ソーシャルビジネス

CSR視点を取り込み社会的企業に

ちょっと気になるところがあり、本記事では「ソーシャルビジネス」についてまとめます。

ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏の定義によれば、ソーシャルビジネスとは、あくまでも問題を解決するために作られた、配当を出さない形態のこと。NGO・NPO・チャリティ団体・財団などでもなく、ビジネス的な理念に基づいて運用され、オーナー利益のためではなく社会課題解決をするための、ビジネスモデルもしくは社会事業を行なう組織を指します。

内閣府のソーシャルビジネスの定義は『社会的課題の解決に向けて、住民・NPO・企業などがビジネスの手法を用いて取り組む事業』です。つまり法人格の有無や形式に関らず定義されるということです。日本では内閣府や経済産業省もソーシャルビジネス推進をしているようですが、現在そして今後、集中した支援が続くかはわかりません…。

そういえばマイケルポーター氏らのCSVも「チャリティよりソーシャルビジネスを目指せ!」みたいなことを言っていたようないないような。というわけで、日本のソーシャルビジネスの事例と意識調査をまとめます。

参照:政府広報オンライン(内閣府)|「ソーシャルビジネス」を支援 社会的課題にビジネスの手法で取り組む人を後押し

ソーシャルビジネス・社会貢献活動に関する意識調査

・ソーシャルビジネスの認知率63%も、理解率は9%
・“ソーシャルビジネスで働いてみたい”ビジネスパーソンの3人に1人
・“ソーシャルビジネスを起業してみたい”ビジネスパーソンの5人に1人、年収1,000万円以上は4割
・社会的に必要だと思うソーシャルビジネス 1位「病児保育支援ビジネス」、2位「職人の後継者探し・職業観育成ビジネス」、3位「就農支援ビジネス」
・社会貢献活動の参加経験「寄附」46%、「献血」34%、「物資援助」11%、長期的な取り組みは経験率が低め
・ビジネスパーソンの3割が「社会貢献活動の経験なし」、4割半が「今後1年以内の参加意向なし」
・社会貢献活動参加のハードル 「自分や家族のことで手一杯」44%、「興味なし」41% 経験者が社会貢献活動を継続できない要因 「時間が確保できない」38%
メディケア生命調べ  “ソーシャルビジネスで働いてみたい”ビジネスパーソンの3人に1人

メディケア生命保険の意識調査に関するレポートです。1000人を越えるデータなのでそれなりの方向性が見えてきそうなデータですが、量も多く色々学びがあると思うので、興味がある方は一度ご覧ください。ソーシャルビジネス関連と社会貢献全般の話があります。

「ソーシャルビジネスで働いてみたい3割」ってすごいっすね…。ほんまかいな。しかも、20%はソーシャルビジネスで起業したいとか。僕としては、一歩踏み込んで「なぜ起業したいのにしないのですか?」という質問をしてみたい。

それはさておき、認知度が半分を越えるというのは正直驚き。理解率が10%に届かないのは、まぁイメージ通りです。「CSR」もこれくらいのレベル感なんでしょうかね。

ソーシャルビジネス事例と日本企業

Design your Mission

日本政策金融公庫|ソーシャルビジネス事例集『Design your Mission』~社会的課題の解決に取り組む融資先11企業を紹介(PDF)

(特非)さっぽろ福祉支援ネットあいなび、(特非)亘理いちごっこ、(合)ままのえん、(特非)ハナラボ、優成サービス(株)、(特非)普通の暮らし研究所、(特非)からし種、(株)カスタネット、(特非)日本アニマルトラスト、(株)コミュニティシステム、(株)スマイルアカデミーの11社が事例として挙げられています。

このレポートではビジネスモデルの詳細解説があるので、とても勉強になります。規模感も超大企業って所はないし、どの規模の企業も参考になると思われます。

ソーシャルビジネスの今後

海外におけるソーシャルビジネスへの公的支援~ソーシャルビジネスの効果的成果創出に向けて(PDF)

こちらの資料はいわゆるソーシャルビジネスに関する論文です。イギリス・イタリア・韓国・アメリカなどの典型的なソーシャルビジネスのモデルから、日本企業のあるべき姿をまとめています。

CSR的な視点も多いかな。新規のソーシャルビジネスというより、今の事業モデルをどうソーシャルビジネス化するのか、みたいな。

まとめ

CSRとしてのソーシャルビジネス、というのも以前は意識されていた印象はありますが、CSVをはじめとして「本業でCSR」という考え方が広まってきてから、R&Dというか、通常のビジネスやマーケティングとしての要素が強くなってきています。

参照:ビジネスと社会貢献の融合で世界を変える! リコー「インド教育支援プログラム」

ソーシャルビジネスに問題点や課題がないとは言いませんが、少なくとも、通常のビジネス・スキームとは異なる事業プロセスとなるのだろうし、革新的なビジネスが生まれる”可能性”は非常に高いのが特徴です。

CSRにおけるリスクマネジメントもしっかりやりながら、CSRにおけるオポチュニティ側面としてソーシャルビジネスを考えると、将来的に大きく企業価値に貢献するものが生まれるのかもしれませんね。

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