デザインのその先へ

世界的なデザイナーであるディーター・ラムス氏が定義した
「”GOOD DESIGN”の10原則」という考え方があります。

彼のデザイン理論はアップルの哲学に多大な影響を与えたとされ、
デザインの歴史に刻んだその影響力は計り知れない、と言われてます。

非デザイナーでも参考になると思いますし、
“CSRをデザインする”時にも重要になると思いましたので、
僕なりにまとめてみます。

CSRデザインの10のコト

1、GOOD DESIGNとはイノベーティブである

技術の進歩は常にイノベーティブなデザインを行う機会を生み出しています。それは言い換えれば、イノベーティブなデザインとは常に技術の進歩と共に歩むべきであり、デザインだけで全てが完結するわけではありません。

そう。CSRをデザインすることはイノベーティブであるべきなのです。
BOPビジネスや、リバースイノベーションはまさにですね。

これらの象徴は、「イノベーションのジレンマ」ならぬ、
「CSRのジレンマ」とも言えるかもしれません。

大企業が既存顧客のニーズに応えようとする余り、
まだ収益に貢献しない新しいニーズ(CSR・社会貢献)に対する投資を怠り、
新興企業に市場を奪われるというもの、であります。

2、“GOOD DESIGN”とは実用的である

プロダクトは機能だけではなく、安全で、かつ美しくあることが求められている。良いデザインとは、不要なものを可能な限り削ぎ落とし、それらの要素を上手くバランスさせているものなのです。

例えば、グッドデザイン賞というアワードでは、
5つの重要な言葉を通じて「理念」としています。

人間(HUMANITY) もの・ことづくりを導く創発力
本質(HONESTY) 現代社会に対する洞察力
創造(INNOVATION) 未来を切り開く構想力
魅力(ESTHETICS) 豊かな生活文化を想起させる想像力
倫理(ETHICS) 社会・環境をかたちづくる思考力

まさにこれと同じで、CSRは実用的でなければならないと思うのです。

機能しないデザインなんて、なんの役にも立たない。
CSRにおけるデザインとは何か、改めて考えさせられます。

3、“GOOD DESIGN”とは美しいものである

プロダクトとは、多くの人が毎日使い、生活の質にまで影響を及ぼすものなので、その実用性に美しさが加わることが欠かせません。丁寧に仕上げられたものだけが美しさを持つことが出来るのです。

美しさとは何か。
黄金律にそっていること、何かしらの規律・意図などがありますが、
美しいCSRと考えると、あなたは何を思い浮かべますか?

CSRにおける、理念と実践の細部に宿る企業の姿勢を、
社会が求めているのかもしれません。

4、“GOOD DESIGN”とは説明不要である

良いデザインは、製品の構造を明らかにします。さらに言えば、上手くデザインされたプロダクトは、どのように使うべきかをアナタに語りかけてくるでしょう。最も優れたデザインとは、全てが直感的であり、説明不要なのです。

「私たちのCSRは〇〇であり、日々〇〇の中で……」
説明がやたら長いCSRを他人に理解しろというのは不親切でしょう。

「ストーリーを語る」ことは重要ですが、不要な解説、必然性のない活動は、
CSRコミュニケーションの妨げでしかありません。

5、“GOOD DESIGN”とは誠実である

良いデザインは、製品を実際以上のものに見せたりはしません。守ることのできない約束をして、消費者を操つることは絶対に許されないのです。

まさに、倫理的というか、CSR活動にそのままあてはまります。
これは叶わないかもしれない理想を掲げるな、とは違うと思います。

コンプライアンス、ガバナンスもそうですが、
ただただ誠実であろうと努力すること。

その過程も含めて、CSRによって企業の誠実さを表すべきです。

6、“GOOD DESIGN”とはさり気ないものである

デザインされたプロダクトは、その道具としての役割を果たさなければいけません。それがアートとは違うところなのです。よって、優れたデザインとはユーザーの個性を表現する余白を残すためにも、さりげない存在であるべきなのです。

僕は、この項を「CSRにおけるエンゲージメント」と解釈しました。
ステークホルダーの関わり方について、非常に重い言葉だと思います。

役割は果たすべきだが、ステークホルダーの邪魔をせず、
さりげなく行動を描くべきなのかもしれません。

7、“GOOD DESIGN”とは長持ちである

良いデザインは、時代の流行から距離を置きます。そのために、古くなることもありません。それはファッショナブルな流行のデザインとは異なり、使い捨ての激しい現代であっても、何年もかけて長く使われ続けるものなのです。

ファッション(流行)で行われるCSRがあってはなりません。
思いつきのCSR系イベント開催なんてもってのほか。

CSRは特に長期的視野が必要な経営課題です。
「長く続けるにはどうしたらよいか」をもっと真剣に考えましょ。

8、“GOOD DESIGN”とはディテールまで完璧である

良いデザインは曖昧さや予測不能な要素を残しません。デザインをするうえでの細心さ、正確さは、消費者への誠意を示すものなのです。

曖昧さ。
僕は、CSRにおける「目標と効果測定」と解釈しました。

SROIというか、受益者の変化を数値化することや、
プロセスを開示するコミュニケーションなど、挙げたらきりがないですが、
細部まで誠実に確実に対応する姿勢は、
CSRだけでなく、すべてのビジネスにおいて重要なことだと思います。

9、“GOOD DESIGN”とは環境に優しくあるべきである

デザインとは環境保護の役割も担います。プロダクトがつくられ、その役割を果たす期間、資源を節約し、環境を汚染せず、そして見苦しい視覚的な汚染もしてはいけないのです。

これはまさに、CSR的なデザイン思考ですね。
上記で挙げた、グッドデザイン賞の理念ではありませんが、
人に思いやりを持つことだけでなく、環境にも思いやりを持とうということです。

誰か(顧客)の幸せを生み出すのに、他の誰か(地球)を不幸にしていては、
いつか、すべてが、破綻してしまいます。

直す方法を知らないのに、壊してはいけません。

10、“GOOD DESIGN”とは最小限である

「Less, but better(より少なく、しかもより良く。)」それは、本質的な部分に集中するということです。純粋で簡素に立ち返ることが大切なのです。

日本語でも「シンプル・イズ・ベスト」と使われますね。
選択と集中というか、ね。

CSRでも同じだと思ってます。
リソース(予算・時間)が限られている中ですべての事象に関わり合うことはできません。

CSRは、マテリアリティ(重要性)を中心にすべき、という考え方があります。
本質的なCSRを見極め、集中することでインパクトも望めます。

「Less, but better(より少なく、しかもより良く。)」
短い文ながら、非常に趣きと深みのあるものですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

この「”GOOD DESIGN”の10原則」は、
どのビジネス領域のデザインでも当てはまると思ってます。

CSR・社会貢献分野でも、〇〇デザイナーという肩書きも増えたり、
何かとデザインという単語を乱用する有識者が出てきたり、
“デザイン”自体が多用され、本来の意味を失いかけてます。

今一度、デザインとは何かを再考し、
御社のCSRをデザインする活動に活かしてもらえればと思います。

参照:“GOOD DESIGN”の10原則

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