CSRマネジメントにおけるレピュテーションリスクと環境リスク

環境リスク

レピュテーションリスクと環境リスク

CSRはリスク&オポチュニティと言われており、マネジメント領域としてはリスクがより重要視されます。

昨今は事業リスクを見誤り、重大なレピュテーション毀損につながる事例が不祥事を含めて後を絶ちません。今一度、CSR担当者は事業リスクを見直す必要があるでしょう。

そこで本記事では、環境リスクの中でもあまり話題にならない「水リスク」を中心に、その考えをまとめます。

リスクマネジメントの要訣

金融機関では、エンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)の取り組みが進められている。最近、欧米の保険会社では、持続可能性のリスク管理(Sustainable ERM, SERM)への取り組みが始まっている。これは、リスク管理を中核業務として行う金融機関、特に、長期間に渡って保障を行う保険会社で注目されている。今後、日本でも関心が高まるものと考えられる。
SERMの考え方は、リスク管理の領域を経済面に留めず、環境、社会、企業統治にまで拡張させている。また、幸福状態や人権といった従来のリスク管理では捉えてこなかったものにまで、対象の幅を広げている。SERMの検討は、欧米を中心に進んでおり、今後の動向には、注視が必要と考えられる。
持続可能性のリスク管理-従来のリスク管理とは何が違うのか?

確かにリスクは経済面だけに存在するとは限りませんからね。

CSRマネジメントとして注意したい点は、リスクは多様であり、通常の事業活動が及ぼす影響の“先”にもリスクがあるという点。つまり、ステークホルダーの直接的な影響があるのは当然として、サプライチェーンの中でほとんど見えていないが、企業に重大な影響を与えるリスクが存在するということです。

昨今の不祥事を含めて、企業への情報開示や透明性を求める世間のニーズとも重なり、ステークホルダーは企業のリスク(不祥事)に敏感になっているのは間違いありませんから。

NPOのランキング

2010年に名古屋で開催された「第10回生物多様性条約(CBD)締約国会議」をきっかけとして、日本の企業の間でも生物多様性の保全や配慮が独立した取り組みテーマとして語られるようになりましたが、まだ多くの企業では生物多様性は自社事業が直接関係する環境問題とは位置づけられていないことがこの調査で明らかになりました。
報告書『環境報告に見る企業の生物多様性取り組み』

環境系NGOのWWFのレポートです。調査対象は、東京証券取引所第一部上場企業(内国株)計1,818社。

たしかに、環境領域の情報開示は数年前より格段に上がっている印象はありますが、生物多様性だけを考えれば、ほとんどの企業は本質的なアプローチができていない気がします。いわゆる「社会貢献活動」の枠を出ない取組みが多く、事業と関連する環境問題としての活動になっていないと、このレポートでは指摘されています。

こういう影響力のあるNGOに指摘される前に、具体的な対応をしたい所ですが、かなり難易度の高い部分もありますので、まずは開示を前提としたCSRマネジメントおよびPDCAの整備が必要になる、ということだと思います。このあたりはレピュテーション・リスクにも大きく関る問題ですね。

環境リスク(水問題)

気候変動(地球温暖化)によって、食物が取れなくなるなどの問題はあるにせよ、長期の話でイメージしにくい場合も多い。直近では「水問題」などがよくその例として挙げられます。

水リスクへの備え

コーヒー1杯、ハンバーガー1つには、どれくらいの水が使われているか。コーヒー1杯は125ミリリットルだが、原料である豆の栽培には水132リットルが使われる。ハンバーガーはどうか。バンズをつくるには小麦を育てなくてはならないし、牛を育てるにも大量の水を使う。牛が水を飲む以外に、飼料を育てるにも水を使うからだ。こう考えるとハンバーガー1つに2400リットルの水が必要になる。これらはほとんど海外の農場で生産されており、そこで干ばつが起きると原材料が高騰する、あるいは手に入らなくなる。
スマホは910リットル、自動車は6万5000リットル 企業に求められる水リスクの備え

サプライチェーン・マネジメントで、水問題を意識している企業はどれくらいあるでしょうか。特に1次産業が絡む資材調達がある企業は、本当に知るべきだと思います。

今まで手に入っていた資材(食糧)が、高騰もしくは調達不可能となった場合、事業への影響は計り知れません。このあたりはBCPも含めて、リスクヘッジしておくべきでしょう。

水問題を問題と認識しているか

水不足とそのリスクが引き起こす複雑かつ喫緊の課題が世界各地で見受けられるが、ほとんどの社会はまだその真の深刻さとは無縁である。ニュースを見れば、緊急性が増す水不足について絶えず意識させられるが、差し迫った問題として直面しない限り、その原因や懸案に向き合うことを避けてしまうきらいがある。水不足の問題を特定し、解決を図り、さらに将来の懸念を軽減すべく戦略を立てる際、このような思考停止状態こそが最大の問題である。
水不足のリスクとは

CSRアジアのオピニオンですが、全くその通りで、日本の上場会社や大手企業といえど「リスクの先取り」ってあんまりやらないんですよねぇ。

社会全体を見渡して活動をするCSRだからこそ見える世界ってあります。ここは事業活動に重大なリスクをもたらす可能性がゼロではないので、CSR担当者(兼任含む)就任1年目だろうが10年目だろうが、経営企画系の部門にきちんとデータをまとめ提示すべきです。

衣料品における水問題

世界の水問題については、近年、各地で量の不足、水質汚染、水辺の生態系の変化など様々な問題が顕在化している。国際的な機関では、水消費に関連する評価指標が提案され、国際標準化機構(ISO)は、2014年にWater footprintの国際規格(ISO14046:2014)を発行した。環境省は、我が国のウォーターフットプリントの具体的な検討が始まったばかりであることを考慮し、国際規格への対応も視野に入れた検討を実施し、その検討で得られた知見をもとに、「ウォーターフットプリント算出事例集」を2014年8月に公開している。
衣類製品のウォーターフットプリントの事例と課題

みずほ情報総研のレポートですが、衣料品は素材は当然として、その製造から廃棄にいたる環境負荷のプロセスが問題になることがあります。これは、衣料品を扱う企業以外でも製造業系企業でも参考になると思いますので、気になる方はチェックしてみてください。

まとめ

CSRそのものが、リスクマネジメントの要素が強いのはご存知かと思いますが、コトはかなり重大です。

企業レピュテーションへの影響を最小限にコントロールし、水問題を含めた環境リスクの対応をしていきましょう。

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