AIによるESG評価

AIによるESG評価

最近ほとんどしてませんでしたが、久しぶりに書評(読書メモ)を。今回読んだ書籍は「AIによるESG評価―モデル構築と情報開示分析」(同文舘出版)です。著者の中尾先生からお送りいただきました。ありがとうございました。

本書籍は、学会での研究が下地になっており、一般向けというよりはESG評価の研究に興味がある人向けかと思います。まさにタイトル通りで、評価モデル構築を軸とした話が多いのと、学術的な視点による考察がほとんどなので、ビジネス書のようにさらっと読むのではなく、1章ごとにイメージしながら読むものというか。(まだざっとしか読んでませんが…)

あと、編者と共著者含めて15名と大人数ですが、各人の視点による論考や研究が、また多様であり私自身刺激になりました。参考文献も興味深くいくつかあたってみたいです。

個人的に興味深かったのは10〜12章あたりです。今後のESG評価におけるAI活用の方向性が見えてきたというか。情報開示分析におけるAIというのは、ここ数年で議論にはなってきているものの、肌感覚を体系化してまとめられています。すでに、機関投資家・シンクタンク・大手コンサルなどが、有価証券報告書・統合報告書・サステナビリティレポート・サステナビリティサイト、などをAIを使って分析を始めています。評価機関でもテキストとデータの抽出は昔からしていますし、企業サイドとしては「よりAIを意識した情報開示」が今後求められるでしょう。

統合報告書、サステナビリティレポートの想定読者としてAIが入る時代になりました。AIで分析しやすい形での開示やその工夫を行いながら、積極的に開示をしていきましょう。そんなことを思いました。

AIによるESG評価

中尾悠利子、石野亜耶、國部克彦(編著)「AIによるESG評価 ―モデル構築と情報開示分析」同文舘出版、2023年10月発売

【目次】
第1部 AIによるESG評価モデルの構築
 第1章 ESG評価にAI技術を導入する意義
 第2章 ESG評価に活用するAIの基礎
 第3章 ESG評価におけるAIの活用事例
 第4章 AIによるESG評価の推定モデルの構築
 第5章 サンプルセレクションバイアスとAIによるESG評価
 第6章 AIによるESG評価と財務パフォーマンス
 第7章 AIによるESG評価モデルと資本コスト
 第8章 AIによるESG評価の信頼性・品質保証
 第9章 ESG評価におけるAIの利用とアカウンタビリティ
第2部 AIによるESG情報分析
 第10章 AIによるESG評価のための情報開示の展開
 第11章 トピックモデルを用いたサステナビリティ情報開示の傾向
 第12章 ESG報告の環境・社会情報判定モデル
 第13章 経営トップのナルシズム判定モデル
 第14章 画像認識AIモデルを利用したESG情報の分析
 第15章 ESG情報の保証とAIの適用可能性