コロナショックでCSR/サステナビリティの何が変わるのか

CSRコロナショック

CSRとコロナショック

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)によって、世界中の企業が大打撃をうけています。新規感染が落ち着いてきたとはいえ、「アフターコロナ/ポストコロナ」(コロナ後)の動向を予想する話もでてきていますが、特に大きな影響を受けている業界は、2030年どころか2020年をどう生き抜くか、という話だと思います。

その中でSNSで「SDGs/ESGって言う人減ったよね」みたいなことを発信する人が結構いるんですよ。まぁ、CSR/ESG/SDGsなどは、直近で経済効果を生み出す対応ではないため、本当の経済危機が訪れれば一旦後回しになるのはしょうがないと思います。実際、CSRは景気が良い時に伸びるものですから。しかし、です。不況下だからといって、環境・社会の負荷が高いことをしてもいい、とはなりません。

では、そのような状況で、日本企業はどのようにコロナと向き合い、どんなCSR/サステナビリティ推進活動を実践できるでしょうか。今のところの傾向をまとめます。

コロナの想像以上の影響

3月頃は私はこう考えていました。「いつ元の世界に戻るのか、いつ夜明けが来るか」と。しかし、それからの出来事をみるにつけ考えが変わりました。アフターコロナの後にやってくるのは新世界です。ビジネスモデルもCSRも前提条件が変わってしまいました。少なくとも2020年は。2019年に戻る分野もありますが、戻らない分野もあるということです。

リーマンショック(2008年)も東日本大震災(2011年)も壮絶な出来事でしたが、すべての日本人の世界観が変わった、とまではいきませんでした。しかし、戦後初めてともいえる「外出禁止」が世界中で出されてしまいました。仕事もプライベートも極端に制限されてしまいました。これはさすがに予想外すぎました。

こうなると、企業のCSRはどう進めればいいのか。特に大手企業を考えれば、CSRの次のステップは「ショートカット」ではないでしょうか。不況下でもCSRを進められるように、コストを意識せず半自動的にCSR活動が通常業務の中で行われるように仕組みを作ること、です。別の言い方では、体制作りをする、とも言えます。

グローバルトレンドをキャッチアップして、CSR戦略をブラッシュアップしていくのはいいですが、そこに集中しすぎたあまり多くのCSR先進企業では、現場が疲弊しています。この「CSR推進の自動化」を進めるために、従業員の“意識のショートカット”が必要なのではないか、と。特に、売上が落ちCSR予算が少なくなっている今は特に。今まで以上に、投下コストに対する社会的・経済的リターンを求めるようになります。

このコロナ不景気によって、たとえばCSR活動において「SDGs推進のPRでブランディングに貢献する」という、効果が曖昧なことにお金を使うトレンドは後退するはずです。上場企業でも月間の売上が9割落ちたとことがあるんですよ。綺麗事言っている場合ではありません。

CSRが、事業の何に影響を与え、何の成果をもたらすかのすべてを証明できてなくても、明確に論理立てて筋道立てられるCSR活動以外はもうダメでしょう。企業が、本質的なCSR活動にフォーカスせざる得ない状況になったのは喜ばしいことですが、CSR支援側の企業は一気に苦境に。BtoBなので、2020年より2021年の方が影響がありそうです。統合報告書はまだしも、サステナビリティレポートをダイジェスト版(もしくはウェブ開示のみ)にする企業は増えそうです。

アフターコロナでは、少なくとも当面は、効率より安全が求められます。つまり、経済合理性より社会的配慮が優先される、と。コロナで、可逆的な変化も、あるし、不可逆な変化もある。何もかもが変わるとは到底思えないけど、働き方なんかは特に一定の変化を維持しそう。

テレワークとCSR

コロナによるポジティブな面もなくはないです。日本中の企業が危機感の中で動き、非効率の象徴とされる「ハンコの撲滅」なんて話も官民で広がってきています。コロナの影響でしょうがなく「上手く行くはずがないとされた施策を試したら意外に上手く行った」という“食わず嫌いCSR施策”が日の目をみることになるでしょう。テレワークなんかそうですね。テレワーク/リモートワークが可能な業種でも、色々言い訳をしていて進んでいなかった企業でも、コロナのせいで仕方なく実施したら思いのほかうまくいって、オフィスを縮小する動きもあります。

CSRやSDGsの先進企業と言われた企業でも、テレワークをBCPも含めて視野入れている企業は少なかったです。そして、上場企業の大手老舗企業は、IT企業であってもほぼ全員の出勤を命じていました。テレワークしやすい業種の企業が率先して、それでどうするのよ。このような企業は「従業員の命 > 慣例」なんですよね。

