CSRワークライフバランス

ワークライフバランスとダイバーシティ

先日「平成28年版 男女共同参画白書」や、6月2日閣議決定された「一億総活躍国民プラン」が発表されましたので、最近のワークライフバランスに関する話題もあわせてシェアします。

善悪とかはないですが、「男女共同参画」の文脈に男性の働き方についての話はほとんどないので(ワークライフバランスも女性ばかり)、男性視点のワークライフバランスのニュースもピックアップします。

この手の話はフェミニズムといいますが、女性の話ばかりでまとめられがち(重要だからいいんだけど)ので、このブログは男性読者も多いみたいだし、僕は男性にも当事者意識をもってもらいたいです。

というわけで、例によって企業事例を中心にまとめていきたいと思います。

ワークライフバランスとダイバーシティの事例

ワークライフバランスのネガティブインパクト

「ワーク・ライフ・バランス」の副作用

法改正や社会的要請の後押しを受け、ワーク・ライフ・バランス(WLB)の支援は企業の常識になりつつある。ライフ重視に偏るWLB施策は、企業と個人双方に副作用があると感じる。

ワークライフバランスの議論は、女性の“ワーク”を極力減らすことに特化しすぎてる感じはあります。でも本来のワークライフバランスは、「“ライフ”を重視するための支援」と「“ワーク”に集中してもらうための“ライフ”の支援」でわけて考える必要があるはず、という主張があります。二項対立ではなく、グラデーションのある制度設計が企業に求められているのかもしれません。

男性社員の育児休暇

フェイスブック、男性社員の育児休暇を4カ月に

米フェイスブックは29日までに、男性社員に第1子が生まれた場合、有給の育児休暇を4カ月間認める方針を明らかにした。世界各地の支社などで働く男性の正社員が対象で、来年1月から実施する。同社の男性社員に対する育児休暇日数はこれまで4週間で、大幅な延長となっている。同社のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は最近、近く生まれる子どものため2カ月間の育児休暇を取ることを宣言していた。

Facebookでは2016年1月から男性の育休を強化したそうで。男性トップが子育て世代だと、トップの理解があればすぐこのような制度が成り立つ所がすごいです。記事では他に、スポティファイの「母親や父親になる従業員に報酬の全額を保証する半年間の休暇制度」や、ネットフリックスの「第1子が初めての誕生日を迎えるまでの間、期間に制限がない有給の育児休暇」も話題にしています。

育休取得者数ランキング

「育休取得者が多い」100社ランキング

ランキング詳細は記事をご確認いただければと思いますが、銀行・保険などの企業がトップにずらりと並んでおります。また、記事では、厚生労働省「雇用均等基本調査」によると2014年度の育児休業取得率は女性86.6%に対して男性2.3%と男女に大きな差があることにもふれています。育休は、一生で何回もあることではないので男性にも機会をもらえるとありがたいのですが、実際はなかなか難しいようです。

ワークライフハーモニー

ジェフ・ベゾスが語る「ワークライフバランスより大事なこと」

「いつも終業時刻ばかりを気にしているような惨めな社員ばかりだったら、今の会社の雰囲気は醸成されなかったよ」と話し、これまで築き上げたアマゾンの企業文化を誇りに思うと述べた。「私は社員たちに、”ワークライフバランス”よりも、仕事と生活を調和させる”ワークライフハーモニー”を大切にするよう伝えています」とベゾスは述べた。年に3回自らが講師を務める社内のリーダーシップ研修では、この言葉の普及に努めているという。

ベゾス氏はワークライフバランスに関して、何もかも充実させればいい、という姿勢ではないようです。プライベートばかりを充実させる仕事場というのは、僕はちょっと気持ち悪く感じてしまうのですが、制度だけではなく、文化作りということでワークライフバランスは重要なのだ、ということはわかりました。

女性の働き方

ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査結果|経済同友会

「ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査結果」(経済同友会、2016)によれば、「女性の登用・活用に向けた課題」で、「女性のロールモデルの少なさ、女性の採用数・管理職候補者の少なさ」が依然として主要課題となっているとしています。また、長時間労働が常態化し、多様かつ柔軟な働き方が選択できていない、女性自身のキャリアに対する自覚・責任感の未醸成等も課題となるとのこと。

調査は母数こそ少ないですが、それなりの規模の企業データなので、参考程度にはなると思います。ダイバーシティ調査としてますが、実際は、働き方と女性活用に関する調査のようです。

ダイバーシティの意義

ダイバーシティって、本当にいいと思いますか?

