ESGインデックス

CSR活動に注力する企業担当者では、調査機関による「調査表回答」が重要なタスクという人が多いのではないでしょうか。

先日、GPIFが 3つのESG指数 の採用を発表し、投資関係者だけではなくCSR界隈でも大きな話題となりました。

今回のGPIFの3つの指数に共通する企業はどこか。たとえば、CSR総合評価でさらにフィルタリングすると見えてくる、超優良企業はどこか。

私なりに、考えをまとめておきます。

3つの指標

FTSE Blossom Japan Index
MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数
MSCI 日本株女性活躍指数

2017年9月現在、3つの指数全てに選定された日本企業は66社があります。さすがに単発では、ESG評価の“Eの字”すら適切な情報開示をしてないような企業も選ばれていますが、さすがに3つの指数の重複を考えると、ESG的には現実的なラインナップとなっている印象です。

投資サイドに詳しい方と、CSR視点がメインの私とでは意見が異なると思いますが、やはりESG指標でインデックスされる以上、最低限の情報開示とその評価によるもので“あってほしい”と思います。今のところ、これらの指標はCSR的な“力学”よりも、投資サイドの“理屈”が強いようにも感じますが、将来的には整合性のある現実的なESG指標として収束していくのでしょう。

今回は“公開情報”からの選定のようですが、評価機関の評価・インデックスは、場合によっては数百項目にもなる調査票回答(関連資料を含めると数百ページ)も多いです。回答するだけでも大変です。ですので「ウチは最低限のCSR活動はしっかりしているから、面倒な調査機関に回答しなくてもいいだろう」という会社もあるかもしれません。

それは企業の自由なのでかまいませんが、CSR評価機関の回答をしないほとんどの企業は、残念ながらCSR活動は大したことをしていません。CSR活動は、企業がどう思うかではなく、ステークホルダー・社会が企業をどう思うか、という視点をもたなければなりません。特に上場していれば、事業規模が小さいからCSRしなくていいとか、言い訳はできないはずなのですが。

本当にESG実行レベルは高いのか

ではこの66社は、総合的なCSR情報開示レベルは高いのでしょうか。よくわかりませんが、“株価の動き”を軸にしすぎて、ESG関連情報をあまり開示していない企業まで指数に入っている、ということはないと思いますが…。

実態を確認するのにわかりやすそうな別の指標ということで、本記事では「CSR企業ランキング2017」(東洋経済新報社)と比較してみます。こちらのランキングは財務状況も得点の半分を占めるので、業績もCSRもどちらも良い企業が上位に入ります。

例えば「CSR企業ランキング2017」で、CSR関連の情報開示の量も質も高いと思われる上位100位に入りながら、今回の3つのインデックスに入った企業は何社あるでしょうか。ズバリ以下の25社です。

KDDI、コマツ、NTTドコモ、味の素、コニカミノルタ、NEC、クボタ、積水ハウス、三菱電機、大阪ガス、東京ガス、中外製薬、大日本印刷、オムロン、イオン、パナソニック、日本郵船、大成建設、大林組、丸井グループ、日立金属、TOTO、三井化学、ニコン、資生堂

上記企業の半分程度は、CSR担当の方とお話させていただいたことがありますが、共通点があるとすれば、どの方も熱意をもって業務に取り組まれているということでしょうか。あと、担当者の異動が比較的少ないという印象もあります。

もちろん、他の企業の担当者が努力していないわけではないと思いますが、最終的には“人”の要素が大きいと最近感じています。経営者と担当者の器以上にCSR評価が高くなることはほぼありませんから、妥当だとは思います。この20〜30社は、国内のESG評価もCSR評価も高い、事実上のCSRトップ企業とも言えるかもしれません。企業担当者は必ず上記の関連レポートを確認しておきましょう。

また、以下のコンテンツで今回の3つの選出企業と東洋経済新報社のデータとの比較がまとめられています。個人的には色々と興味深く拝見させていただきました。

東洋経済新報社|GPIF・ESGインデックス銘柄分析

一部で、東洋経済新報社のCSR企業調査に対する不満を聞くこともあります。とはいえ日本では企業のCSR評価をしている総合調査は他にありませんので、評価する側としては大変助かっています。

民間企業の調査回答は対応自由ですが、逆に、この程度の調査で不満をもっていたら、今後どうやって非財務情報開示してくんですか、ってレベルだと思いますけど。そんなに外部機関にESG評価されたくないなら上場廃止すればいくぶんか楽になれますよ。(そうもいかんからみんな努力してるわけですけど)

CSR調査に答えるのは実務担当者の負担になることは間違いないので必ずしも回答する必要はありません。しかしながら、評価機関は無視しても、ステークホルダーや社会からの情報開示プレッシャーが弱くなることはないと思います。今まで以上にIRとCSR部門が連携して、適切に情報開示をしていきましょう。

まとめ

私は、IRカテゴリーは専門ではありませんが、昨今のESG投資の流れで2013年ころからの統合報告書の盛り上がりから、CSR支援においてもESG視点を求められることが増えています。

今回は3つのESG指数と1つのCSRランキングの合計4つのフィルターで企業をピックアップしてみましたが、他の非財務領域を含めたインデックスなどでのフィルタリングも面白いかもしれません。

これからは明確な企業価値(≒各ステークホルダーに提供できる価値)向上に貢献できるようなCSR活動およびそれらの情報開示が、上場企業を中心に求められています。

私自身ももっと勉強が必要なので、ESG/CSR評価に関する動向は、引き続きフォローしていこうと思います。

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