CSRと社内報と社内浸透

ここ1〜2年で、たまたまですが、社内報にCSRコンテンツを掲載したいのでサポートしてほしいという案件を連続でいただきました。

今までCSR報告書・サステナビリティレポート・統合報告書などは、制作アドバイザーとして関わらせていただいた実績がいくつもあるのですが、社内報のコンテンツ制作の実績はあまりなく、当初イメージがわきませんでしたが、最近は社内報でのCSRコンテンツが増えていると、ご相談いただいた制作会社の方から聞きました。

確かに、この10年で日本企業の、外部へのCSR情報開示レベルは格段に上がったものの、CSRの社内浸透の話になると、10年前と変わらず、まだそんなレベルなのという企業が多い印象があります。CSR報告書や統合報告書で毎回賞をもらうような企業でもそんな状態ですので、そうではない企業は…まぁ、いろいろありますよね。

そんなわけで、本記事では、社内報と社内浸透について、私の気づきを共有したいと思います。

社内報におけるCSRコンテンツ

一言で社内報といっても、こちらはCSR報告書と違って国際ルールやガイドラインはないので、自由度が高く企業の色がすごく現れるメディアであります。そのCSRコンテンツの内容としてはCSR全般を視野に入れながらも、個別の内容を特集したものが多いようです。

私の立ち位置ですが、第三者の専門家としての役割(いわゆる企画監修)や、いわゆるプランニング部分を担当し、実際のライティングまで担当したこともあります。コンペから参加することもありますし、制作決定してから参加することもあります。案件としては、特集枠としてCSRを掲載するもの、毎月掲載するものなど様々です。

CSR報告書だと「来年はここまで開示したいから、今年はここまでは開示できるようにしたい」という展開が多く、毎年コンペだったとしても、一応、簡単な三カ年計画を作ったりするものですが、社内報の案件は単発のものが多く、数年先を見据えたものであることは少ない気がします。少なくとも年間の作成計画程度はどこでもやっているのでしょうが。

ただ、1話完結でも良いのですが、この方式ですと従業員の「行動変容」へのアプローチが難しいのではと考えています。行動変容とは、リアクションともいいます。社内報のCSRコンテンツの記事なりを従業員に読んでもらった時に、どんなリアクションを引き出したいのか、という話です。

自分の会社をもっと好きになってもらいたいのか、持株会に入ってもらいたいのか、自社のコーポレートサイトに来て欲しいのか、などなど。逆に行動変容を意識しないコンテンツなどはそもそも意味がありません。社内報という枠にCSRコンテンツがはいると、このあたりの視点が一気になくなってしまうのが怖いなと。もちろん、CSRの特集を何回かした程度で社内浸透はしません。本来は、社内報とセットでCSRの社内浸透施策がないと意味がないのですが。

CSRの社内浸透の課題

加えて、そんな目的意識と実際の制作業務を行なっていて「CSRが社内浸透しないしないのですがどうしたらいいですか」というCSR担当者の方もいて、そんなの知りませんよ、という話です。コンテンツだけで社内浸透するほど甘くはないです。だから社内報の担当者とCSR担当者が密接に連携し進めないと社内浸透が難しいのです。それを縦割り組織でそれぞれしているので、いつになってもCSRの社内浸透が進まない、と。

この問題の解決法の一つは「トップのコミットメント」です。CSRが社内浸透しないことがCSR推進上大きな課題なのであれば、トップの関与を強めるべきです。トップが全従業員に「社内報は必ずチェックしましょう」と言えば見ないわけにいかないでしょう。(難しいとは思いますがそれぐらいしないと成果は見込めません)

そもそも、CSRの推進活動が、従業員にメリットが見えにくい環境の場合、コンテンツでどんなに訴求しても自分ごと(当事者意識)をもてないでしょうね。CSRを社内浸透させたいなら、コンテンツより仕組み(導線)を先に作らないと成果につながりにくいのです。社内報自体の課題はよくわかりませんが、社内報のCSRコンテンツの課題でいうと、どこの会社も「CSR活動を紹介した」で終わるものがほとんど。結局、社員ひとりひとりが自分ごととして感じられず、当然、行動としてCSRが浸透することもない、と。

要は、ワクワクとか、メリットとか、従業員がその社内報を読んで、行動したくなる(行動変容があった)ような仕掛けがそもそもないのです。これを言うと怒られてしまうかもしれませんが、CSR担当者が思うほど、現場の従業員はCSRの社内浸透について問題意識がないということがあります。CSRに当事者意識もったところで給料が上がるわけでも休みが増えるわけでもないし。

特に上場企業は外部のステークホルダーを意識して情報開示をしますが、社内報やイントラネットのCSRコンテンツの重要性に気づき、こちらも力をいれてステークホルダー・エンゲージメントした方が良いと思います。これ、わかっているようでわかっていない会社多いです。M&Aや合併をして大きくなった企業や、関連会社や支店が多い企業は本当に意識しないとCSRは浸透しませんから。そのためには社内報が本当に重要な役割となるのですが…。

まとめ

社内報におけるCSRコンテンツには、思った以上に課題が多いと最近は感じています。

CSRは組織としては重要なものの、従業員個人で言えば、別にどちらでもよいという部分も正直あります。この組織と従業員とのギャップをどうやって埋めるかが、まさに社内的なCSR活動そのものなのですが、現実にはなかなか難しい課題であります。

本来は全従業員ひとりひとりこそがCSR活動の中心人物であり会社を下支えする存在なのです。私はCSR/サステナビリティの専門家ですので、社内報の未来など語るにおよびませんが、それでも、CSRの社内浸透に悩む担当者の方は、社内報やイントラネットと行動変容についてもう一度考え直したほうがいいと思います。

携わらせていただく案件は少ないかもしれませんが、お声がけをいただいたものに関しては、全力で行動変容を起こすべく、社内報のコンテンツ制作に関わらせていただきたいと思う、今日この頃です。

関連記事
日本企業におけるCSR活動の課題・問題点の3事例
CSR担当者が“必ず”悩んでいる3つの課題
CSR/サステナビリティが社内浸透しない5つの理由