しかしそれは本来、ゴールではなく手段であるはずです。「ダイバーシティを大事にする」って、そもそも何のためのダイバーシティなのか? なぜ、ダイバーシティを大事にしたいのかが置き去りにされるんです。

そうそう。結局、CSRも、ダイバーシティも企業経営のゴールに向かう戦略(手法)にすぎません。CSRだけでも、ダイバーシティだけでも、企業経営は成り立ちません。当ブログでも再三言っておりますが、「手段の目的化」は思考停止の大きな要因であり、本来の意義や成果を見逃してしまいがちになります。「ダイバーシティを大事にしてます」ではなく、なぜ自社はダイバーシティを大事にしているのか、背景を語れ(ストーリーテリング)と。

シリコンバレ−でのハラスメント

シリコンバレー 女性社員の6割が「上司に口説かれた経験」

60%の女性が職場で気乗りのしない相手に口説かれたことがあるという。その65%は上司からのものだった。彼女らを性的な興味の対象としてしか見ておらず、仕事の能力には期待していないということを態度で示すものだったという。
66%が仕事の上で重要なネットワークを広げる機会やイベントから外されていると感じている。業界関係者の集まりや会議などで、女性差別につながるような行為を目撃したことのある女性は99%にのぼる。

ワークライフバランスといいますか、働き方についてですが、CSRによる労働慣行とは「ハラスメント」の撲滅でもあります。人によって価値観の差異があり、悪気なくハラセメントをしてしまっている人がいるのは事実です。しかし、それは、されるほうとしては決して気持ちの良いものではありません。

ハラスメントを完全になくすことは不可能だったとしても、減少させることは必ずできるはずです。まずは、解決に向けた仕組み作りを。

女性リーダー

Diversity- なぜ職場で女性に気を使わなければならないんだろう?

女性のリーダーシップに関しては20%を超える企業が少ない中で、トップのCiscoの35.7%は、Appleの15.8%やIntelの15.6%に比べると、Diversityをかなり意識して向上を図っているように思える。エントリーレベルでは女性は45%を占めるが、Manager 37%、 Senior Manager/ Director 32%、VP 27%、SVP 23%、 C-Suite 17%と、上に行けば行くほど比率は見事に落ちていく

こちらもシリコンバレーの女性活躍推進の話。データ等は記事で確認いただきたいですが、一番のポイントは、ダイバーシティは「内側向き」か「外側向き」か、どちらの活動なのだろう、ということ。これはもちろん、ケイパビリティ(組織力)の文脈で語られるべきことです。

関連記事

以下、記事紹介だけですが、新しい視点があると思いますので、お時間がある時にチェックしてみてください。

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まとめ

いうまでもなく、企業にとっての最も重要なステークホルダーの1つは従業員です。

ただワークライフバランス/ダイバーシティの話をすると「ウチは大企業じゃないんで」という発言をするCSR担当者がいるという事実があります。そういう方は、ワークライフバランス推進がコストであり、自分はそこにタッチする権限も意欲もないんです、と言っているみたいに見えてしまいます。もったいない。

特にワークライフバランスを無視してると公共調達に参加できませんよ、みたいになると売上にも影響与えます。CSR担当者の管轄ではないかもしれませんが、各種ガイドラインでも重要視される領域ですので確実に実行しましょう。そして、その名目は、「男女共同参画」でも「一億総活躍」でも何でもいいですが、CSRでも国策でもワークライフバランス改善が求められているということだけは認識しておきましょう。

もう、この際、しょうがなく対応するのではなく、積極的・徹底的にやっちゃいましょう!