている。
戦略的CSRは企業価値を11%押し上げる

この調査とは違いますが、アメリカかどこかのレポートで「CSR推進によってBtoC企業は10%程度価値を高められる」みたいなデータがあったと思うので、妥当な調査データだと思います。

あと、記事にあるとおり、これらの効果は最大値であり、優れた形でのCSRプログラム展開をしなければなりません。ステークホルダーへ向いていないCSR経営では誰も幸せになれませんからね。

CSRを見る消費者

持続可能な製品には少し高いお金を払ってもよいと考える消費者は全体の66%にのぼり、2013年調査の50%、昨年の55%から上昇している。世界のあらゆる地域で、所得水準や製品カテゴリーを問わず、自分の価値観にあったものには余分にお金をかけてもよいと考える消費者が増えている。
年齢別の傾向の見てみると、持続可能な製品にお金をかけてもよいとする人が最も多いのは、1980年代から2000年代初頭に生まれたミレニアル世代の若者だ。2014年調査では2人に1人程度であった回答者の割合が、今回はほぼ4分の3(73%)にまで増えている。
約7割の消費者「持続可能性を押し出したブランドにお金をかけてもいい」

ニールセンのレポートですが、調査結果について、「社会的責任を果たし、環境にもやさしいと若者に印象づけられたブランドは、市場シェアの獲得機会に加え、今後大きな購買力を持つことになるミレニアル世代との強力なつながりを築くチャンスをも手にしている」としています。

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まとめ

CSR経営によって、経済価値ひいては「企業評価向上」や「企業価値向上」はできるのか。

CSR関連セクターの人は、CSR戦略のメリットを企業に提案・アドバイスしますが、ごく一部の成功事例だけで、それを良しとしてよいのでしょうか。僕は現行の、上場企業・大手企業のCSR経営やCSR戦略に対して、色々言いたいことはあります。過度にプラス面が強調されたデータばかりをコンサルから提示され、本質的なCSR経営をできていない企業が多いのではないかと。

ただ、レポートの数字は事実でしょうし、社会からのニーズが増しているのは紛れもない事実です。

CSRコンサルタントの1人として、矛盾をはらむ現状を打破できないかとモヤモヤする場面もあるものの、ここはブログですし、自身の未熟さを棚に上げながらも、色々な情報提供をまずはしていこうと無難な結論に至った、今日この頃です。



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