結局、2月とか3月の時点で部分的にでもテレワークに舵を切れた企業の多くは、業種による偏りはあるものの「テレワークの準備をしていた企業」です。これは色々な事後の民間調査でも証明されています。もちろん、テレワークがそもそも難しい業種もあるので、すべての企業にあてはまるというわけではありません。

東日本大震災以後、自然災害などによりオフィスに出勤ができない場合があるのでBCP/BCMを作ろう、と動きはありました。しかし、すぐになくなりました。企業は予防的施策にはリソースを割きたがらないのです。東日本大震災レベルは数十年に1回だろ? 日本直撃の大型台風は年1回程度だろ? そのごく稀なケースのために準備の必要ある?と。

今までだって東日本大震災があって、オフィスに出社することを前提にしていると問題があることは多くの企業が学んだはずです。東日本大震災から9年経っていますが、今でもずっと「社内体制が不十分」なままですか?いつ体制は整いますか?

長期的な視点に立ってテレワークを効果的に活用すれば、生産性の大幅な向上が見込めます。しかし「セキュリティの問題で出社せざるを得ない」というのは、理由としてはもっともですが、「セキュリティ > 従業員の命」なんですよね。例えば情報漏洩問題が懸念されますが、そもそもテレワークしなくてもしょっちゅう個人情報漏洩ありますよね。ビジネスにゼロリスクはありません。あるのは優先順位だけです。とはいえ、技術的に昔よりはだいぶセキュアな環境を自宅でもできると思いますが。日常的にカフェで仕事しているような人たちに比べれば。

今後、全社員でなくても、テレワークにシフトしていく流れには逆らえないでしょう。毎日は難しくても、現在のテレワークが抱えている問題も、近い将来には「技術/設備」「慣れ」が解決し、われわれが会社へ行くことは半分以下になるでしょう。週3日在宅勤務、週2日出勤とか、かなり現実的な話になりそうです。何をやるにしても新しいことを始める時には不慣れな状態から始まりますから。

コロナと働き方改革

CSR視点で、コロナで一番大きな課題としては「雇用」でしょう。もちろん、以前から従業員まわりの労働慣行はCSRにおいて重大要素でしたが、多くの企業が売上を落としたこの時期では、「雇用をどう維持するか」が課題でした。海外でも手元資金があるところは、ワークシェアリングなどをしてでも、なんとか雇用を守っていると。

ワタミは5月、スーパーマーケットなどを運営する「ロピア」(神奈川県川崎市)と出向基本契約を締結し、休業中のワタミ従業員がロピアの展開する食品スーパーマーケットに出向する、新たな人事交流の取り組みを開始したと発表しています。これは良いパターンの施策です。こうやって、外食はもう数ヶ月は少なくともどうにもならないので、一旦、外に従業員を出す、というのは賢い選択だと思います。

コロナショックを理由にして、ESGに悪影響を与えるような行動をしている企業は一定数あります。ただ非上場企業であれば開示も少ないしそれを判別することは難しいです。それでも、コロナ下では、CSRは役に立たないと言われれば、それは御社が役に立たないCSRをしているのが問題なのであり、CSRの責任にしないでよね、とは思います。

それが、前述した「推進体制作り」「テレワーク」「労働慣行/雇用」あたりが顕著であると。

まとめ

未来予測なんてコロナのカオスで吹っ飛びました。毎年毎年、予想外のことばかり起きるので、専門家でも未来予測にたいした価値はない(将来を予想する意味はあまりない)と言い切る人もいます。私もこの考えに近いですが、とはいえ、いきあたりばったりでいい、というのはそれも違うかなと。

CSRでは、TCFDなど含めて超長期の「シナリオ分析」がありますが、東日本大震災とか、コロナショックとか、誰も予想できなかったわけで(感染症専門家はパンデミックの可能性はいつも考えているが)、それこそ明日の予想ですらただの妄想なので、未来予想よりも柔軟性のほうが経営には重要なのかも、という話かもしれません。レジリエンス的な。

まずは、2020年の生存競争に打ち勝つ。そして2030年までの社会的な長期目標を目指す。これしかないでしょう。非常事態なら社会・環境にネガティブな影響を与えて良いとは言いませんが、コロナによる100年に1度の経済危機の中で、政府も企業もすべての対応は困難です。まずは、コスト管理です。オペレーションのマテリアリティを見直しましょう。企業と社会/ステークホルダーに影響の小さい施策は一旦保留しましょう。2020年に絶対対応しなければならないところから、確実にやるしかありませんから。

コロナショックでCSR/サステナビリティの何が変わるのか。「ミクロ/ローカルな影響」と「マクロ/グローバルな影響」を自社のビジネスモデルと比較し、そのインパクトを把握することから始めましょう。場合によっては、多くのCSR活動を一旦保留にする必要があるかもしれません。とにかく企業として生き残りましょう!

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