中小企業CSR

中小企業のCSRとコンセプト

CSRは上場企業および大企業がするもの。中規模・小規模事業者の経営者でこう考える人がまだまだいます。

確かに、リソースや事業規模から考えると、CSRの専任は配置できないし、予算もかなり限られくることでしょう。しかし、僕はだからといって社会的責任を負う必要がないとは思いません。社員が1人の会社であろうが、社員が1万人の会社だろうが、社会に不影響を与え続けてよい言い訳などありません。

というわけで、本記事では中小企業が行なうべきCSR/CSVとは何か、ということを事例を交えながら深堀してみたいと思います。事例数が多いので、読むのにちょっと時間がかかります。

中小企業のCSR/CSV実践事例400社

中小企業の社会的責任とは

すなわち、中小企業は既存の経営資源を基盤に社会的責任、社会的貢献活動に臨むことが得策であるということである。それこそが企業と社会の共通価値を見出し、企業と社会がともにすぐれた価値を得られることを実現するものなのである。
中小企業にみる企業の社会的責任の実践~本業と一体化した社会価値の実現(PDF)

流通経済大学の内本先生の論文。アカデミックな中小企業のCSRの話です。すごくストレートな話なのですが、僕はその通りだと思っています。

つまり、何か新しい社会貢献活動(慈善活動)をするのではなく、ミッション・ビジョン・バリューといった企業理念の実践から、通常事業プロセスの社会化を目指すべきだと。実は、この考えは大企業にもそのまま当てはまるんですけどね。

中小企業庁|日本でいちばん大切にしたい会社

人を大切にする経営学会「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞実行委員会は、応募のあった47件の中から審査委員会による厳正なる審査のもと「企業規模を問わず最も優秀と認められる会社」に経済産業大臣賞、「中小規模で特に優秀と認められる会社」に中小企業庁長官賞など第5回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の受賞企業を決定しました。
第5回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の受賞企業を決定しました

法政大学の坂本先生が中心になり、中小企業を含めたCSR経営企業の選定をしています。大なり小なり、企業にはステークホルダー(従業員・取引先・顧客・地域社会・株主など)がいます。

ステークホルダーは基本的に企業利益と相対する存在です。例えば、取引先は1円でも高い仕事をしたいと思うけど、企業は1円でも安く発注したいと考えるものです。だからこそ両者にメリット(価値)のある落としどころを模索するわけですが、それがCSRの一つの役割でもあるのかもしれません。

経済産業省|おもてなし経営企業

各地域には、価格競争に陥ることなく、顧客のニーズに合致したサービスを継続的に提供し、「顧客」のみならず「社員」、「地域・社会」から愛される経営を実現している企業が存在します。経済産業省では、このような企業で行われている、「1:社員の意欲と能力を最大限に引き出し、2:地域・社会との関わりを大切にしながら、3:顧客に対して高付加価値化・差別化サービスを提供する経営」を「おもてなし経営」と称し、地域のサービス事業者が目指すビジネスモデルの一つとして推奨しています。
平成26年度おもてなし経営企業

選出企業は、いわゆる中小企業です。世間的な注目はどうしても上場企業・大企業に集まりがちですが、日本には素晴らしい企業経営を行っている企業もあると再認識できます。

中小企業的なCSRのフレームワークとしても活用できる部分はあると思います。

日光のCSR推進プロジェクト

【日光のCSRの定義】
・企業のファンを増やすこと
・地域において企業が存在する(在る)ことが大切
・地域の一員として地域とのつながりがあること
・企業の役割として地域課題の解決に目を向けること
・コストではなく戦略的な投資であること
中小企業によるCSR活動への取り組み「スマイル日光プロジェクト」

プロジェクト推進は、日光市、日光市社会福祉協議会、日光商工会議所の3者からなる日光CSR推進連絡会が行なっていたとのこと。自治体を含めた地域ごとにCSR推進をはかる動きが積極的になってきています。横浜、さいたま市、京都、などなど他の地域でもあります。

