三方良し

三方良しとCSVやCSRの概念の類似性

三方良しと、CSVやCSRの概念は結構似ていたりします。

三方良しの利他性や歴史の詳しい解説は知っている人も多いので省きますが、三方良しについて書かれた本・書籍だけでは、なかなか実際の事業活動に落とし込めなかったりします。

また、ソーシャルメディアが普及した現代において、三方良し的な概念を持たないと、ステークホルダーを無視した事業活動として叩かれ放題になってしまいます。では、三方良しを現代の企業経営に照らし合わせるとどうなるのか。まとめてみます。

ちなみに、時々言われる三方良しに何かの要素を追加した「四方良し」については『CSR的思想の代表格“三方良し”が進化? 新たな軸を加えた「四方良し」』という記事にまとめていますので、合わせてチェックしてみて下さい。

近江商人・商売十訓

一、商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり。
二、店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何。
三、売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる。
四、資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし。
五、無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ。
六、良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり。
七、紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ。
八、正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ。
九、今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ。
十、商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ。

商売十訓は、CSVと同様にキレイごとだけではなく、「いずれにしても儲けねばならぬ」といった、ビジネスど真ん中の考え方でもあります。三方良しのビジネスモデルって、案外、ガチな訓示なんですよね。

顧客というステークホルダーを重視するのは、ビジネスとして当たり前なのですが、改めてその倫理観を突きつけられます。ビジネスのマネジメントをする人は、絶対に確認しておくべきフレームワーク(行動指針)です。

三方良しの商売とは

三方良しの概念をひもといていくと、興味深いことがわかります。

三方良しは、ビジネス・ライクであり、ステークホルダーを最重要視し、売上の一部を社会還元するという「富の再配分」(フィランソロピー、慈善活動)ではなく、製品・サービスの提供により経済価値も社会価値も同時に生み出そうという考え方。

別に「富の再配分」が悪いわけではなく、予算消化型の考え方では新しく富や価値を生みにくいという、企業活動の社会性の限界を説いている点がありますよ、ということです。つまり、三方良しとCSVは、企業と社会は対立する“トレード・オフの関係性”ではないことを示唆しているのです。

参考記事
マイケル・ポーターのCSV(戦略的CSR)論と、企業の定義事例5社
・社会的責任(CSR/CSV)の意味・定義って結局なんなの?

三方良しの価値とは

三方良しの1番の価値は商道徳を明文化し、家訓としてまとめた江戸商人たちの「リーダーシップ」だと思っています。リーダーシップは企業倫理・経営理念そのものであり、企業経営の根本となっています。

この三方よしとCSVの話は「環境会議 2015年4月号」にも寄稿させていただいたので、興味がある人は購入してチェックしてみて下さい。明日(3月5日)より全国の書店で発売です。大手であれば棚に並んでいると思います。

環境会議15年春号 2015年4月号