フィリップコトラーのCSR
今更ですが「社会的責任のマーケティング」(東洋経済新報社)を再読したので読書メモを。
今からちょうど10年前の2005年に書かれた書籍とは思えません(邦訳版は2007年)。まったく色あせていないどころが、今でも学びがある考え方も多数あります。
近代マーケティングの権威でもあり日本でも知名度が高いコトラー氏。日本でも有名な「グッドワークス」、「コトラー8つの成長戦略」、「マーケティング3.0」などの書籍でも、もちろん企業の社会性にふれています。
昨今のCSRは“戦略思考”が問われていますが、実はこの書籍でもかなりの部分でCSRに戦略的に取り組むべきと語られています。日本企業の多くは10年経ってもコトラー氏に追いつけていないと言っても過言ではないでしょう。
ではその6つのフレームワークを改めて振り返ってみましょう。
6つの社会的責任マーケティング
1、コーズ・プロモーション
社会的コーズに対する意識や関心を高めるため、もしくは社会的コーズのための資金調達、コーズへの参加、ボランティアの募集を支援するために、資金提供や物資供給をする社会貢献活動。複数企業が特定プログラムのスポンサーになることもある。
2、コーズ・リレーテッド・マーケティング
製品売上の数パーセントを特定のコーズに対して寄付する手法。具体的には告知された期間、特定商品、定められたチャリティを対象に行なわれる。この仕組みにより、企業・消費者・NPOのwin-win-winの良好な関係性を構築できる。
3、ソーシャル・マーケティング
公共、公衆の健康、環境、あるいは社会福祉を改善しようとするキャンペーン開発や、実行支援を行なうこと。コーズ・プロモーションとは異なり、対象者の行動変革にフォーカスがあてられる。
4、コーポレート・フィランソロピー
チャリティやコーズに対して企業が直接関与する活動。社会的取組みの中で最も伝統的な方法。事業のゴールや企業目的に結びつくような慈善活動を戦略的に選択するよう内外から求められている。
5、地域ボランティア
自治体やコーズを支援するボランティアに、従業員や事業パートナーあるいはフランチャイズ・メンバーに参加を促すこと。ボランティア活動が企業によって組織される場合と、従業員自身が活動を選び、企業から有給休暇取得などの支援を受けるパターンがある。
6、社会的責任に基づく事業の実践
企業は自由意志で事業活動を行なっており、時には社会福祉に貢献したり、環境保護のために社会的コーズを支援することに投資を行なうこと。投資判断は企業自身が行なう一方、他の組織とパートナーシップを組み、実施されることもある。
雑感
「よきことを行なう」(第一章のタイトル)。この概念に関して否定する人はいないでしょう。具体的な考えは人それぞれで良いと思います。
で、企業が「なぜよきことを行なうのか」という本書の命題に答えられる経営者やCSR担当者はどれぐらいいるでしょうか。「よきことを行なう際の問題はなにか」を明確に認識している経営者やCSR担当者はどれくらいいるでしょうか。
「社会的責任のマーケティング」というタイトルどおり、戦略CSRの具体例やエッセンスが書かれていますが、企業の社会性への本質的な問いもそこら中にあります。
ちなみに、CSR活動の効果測定・評価は常日頃からCSR担当者の悩みだと思いますが、ベストプラクティスによってアウトカム(成果)の考え方なども丁寧にまとめられています。
まとめ
名著は名著なりの理由があります。
ちょっとマーケティングの調べ物をしていて、読み始めて、自分の知識の浅さを感じています…。改めて、氏の他の書籍も再読しようと思います。以下は、僕の読書メモです。お時間があればどうぞ。
関連記事
・海外のCSR・コーズマーケティング事例集本「グッドワークス!」
・CSRが戦略的マーケティングのカギになるのか?「コトラー8つの成長戦略」