企業単体のCSR推進ではなく、地域というカテゴリーで複数の企業が参加するプロジェクト形式のフローは興味深いのでぜひ参考にしたいところ。ただ、地域によりすぎると世界的なCSRの概念から乖離する可能性も大いにある(実際ある。どことは言わないけど。)ので第三者の有識者アドバイザーを含めた実施が望まれます。

がんばる中小企業・小規模事業者300社

中小企業庁は、革新的な製品開発、創造的なサービスの提供等を通じて、地域経済の活性化や海外での積極的な販路展開に取り組む中小企業・小規模事業者、また、地域の特性・ニーズを把握し創意工夫を凝らした取組により、地域コミュニティの担い手として商店街の活性化や地域の発展に貢献している商店街の取組事例を「がんばる中小企業・小規模事業者300社」及び「がんばる商店街30選」として選定しました。
「がんばる中小企業・小規模事業者300社」及び「がんばる商店街30選」

経産省(中小企業庁)って、色んなアワードしてるんですね。一定の基準を越える中小企業の事例として参考にしたものです。

中小企業と地域コミュニティは切っても切れない縁があるわけですし、世界的なCSRの基準を参考にしつつも、日本的な三方良しを実践していくこともCSR推進に必要なことだと感じています。

中小企業のCSV

中小企業白書

中小企業白書(2015年版)

これはCSRがどうこうの前に、マーケット情報として必ず押さえておきたいデータです。中小企業のマネジメント層の方は必ずチェックしておきましょう。

中小企業にとってのCSV実践の意義

中小企業・小規模事業者は、様々な社会的な課題とどのように向き合えばよいのだろうか。とりわけ、ヒト・モノ・カネといった経営資源に乏しい小規模事業者が、大企業と同様に、社会価値と企業価値の両立を図るといったことが可能なのであろうか。仮に可能だとして、では、中小企業・小規模事業者がCSVを実践することの意義はどこにあるのだろうか。
この点、社会価値と企業価値の両立は、中小企業・小規模事業者でも実践し得るし、むしろ、古くから地域に根ざして事業を行ってきた中小企業・小規模事業者にとって、直面する地域特有の課題にこそ、新しいビジネスの可能性、「生きる道」があるのではないかという可能性を示していきたい。
中小企業・小規模事業者にとってのCSV実践の意義

昨年の中小企業白書ですが、実はCSR/CSVに関する解説もそこそこのボリュームで書かれています。

いいかげん、社会的価値と経済的価値が別物であるという前提をなおしてほしいところですが、それが多くの経営者の思考実態だと思うので仕方がないっすね。まだ目を通していない方はぜひどうぞ。

中小企業だからできるCSV

中小企業だからできる“CSV”の可能性

中小企業の経営コンサルティングを行っている方のインタビュー。一部なぞなロジックがありますが、新しいといえば新しい中小企業のCSVの解釈だと思います。

まとめ

会社の規模に関係なく、CSR経営的な考え方は、経営トップがその意義を知ることからです。

中小・零細企業の場合は大企業よりスピード感はありますので、一度トップがCSRを“重要”と認識したら行動は早いでしょう。

逆に社長“だけ”がノリノリで進めるけど従業員がついてこないというパターンも、あったりなかったり。企業の社会性を高めることは、決して悪いことではないのですが、文字通りのノリだけいけるのは最初のフェーズだけでしょうね。

大企業には大企業なりのCSRの課題がありますし、中小企業には中小企業なりのCSRの課題があるのも事実なので、規模や内容だけではなく、様々な視点からCSR活動の最適解が得られる”仕組み”を準備できるかがポイントなのかもしれません。

僕も今までは、大企業のCSR活動支援が多かったですが、中小企業のCSRコンサルティングも強化し、社会より“信頼される企業”を1社でも増やせるよう、価値提供を行なっていきたいと思います。

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