戦う者たちのノブレス・オブリュージュ「武士道」

新渡戸稲造の武士道という書物をご存知でしょうか?

古典(といっても明治だけど)のなかでも有名な哲学書です。
最近僕は「論語」「老荘思想」「儒教」「仏教」
「禅」などとCSR哲学の結びつきなどを研究してますが、
儒教の影響を多大に受ける武士道もまた、CSRの礎となる概念であります。

日本に、主たる宗教がないのに、どうやって道徳を学ぶのか。
キリスト教などが主たる宗教の国々では考えられないと言われます。

そんな中、新渡戸稲造は、宗教ではないが、
日本人の倫理観・道徳観につながる教えがあるじゃないか、と。

武士道は、sakura(桜)にも勝るとも劣らない、日本のアイコンそのものなのです。
企業経営にも活かせる、日本人のあるべき姿、道徳観についてメモしていきます。

ちなみに、武士道とは、
戦士階級(武士)における、ノブレス・オブリュージュのことである」としています。

武士道から学ぶ、道徳観

武士道の源泉

新渡戸稲造は、仏教・神道・儒教の3つが武士道の源泉だとしています。

仏教は、運命に対する穏やかな信頼、避けられない事柄を心静かに受け入れ、危険や災難を目にしてもストイックに落ち着き、生に執着せず、死に親しむ心をもたらした。神道は、他の宗教では説かれることのない主君に対する忠、先祖への崇拝、親への孝などにより、サムライに謙譲の念を与えた。
厳密な意味での倫理的教義に関して、武士道のもっとも豊かな源泉となったのは孔子の教えだった。孔子が述べた5つの道徳的な関係は、日本人が本能的に知っていたことを追認したものに過ぎない。
(本書より抜粋)

仏教や儒教が日本文化としての道徳観に与えた影響は計り知れません。
やはり、ビジネス・パーソンの教養として、仏教と儒教は押さえどころでしょう。

「人(企業)のもつべき基本的な道徳を要請するもの」
という儒教の考え方を知らずして、エシカルだ、
ビジネス・エシックスだとか、本来おかしな価値観なんですけどね。

まずは儒教を学びなさいと新渡戸先生に怒られちゃいますよ。

武士が身につけ守るべき教え

卑怯や不正を憎む心性、すなわち「義(正義)」
正しいことのために行為をなすこと、すなわち「勇(勇気)」
弱者、劣者、敗者に対する思いやり、すなわち「仁」
他人の気持ちを思いやり敬意をはらうこと、すなわち「礼」
嘘やごまかしをすることのない心構え、すなわち「信」
人格と威厳の価値についての自覚、すなわち「名誉」
単なる知識ではない智慧、すなわち「智」
目上の者に対する服従と忠実、すなわち「忠(忠義)」
(本書より抜粋)

それぞれが単独で存在するのではなく、つながりあい、
道徳観を形成するんですよってこと。
これは、武士だけでなく、日本人全員が持つべき誇り高き価値観の一つです。

ちなみに、渋沢栄一氏は「論語と算盤」の中で武士道について、
以下のように解説しています。

・正義 ー 皆が認めた正しさ
・廉直(れんちょく) ー 心がきれいでまっすぐなこと
・義侠(ぎきょう) ー 弱気を助ける心意気
・敢為(かんい) ー 困難に負けない意志
・礼譲 ー 礼儀と譲り合い
これぞCSRのバイブル!利潤と道徳を調和させる「論語と算盤」より)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

CSRというか、企業経営のお作法に通じる話でした。
企業の立ち振る舞いはどうあるべきか。改めて考えさせられました。

日本のCSRの成り立ちとまではいかないけど、
やはり、日本人の道徳観・倫理観には儒教を始めとする、
欧米にはほとんどない価値観で形成されていたりもします。

武士道を読んで思ったのは、別にエシカルを否定するわけではないのですが、
日本人の道徳観を海外の思想に求めるのではなく、
日本に古来から存在する、古典や思想に求めたほうがいいな、ということ。

道徳とはなんと深きことか。しかし、CSRは企業の道徳そのものです。
まだまだ勉強不足なので、色々な武士道に関する書籍を読んでみます。