CSRコンテンツ充実度調査

ウェブコンテンツの重要性

今、CSR/サステナビリティ・ウェブコンテンツの充実度調査である「第4回CSRコンテンツ充実度調査およびランキング」の最終段階となっています。発表は2020年1月中旬を予定しています。

参考:第3回CSRコンテンツ充実度ランキング(2019年1月発表)

今回から、全上場企業および主要非上場大手企業の約3,800社のCSRおよびサステナビリティ・サイトを調査しました。私を含めて調査員全員が目視でチェックしました。ご想像通り非常に大変でしたが得るものも多く興味深いものでした。(誰でもできるけど誰もやらない典型例)

前回はJPX400(400社)を調査対象にしていましたので、10倍弱まで調査範囲を広げたことになります。細かい分析は今行なっているところですので、定性的な情報(感想)になりますが報告させていただきます。

CSRサイトコンテンツの3つのポイント

1、対応はごく一部

全上場企業のCSR/サステナビリティ・サイトをチェックして思ったのは、比較的情報開示が充実しているな、と感じられるレベルの企業は全体の1割程度(400社弱)しかなかったということです。

大手企業でも非上場の組織がCSR関連情報開示であまり進んでいないならまだわかります。それは非上場の開示の緩さは企業サイドのメリットでもあるので。しかし、透明性を求められる上場企業がそれでいいのでしょうか。上場企業はステークホルダーのことをどう思っているのでしょうか。

やはり投資家サイドからのプレッシャーが増している企業から対応が進むという現実が、あらためて浮き彫りになったということでしょう。ジャスダック・マザーズ・東証二部の企業はひどいものです。仮に開示があっても自己中心的。自分の言いたいことしか開示していません。東証一部でさえほとんどの企業は開示不足と言わざるを得ません。メディアでは散々、ESGだSDGsだと言われていますが、まだまだ“身内ネタ”にすぎません。

2、独自概念の設定

もう一つ気になったのは「独自概念」でしょうか。たとえば「ESG + 〇〇」という表現をよく見ました。プラスアルファされるのは「Q(品質)」とか「H(健康)」などです。多くの企業は「S」にそれらを含めたり、内容によって分散して記述しているのでわざわざ別立てでする必要はないと思います。お世辞にもユーザーの理解が促されるようには見えませんでした。

他には、もしくはカテゴリー文言が「CSV」になっていますが、コンプライアンス・コーポレートガバナンス・フィランソロピーなどが含まれていたりして、マイケルポーター教授らのCSVとは大きくかけ離れているような内容もよくみられました。もうCSV経営ってなんなのよ。CSVもCSRとの定義の差を明確に開示していなのでよくわからないし、私レベルでも理解しにくくて、前提知識のない一般ユーザーが理解できるものなのでしょうか。

3、オンライン・レポート

「オンライン・レポート」というコンテンツ形式にする企業が増えています。オンラインレポートとは、PDF版ではなくユーザビリティを考慮して、CSR報告書や統合レポートの内容をそのままウェブに移行したものです。PDF資料は、基本的に冊子などのリアルなプロダクトを前提としているので、デジタルデータにしたPDFが必ずしもウェブで読みやすいとは限りません。その点オンラインレポートはPDFよりはウェブのユーザビリティは高いと思われます。

しかし、コーポレートサイト内のCSRコンテンツではなく、特設サイトのような形式になるため予算がある程度かかります。このため中小中堅企業では対応しきれないかもしれません。予算や時間等のリソースに限りがある場合は別の方法を検討すべきでしょう。

この傾向が今後も続くのかわかりませんが、統合報告書を発行していて、CSR報告書やサステナビリティ・レポートなどを別に発行している企業は、CSR報告書を印刷せずウェブ開示ですますことも増えています。「PDFだけ」か「ウェブだけ」なら「ウェブだけ」になるは間違いないので(東洋経済の調査傾向でも明らか)要チェックです。

まとめ

現段階ではこの程度の紹介となりますが、全上場企業のウェブコンテンツをチェックすると本当に色々見えてきます。相当な時間を使って調査をしてきましたが実施した甲斐はありました。

ほぼすべてのステークホルダーと企業との最初の接点がインターネットとなってきている昨今、冊子ばかりに力をいれてエンゲージメント創出がおろそかになっている企業が増えている印象です。総合的なステークホルダーの評価上げたいならウェブで適切な開示をしましょう。冊子版だけでコミュニケーションやエンゲージメントができると思わないでください。

今回の調査の正式発表は昨年と同じ時期の「2020年1月中旬」を予定しています。国内初の調査結果にご期待ください。なお、今年も主宰している勉強会「サステナビリティ評価研究会」のみで詳細分析レポートを開示予定です。ご興味がある方は研究会へご入会ください。

参考:第3回CSRコンテンツ充実度ランキング(2019年1月発表)

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